独自チップをベースにさまざまなマーケットのエコシステムを狙うApple
AppleのVR/ARヘッドセットに関する新しい噂が出てきました。
「Mac並」ということからわかるように、この記事では来年末にも出てくるであろうAppleのARヘッドセットにM1ベースのプロセッサが搭載されるのではないかと書いています。
この中では、来るべきAppleのVRデバイスは、VRを処理できる能力を持ったiPhoneと連携するだろう、と書きました。それが少し違っているのかも知れません。
今現在最も普及しているVRヘッドセットとしては、Facebook(現Meta)の子会社のFacebook Technologiesが開発しているOculusがそのひとつでしょう。Oculusは以前はPCに接続して使う必要があり、グラフィックボードもそれなりのスペックを要求していましたが、今の主力はQuest2という「ワイヤレスのオールインワンVR」になっています。
今はMeta Questというらしい(ややこしいですね)ですが、メモリも最大256GB積むなど、完全に高性能コンピュータの領域に入っています。Appleも、今後参入するならオールインワンというラインナップも必要でしょうから、そうなるとヘッドセット自体に高性能なプロセッサが必要になります。スマホよりも実装スペースやバッテリーの制限が緩いでしょうから、AシリーズではなくMシリーズを載せられるということなのでしょうね。ただ、相変わらずiPhoneと連携させるような(ライトな)デバイスも可能性としては残っているのではないかと思います。
Appleシリコンでさまざまなマーケットのエコシステムを狙う
ここで、もうひとつ気になる話題があります。長らく噂されながらも、「撤退した」「いや、そんなことはない」など、出たり消えたりしている「Apple Car」です。
Apple Carがもし実現するなら(する可能性は高いと思っていますが)、その心臓部となるプロセッサはAppleシリコンの組み合わせになるでしょう。AIも画像処理も強く、消費電力も低いAppleシリコンは、自動運転が必須となる次世代自動車にはうってつけです。Appleシリコンには、Apple WatchやAirPodsなどの専用チップや、CPUだけでなく各種デバイス制御用なども含まれており、Appleは特定の分野で必要とされる専用チップを自由自在に設計できる能力を手に入れています。同じ分野に進出する場合でも、汎用チップを使わざるを得ない他社と比べたら大きなアドバンテージがあります。
そして、iPhone・Mac・VR・腕時計(ヘルスケアデバイス)、自動車が全て同じバイナリで動き、アプリの互換性がとれるとしたら、今のiTunesストアは消費者の活動のかなりの部分に入り込むことになります。上の記事では
そしておそらくは、単に「クルマ」を推進するものでもなく、次世代自動車産業におけるプラットフォームであり、エコシステム全体の覇権を奪おうとする戦いを、これからアップルは仕掛けてくるでしょう。
と書いていますが、ひょっとするとそれどころでは済まないかも知れません。ホームオートメーションも、中途半端なままになっています。
高性能・省電力といえば、IoTに必須の特性です。Appleがこの強みを活かして、スマホからVR、腕時計、クルマ、そしてあらゆる「モノ」へAppleシリコンを軸としたエコシステムを拡大していこうとしているのだとするならば、それは途方もない計画であり、もしかするとAppleならそれができるのかも知れません。
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