AIが人間の創造性をスポイルする?
昨日、ツイッターでこんなつぶやきが流れてきました。
なるほどなあ、と思いました。検索エンジンが検索者の検索履歴や好みを学習して、検索者が「欲しがっている」情報を優先的に上位に表示するようになった結果、キーワードを変えて検索しても同じような結果しか返ってこなかったり、極端な異論を見てみたいと思っても、どうにもそれを検索する術がない、ということは私も経験しています。
検索エンジンを変えてみると違う結果が出たりしますが、やはり似たようなものが多い。あと、検索キーワードを入力するときに、過去に入れたキーワードが出てきたり、他の人が検索しているキーワードが「提案」されるのも、結果が似たり寄ったりになる原因かも知れません。この結果、皆が同じようなものを見るということにもなっているのではないでしょうか。これを便利とみるのか、多様性の喪失とみるのか。
検索を「知りたい情報を素早く見つけ出すためのツール」として考えるならば、過去の検索履歴や検索している場所、時間などを元に「あなたはこれを知りたいのですよね?」と提案してくれるツールには価値がある(プライバシーが、とか、気持ち悪い、とかいう話は置いておくとして)と思いますが、つぶやきにあるように、何かを調べたり、学習したりしようとすると、自分の好みや過去の履歴に引っ張られると、結果の多様性が失われてしまい、学習そのものが偏ったものになってしまう恐れがあります。
AIは過去の自分への最適化
これを読んで、ACCESS時代にお世話になった鎌田さんが、しばらく前にFacebookに「Amazon が推薦する書籍を眺めていると、確かにこれは自分が読みそうというのが並んでいるけど、思考の幅を広げるのに、こんな新しい分野はどう、とか言ってくれない。過去のデータをAIが学習しても、過去の自分に最適化するだけ。今ないものを取り入れて変化して行くためには、AIが見つけないものをどう見つけるか。」と書いていたのを思い出しました。同じような話ですね。それにしても「過去の自分に最適化」とは、良い言葉です。
どちらも、AIがよかれと思ってやっていることが、人間の思考の幅を狭め、創造性をスポイルする結果になっているのではないのか、という主旨なのだと思います。
思いがけないことから刺激を受けて新しいアイデアが閃く、本屋さんをうろうろしていてたまたま手に取った本がめちゃくちゃ面白かった、などという体験は誰にでもあるのではないでしょうか。良い本屋さんは「棚を作る」と言われます。一定の意図を持って集められた本を見ているだけでワクワクしますし、一見関係の無さそうな、それでいて知的な刺激をもらえる本がさりげなく置かれていたりするので、「出会い」が生まれるのです。Amazonとリアルな本屋さんの違いはまさにそこにあるのだと思います。ABCのような本屋さんには、無くなって欲しくないものです。
見落としがちなものこそ教えて欲しい
人間は、もともと「自分の見たいものを見る」ものだと言われています。だからこそ、見えていないものをなるべく見落とさないようにしないといけません。それを、AIがサポートしてくれるならよいのですが、どうも今は逆のようです。
穴を掘ったり、物を持ち上げたり、高速に移動する機械が発達したことで、人間の体力や筋力はスポーツ選手などの特別な例を除いて、全体的には下がっているのでしょう。AIが人間の知能をサポートする存在であるからには、その発達が人間の知的活動を鈍らせる効果を持つことは、ある意味自然なこととも言えます。PCやスマホでカナ漢字変換を使い続けた結果、漢字が書けなくなったり、スマホのおかげで友人の電話番号を覚えていない、というような例を考えると、人間の退化はすでに始まっているのかも知れません。
AIにとって代わられるどころか、飼い慣らされようとしているのかも知れません。AIとの付き合い方を、考え直さないといけない時期にきているのでしょうね。
「?」をそのままにしておかないために
時代の変化は速く、特にITの分野での技術革新、環境変化は激しく、時代のトレンドに取り残されることは企業にとって大きなリスクとなります。しかし、一歩引いて様々な技術革新を見ていくと、「まったく未知の技術」など、そうそうありません。ほとんどの技術は過去の技術の延長線上にあり、異分野の技術と組み合わせることで新しい技術となっていることが多いのです。
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