iPad は Mac の代わりにはならない ~Apple の明確な主張とは
今年4月に発表されたiPad Proに、Mac用のM1チップが搭載されました。私自身はiPadへのM1搭載はいろいろな意味で意外でしたし、ブログでも「iPadとMacの差別化が難しくなるのでは」と書きました。しかし、どうもそうではないのかも知れません。WIREDに次のような記事が出ていました。
タイトルには「ノートPCの代わりにはなりえない」と書いてありますが、内容としては「AppleはiPadをノートPCの代わりにするつもりはない」ということのようです。
WIREDの記事には、iPadの制限として外部ディスプレイへの接続が上げられています。外部ディスプレイに繋ぐと、
iPadの画面はアスペクト比が4:3のまま中央に表示され、黒い帯で囲われてしまう。何ともバカげた話だ。
ただこれも、iPadのアプリはiPadの画面で動くこと「だけ」を考えて作って欲しい、というメッセージとも受け止められます。とにかく、iPadで「できないこと」を嘆くのではなく、iPadにはiPadにできることをどれだけ快適に実現できるかを追求して欲しい、ということでしょう。WIREDの記事ではこうも書いています。
何かに集中して取り組みたいタイプなら、どうだろうか。これは最近のアップルが訴求しているテーマである。iPadでは同時に開けるアプリがふたつに制限されており、ひとつのアプリをフルスクリーンで開くことがほとんどだろう。つまり、スクリーンがカオスになりがちで何かと気が散りやすいデスクトップPCやMacよりも、作業に没頭しやすいはずだ。
これは結構重要な指摘です。PCでたくさんウィンドウを開いて作業するのは効率が上がることも多いのですが、タブレットのような狭い画面内で無理にアプリを立ち上げても、結局一覧できないので使い勝手は良くなりません。スマホではなおさらです。むしろ、アプリの数を制限することでそこにある種の「割り切り」が生まれ、無理なことは考えずに機嫌良く使うことができるのかも知れません。
MacとiPadの統合はない
Appleは「MacOSとiOSの統合はない」と言っています。
これは今年4月の記事ですが、確か数年前にもWWDCか何かで幹部が同様のことを言っていたはずです。この記事の中で、「アップルはタッチスクリーンのMacは実現しない、iPadは独立したカテゴリーであると断言しています」と書かれていますが、Appleの考えは結局「キーボード/マウスによる操作とタッチパッドによる操作を効果的に融合できる技術は(いまのところ)無い」ということなのだと思います。画期的な方法が見つかれば、話は別かも知れませんが、これまでそれに成功した企業はありません。それを見つけられるとしたらAppleが最有力と思いますが、そのAppleが今のところ無理と言っているわけです。
そこで思い出されるのが、Windows8の失敗です。Microsoftは、PCからスマホ・タブレットまでをひとつのOSでカバーしようとし、結局は新しいUIの構築に失敗(その象徴が「スタートボタン」を巡る混乱です)しました。
iPadはPCでもスマホでもない、新しいジャンルのデバイス
若い人の中にはAppleをスマホのメーカーだと思っている人もいるかもしれませんが、Appleは1976年に設立された世界最古のPCメーカーのひとつです。(「現存する」世界最古のPCメーカーかも知れませんが、どうなんでしょう?)PDAのNewtonを経てiPhoneが発表されたのが2007年、同じOSを使い、サイズをアップしたiPadが発表されたのは2010年です。発表当時は「要するに大きなiPhone」と言われたりしましたが、今から振り返ってみると、Jobsはこのとき「新しいジャンルのデバイス」を生み出していたのだと言うことがわかります。ブログでも書いたように、iPad ProはMacbook Airよりも高額なのです。iPadはMacの代替ではなく、MacやiPhoneと組み合わせてユーザーの生活を豊かにしてくれる「コンパニオンデバイス」と言っても良いでしょう。
つまり、Appleはキーボードやマウス、さまざまな周辺機器を繋ぐことができ、処理能力も高く何でもできる「Mac」を頂点に、ポケットに入り、外出先での利用に最適化された「モバイルデバイスとしてのiPhone」、できることは限られるが、その制限内で最高の使い勝手とパフォーマンスを提供する「iPad」を用意し、利用シーンや目的に応じて使い分けることを想定しているということなのでしょう。
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