Flash 最後の日 ~ソフトウェアの危機管理に必要なこと
2020年12月31日、Flash Playerのサポートが終了しました。そして2021年1月12日以降、Flash PlayerでのFlashコンテンツの実行がブロックされるということです。
かつては一世を風靡したFlash。2000年代には普及率が100%近くあったそうですが、高機能故に脆弱性の問題が付きまとい、Ajaxやその後のHTML5などの新技術の台頭もあって、ひっそりと幕を閉じました。
思えば、AppleがiPhoneを発表した際にFlashをサポートしないことを決定したあたりから、雲行きが怪しかったのです、
これは4年前のブログですが、この中でも書いている様に、2008~9年くらいからITソリューション塾では「Flashの行く末は怪しい」というお話をしていました。2007年に発表され爆発的に普及し始めていたiPhoneが純正のSafariブラウザでFlashをサポートしないことを決めていたことが象徴的でしたが、既にこのときHTML5への道が見え始めていたのです。
iPhoneがFlashをサポートしなかったのは、公式には脆弱性やパフォーマンスの問題とされていますが、実はJobsがAdobeの対応に腹を立てたためという報道もあり、判然としません。ただ、iPhoneの採用の有無にかかわらず、Flashの優位は続かない運命にあったのではないかと思います。Flashが衰退していった背景には、プロプライエタリな技術への依存を排除していこうとする市場のトレンドがあったからです。クラウドの出現とそのクライアントとしてのWebブラウザの進化がそれまでの競争環境を一変させ、プロプライエタリな技術をオープンな技術で置き換えていく動きが本格化したのです。結局、その中でWindowsのシェアも低下して行きました。
ソフトウェアの危機管理
それにしても、Flashの終焉を目の当たりにして思うのは、ソフトウェアの危機管理の大切さと難しさです。Flashを使っていたサイトの多くはHTML5などへの移行を済ませていますが、いまだに移行していないサイトが結構目に付きます。中小企業のサイトや地方自治体のサイトなどに多い様に思いますが、Flash絶世期にちょっと多めの予算がついたのでしょうね。当時最先端だった技術ですが、今となっては移行のための予算もばかにならず、それが確保できないとなると放置しておかざるを得ません。そうなると、素のHTMLで書いてあった方がまだまし、ということになってしまいます。(あるいは、Flashのサポート終了に気がついていないとか・・)
今回はAdobeという大手企業が持っていたソフトウェアのため、移行のための時間は長く取られましたが、それでも対応し切れないサイトが多く残っているように思います。Flashだけでなく、MicrosoftのInternetExplorerでもIE特有の機能を使って作り込んだ社内システムなどが移行できていないなど、同様の問題が残っています。Microsoftの場合はサポート停止の影響がさらに大きいために、今だに止められずにいますが、それでもいつかは止めなければならないことは明らかです。
FlashやIEの場合は、独自技術の繁栄から衰退への過程でネットユーザーが爆発的に増えたことが混乱に拍車をかけた面があることは否めませんが、数年のうちに技術が入れ替わるこの世界では、今後もこのようなことは起こるでしょう。というか、技術の多様化やIoTによるIT技術の拡がりの中で、むしろ増えていくのではないでしょうか。
サービスのEOLを設定する
「技術動向の先行きを見通す」ことが重要なのは言うまでもありません(そのためにはITソリューション塾の受講をお薦めしますw)が、すべてを見通すことは不可能なのも現実です。古い、大手の技術が安心と言うことでもありません。何より、新しい技術の採用を躊躇っていては競争に勝てませんし、技術革新に取り残されてしまいます。最新技術を取り入れながらも、その技術がサポートされなくなった場合に何時でも対応できるよう準備しておくしかありません。
ひとつには、プロプライエタリでなく、オープンな技術を使うことが挙げられます。オープンであれば、誰かがサポートを続けてくれる可能性もありますし、最悪の場合は自分でもなんとかする手立てはあります。(それが現実的かどうかは別ですが)Oracleは、SUNから引き継いだJavaを有償化しましたが、多くの企業が無料の環境を提供し始め、混乱は最小限に抑えられています。
しかし、オープンだから安心というわけでもありません。そこで重要になるのが、ソフトウェアやサービスのライフサイクル管理です。開発時にサービスのEOL(End of Life)を決めておき、移行コストやそのプランなども最初から組み込んでおくのです。「このサービスは2年持てば良い、その後はサービス内容を抜本から見直し、その時の最新技術を使って実装し直す」という方針であれば、開発投資を2年で回収し、その先の移行コストまで考慮した開発計画や価格設定が可能でしょう。セキュリティ要件を緩和できるかもしれませんし、法的規制の変化にも対応しやすいでしょう。
そのためには、初期投資が少なくて済み、特定のベンダーにロックインされないクラウドやオープンソースソフトウェアの利用が大前提になりますし、迅速な開発や運用を可能にするアジャイル・DevOpsが必須になります。内製化も視野に入ってきます。
2年で結果を出さなければならないとなれば、機能の改善も最速で行う必要があります。その過程で、自然とDXへの体質への変化も起こっていくのではないでしょうか。
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