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AppleがIntelからの移行を決めた「あとふたつ」の理由

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先々週、Apple Siliconについて書きましたが、Appleが独自チップを採用すると言うことは、イコール現在使っているチップ(Intel)の使用を止める、ということです。まあ、これまでも状況に応じてCPUを変更してきたAppleですから、WindowsがCPUを変えるよりはハードルは低いのですが、それでもアプリは動かなくなる(か遅くなる)し、よほどのメリットが無いと切り替えは踏み切れません。これについて、ITmediaが背景を解説しています。

AppleとIntelが別れる、語られない理由

記事では、「Intelの半導体製造技術はもはや世界一では無い」とされています。確かに、これまでのIntelは世界で最も利益率の高い半導体(CPU)を独占的に供給することで、その利益によって設備を最新に更新し続けてきました。しかしPCの出荷台数が頭打ちとなり、サーバー市場でもArmの採用が進むなど、世界最先端の設備を維持できる物量を確保するのが難しくなってきました。最近では特別仕様のCPUを作ったり、他社が設計した半導体を製造するファウンドリ事業にも進出しましたが、規模を維持するのは容易ではありません。記事にもあるように、

IntelからTSMCへ。これは今起きている半導体戦争を象徴する動きだ。Intelの経営は今は盤石に見えるが、今後は予断を許さないだろう。製造技術の遅れを取り戻せなければ、今後Intelは競争力を落としていく可能性がある。

ということですね。Intelの競争力が落ちれば、それを採用しているデバイスの競争力も落ちることになります。先々週書いたように、Appleが「理想」を実現したいと考えているのであれば、最高の競争力を維持できなければなりません。Intelの技術力の陰りが、Appleの決断の背中を押したのは間違い無いでしょう。

しかし、製造技術は確かに大きな問題ではあるのですが、それならば他にも思い当たる点があります。その「あとふたつ」が、5GとCPU脆弱性の問題です。

smartphone_speed_5g.png5Gチップ開発からの撤退

5Gのモデムチップで世界の先頭を走っているのが、中国のHuawei、韓国Samsung/LG、そしてアメリカのQualcommです。Appleは長らくQualcommからモデムチップを調達していましたが、近年は法廷闘争が続いて仲が悪く、5GチップはIntelから調達することにしていました。ところが、Intelの5Gチップの開発は遅れました。

Appleは5Gモデムの内製化へ向けて始動している?2020年には間に合わない可能性

業を煮やしたAppleはIntelの5Gチップ事業を買収し、自社で開発することにしたのです。

Intel、5Gスマートフォンモデム事業からの撤退を発表

しかし、それでも遅れを取り戻すことはできません。5G対応のiPhoneを出すためには、もう一度Qualcommからチップを調達しなければならないのです。だから、この記事の冒頭にあるように、この発表の直前にAppleとQualcommの和解が発表されました。AppleはQualcommに和解金を支払い、法廷闘争を止めたのです。この2つはセットで無ければならなかったのです。

AppleとQualcommの和解が発表されたわずか数時間後、Intelが5Gスマートフォンモデム事業から撤退することを明らかにしました。

これによって、Appleは再度Qualcommの軍門に降るという屈辱を味わいました。Intelへの怒りは相当なものだったのではないでしょうか。同時に、基幹技術を他社に頼ることのリスクが明らかになったのです。この先、Appleはハードウェアの隅々まで内製化していくということになるのかも知れません。

CPU脆弱性

もうひとつは、一昨年以降続々と見つかっているCPUのアーキテクチャレベルの脆弱性です。これはIntelだけでなく、各社のプロセッサでも見つかっていますから、Appleが内製化したからと言って問題は解決しないのですが、それでも、自社開発であれば対応パッチの開発などを他社に頼らずに済み、迅速な対応が可能になると考えられ、他社との差別化に繋げることはできるでしょう。

もちろん簡単なことではありませんが、Appleはいまやさまざまなプロセッサを内製化しており、トラブル対応の技術力も十分にあると考えられます。

TSMCも「絶対安全」ではない

一方で、TSMCについての懸念点と言えば、中国の影響でしょう。TSMCは台湾の企業であり、今後の政治情勢次第でAppleがTSMCに発注できなくなる可能性もあります。ファウンドリは台湾・韓国・中国に集中していますが、最新技術に対応できるのはTSMC、その次がSamsungです。どちらも微妙に危ういですね。TSMCは米国内に工場を作るという発表を行いましたが、この辺も地政学的な配慮からなのかも知れません。ハイテクといえど、国際政治の影響から逃れられない状況になってきました。

 

「?」をそのままにしておかないために

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