AI が得られないもの それは、「共感」
20日夜のNHKスペシャルをご覧になった方も多いかと思います。
番組では、6月28日に行われた棋聖戦第2局の「3一銀」が紹介されていました。誰も予想し得なかった一手により、勝利を呼び寄せたというのです。そして、その一手が、AIをも凌駕するものであったのではないか、ということが紹介されていました。その解説は以下に詳しいですが、
「AIの最強ソフトが4億手先を読んでも有力な選択肢として出てこない手だが、6億手読むと突如最適手として現われる。」という手なのだそうです。私は将棋は全然わかりませんが、なんだか凄そう、というのはわかります。
と、そこで思ったのですが、私が「凄そう」と思ったのは、AIが6億手を読んだことでは無く、藤井二冠がAIと同じ手をコンピュータの助けなく思いついた、ということなのだなあ、ということです。
人間は人間の味方
3年前の電王戦でAIが初めて人間を打ち負かしたとき、皆が応援していたのはAIではなく、人間だったのではないでしょうか。
藤井二冠とAIが戦ったらどうなるか、ということを言う人もいますが、今後人間とAIが対局することは無いのではないでしょうか。以前のエントリにも書いたように、もはや勝ち負けは問題では無いからです。
もはや、AIが勝って当たり前なのです。短距離走の選手とオートバイを競わせようとするようなもので、まったく意味がありません。人間は、単純な数値計算の速度と正確さにおいては、とっくの昔にコンピュータに負けていますし、記憶(ストレージ)の量と正確さについてもずいぶん前に追い抜かれました。コンピュータが人間の地的能力を補完する存在である以上、さまざまな分野でコンピュータが人間を凌駕していくのは当然であり、避けられないことです。結局、人間は人間の行動にしか感動(言い換えれば共感)できないのでしょう。
AIに共感はわからないし、共感を得ることもできない
モノが売れない時代の新しいマーケティング手法として、「共感マーケティング」という手法が注目を集めています。
共感マーケティングが注目を集めている背景には、消費者の行動データをベースにしたマーケティングがAIによって強化され尽くしたことがあるように思えます。どの商材・チャネルも限界ギリギリまで効率化され、差別化が難しくなってきた、ということなのでは無いでしょうか。そこで消費者の「共感」に訴えるマーケティングが差別化の要因として浮上してきたのでは無いかと思っています。
そして、「共感」を理解できるのは、今のところ人間のマーケターのみです。AIはサポートはできるでしょうが、「共感」を理解し、狙い、設計できるのは人間だけであり、この部分がAI化されることは無いでしょう。これは、人間とAIとの関係性・AIの限界という議論において、かなり本質的な部分になる可能性が高いと思います。
50万円のCPU!
尚、藤井七段は将棋ソフトのために自作PCを使っており、そのCPUが、現在コンシューマ向けとしては最高峰のAMD Ryzen Threadripper 3990Xということです。
CPUだけで50万円という代物ですが、クロックは2.9GHz、64コア/128スレッド、キャッシュは最大288MBと、スペックも超弩級です。メモリやケースなどを入れると70万円くらいだそうです。この10年でPCはずいぶん安くなったと思っていましたが、そんな世界もあるのですね。
しかし、AIの推論処理を高速に実行したいなら、NvidiaのGPUを使えば1枚で数千コア使うことができます。お値段は、コンシューマ用の最上位機種であるRTX3090は(まだ発売前ですが)20万円前後と言われています。(3090のコア数は1万以上)将棋ソフトがどのようなアルゴリズムでどういう計算をしているのかわからないのですが、AIであればこちらのほうがコスパは良さそうです。しかし、こちらの記事には「GPUは最低限のものしか搭載していない」と書いてありますので、そちらの方にはまったく興味が無さそうです。
Ryzenはいうまでもなく汎用のプロセッサであり、コアは汎用処理用のコアです。これに対し、GPUのコアは積和演算などのグラフィック処理に特化しています。将棋ソフトがAI的な手法ではなく、無限に分岐していく指し手を並行して処理し、有効性を計算して評価するような、(より汎用的な)処理を行っているのだとすると、GPUによる高速化には向いていないのかも知れません。この辺はまったく門外漢なのでわかりませんが。
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