UIで迷走するMicrosoftとぶれないApple
複数のメディアが、次期Windowsで「昔ながらの」UI (デスクトップ) が戻ってくる (かも) という記事を出しています。
Windows8がリリースされて以降騒がれ続けて来た「スタートボタン問題」もこれで解決すると良いのですが。。
スタートボタン問題とは、ご存じの方も多いでしょうが、Windows8がそれまでのWindowsと全く違うUI (モダンUI=旧メトロUI) を採用したことで既存ユーザーが大混乱に陥ったことに端を発する問題です。Microsoftは「必要なら従来型のUIに切り替えることもできる」と言っていたのですが、蓋を開けてみると、完全に昔のUIでは無く、左下にあった「スタートボタン」が無かったことが、多くのユーザーを落胆させました。Microsoftはこういった意見を参考に、8.1でスタートボタンを復活させると発表し、皆も期待していたのですが、
と、まだちゃんと戻っていないようです。。(私はWindows8を入れて30分使っただけで7に戻してしまい、8.1も使ったことが無いので実際のところはよくわかりません) これだけ言われているのに何故戻さないのか、理解に苦しむところです。技術的な問題でもあるのかもしれませんが、そうだとすると、次のバージョンでも完全には元に戻らないのかもしれません。
いずれにせよ、この問題に対するMicrosoftの対応はよろしく無いですね。問題の所在がこれだけはっきりしているのに、対策が的を射ていないのでは、「本当にわかってんの?」と思われても仕方がないでしょう。問題があって対応できないなら、そう説明すべきでしょう。
そもそも、Windows8リリースの時点で全面的に新しいUIに (強制的に) 移行する必要があったのか、という問題にもなるわけです。Windows8の開発責任者はスティーブン・シノフスキーという人で、次期社長の候補とも言われていた人ですが、Windows8リリースの翌月に何故か辞任してしまいました。
この人、実はOffice2007の責任者でもありました。それまでのOfficeのUIをまるっきり変えてリボンUIを導入した人です。MSは結局、昔のUIに戻してくれ、というユーザーの願いを無視しました。
まあ、好意的に考えれば、Windowsが新しい時代に対応したことを目に見える形で表現したい、破壊は創造への第一歩である、新しいUIは必ず新しい時代で役に立つはずだ、だから多少強引にでもユーザーをそこへ導かねばならない、という論理だったのかもしれません。UIを変えたって、いつかは慣れるだろうと。OfficeのリボンUIだって、さすがに慣れてきましたし。
しかし、UIって、そもそも変える必要があるんでしょうか? 自動車がどれだけ進化しても、アクセルとブレーキの並びをいきなり逆にしたら、大変なことになります。技術は変わっても、人間はそうそう変われるものではないということです。それを理解して、UIを変えずに新しい機能を追加するための努力をしなければなりません。
それをきちんとわかっているのがAppleです。MacintoshのUI (デスクトップ) の基本的なレイアウトは、2001年以降、ほとんど変わっていません。
さらに言えば、OSX以前のSystem xxのUIと比べても、アイコンが3D化されたくらいで、基本は変わっていません。要はMac誕生以来基本は変わっていないのです。20年前のMacユーザーがいきなり最新OSに触れても、混乱することは無いでしょう。Macintoshだけではありません。iOSも同じです。アイコンがフラット化されたりしましたが、「見た目」が若干変わっても、使い勝手 (UX: User Experience) は変わっていないということです。
AppleはUXを徹底的に重視して、UIを変えずに機能を強化し続けています。業務用PCではWindowsに負けたAppleですが、個人が自分に気持ちの良いものを選ぶパーソナルなデバイスの分野でMicrosoftをこれだけ引き離したのは、このへんの思想の違いもあるのかもしれません。