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政府系クラウドの行方 ~富士通とNTTデータが参入

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富士通が「政府系クラウド」への参入を発表しました。

政府系クラウドに参入した富士通は、AWSとどう戦うのか? 狙いは「政府共通プラットフォーム」に載らないシステム

政府系クラウドについては、2月に総務省が「政府共通プラットフォーム」にAmazon Web Services(AWS)を採用する方針を明らかにしたことで、業界にショックが走りました。今回の富士通の発表は、このニュースに触発された面も大きいと思います。(記事中では「AWSの動きを見て急きょ立ち上げたものではなく」と言っていますが)

政府共通プラットフォームでのAWS採用の衝撃

このブログでも書きましたが、

これまでこういった「国策」「政府系」のITシステムは、国産ITベンダーが中心となって構築するのが既定路線でした。

という状況だったところへ、政府系クラウドの最初と言える案件をAWSに持って行かれたことで、国産クラウドのお尻に火が付いた、ということなのかも知れません。

3月には、官公庁システムに強いNTTデータもこの分野でのマネージドサービスを開始しました。

NTTデータ、官庁・自治体のクラウド導入・運用を支援 ハイブリッド/マルチクラウドにも対応

もともとNTTデータは官公庁・金融向けにクラウド基盤を提供していたわけですが、マルチクラウド対応などを含めてトータルで提供していこうということです。こちらも準備はしていたのでしょうが、AWSショックで一気に加速した、というところでしょうか。

tatemono_buildings.png放置されてきた「政府系クラウド」?

ところで、「政府系クラウド」って、あまり聞かないなあ、と思って検索してみたのですが、Googleでは1000件も引っかかってきません。新しい言葉のようですね。しかし、政府が「クラウド・バイ・デフォルト原則」を発表したのが2018年6月、これまでこの言葉が無かったのはむしろ不思議です。

若干穿った見方をすれば、政府案件に強いSIerが、クラウドよりも利益率の高いオンプレミス系のビジネスを温存するためにクラウドへの移行を渋っていたのでは、という可能性もあるのではないでしょうか。しかし、そろそろそれも難しくなってきたと言うことで、かねてより準備していたネタを出してきた、ということなのかも知れません。いずれにせよ、これからはクラウドが政府系システムの主戦場になっていくのでしょう。

AWSも、この機を逃さずに政府系クラウドに注力していくことを発表しました。

AWSジャパン、政府や地方自治体のクラウド化に照準 公共領域でのパートナー連携を強化し"首位固め"

AWSはもともと「素材」を提供するだけというイメージが強いのですが、政府向けにはそれでは難しいという判断でしょう。記事中でも

「これまで(公共領域では)クラウドはITリテラシーの高いユーザーにニッチな分野で使われてきた。だが、クラウド・バイ・デフォルトの波を受け、当たり前に志向してもらえるようになった」

とコメントしています。そのままでもリテラシーの高い層には使ってもらえるが、「当たり前」に使ってもらうためには、サポートとのセットが不可欠、とも読めます。

富士通はOSS、NTTデータはハイブリッドを指向

国産クラウドの戦略にも微妙な違いがあります。富士通は「OSSベース」を強調してベンダーロックインの排除を謳う一方で、政府固有要件へのきめ細かい対応を打ち出しています。NTTデータは、自社IaaS「OpenCanvas」とAWS、Azure、GCPなどを同列に組み合わせて扱うことで、「ハイブリッド・マルチクラウド」をマネージドサービスとして提供するという戦略です。OSSもハイブリッドマルチも、米国系クラウドにとっては当たり前の話ですが、この辺を強調することで米国系と遜色がないことをアピールする狙いかも知れません。

そして、両社に共通しているのは「面倒見の良さ」です。AWSのアプローチとも似ていますが、この辺は元々国産ベンダーが得意としていたところであり、むしろAWSが国産勢のアプローチを取込んだ、ということでしょう。官公庁に限らず日本の組織はITシステムを内製してこなかったため、構築・運用は外部に頼らざるを得ません。国産IT企業はそこを「丸抱え」で面倒見ることで、案件を獲得してきた経緯があります。

技術力と低コストで攻めてくる米国系に対し、国産は昔ながらの「面倒見」で対抗しようとしているように見えますが、こと政府系となると、付き合いの長い国産勢に一日の長があります。両者の良いところをうまくハイブリッドできれば、面白い展開になりそうです。

 

「?」をそのままにしておかないために

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