政府共通プラットフォームでのAWS採用の衝撃
高市総務相が、10月に運用を始める予定の「政府共通プラットフォーム」にAmazon Web Services(AWS)を採用する方針を明らかにしました。
記事中にもありますが、
当初は「『純国産クラウド』を実現できないかと考えていた」というが、国内各社のクラウドと比較・検証を行った結果、「セキュリティ対策なども含め(AWSが)優れていると判断した」としている。
これまでこういった「国策」「政府系」のITシステムは、国産ITベンダーが中心となって構築するのが既定路線でした。しかし今回AWSに決まったことは、今後政府の調達行動に大きな影響を与えるかも知れません。
ただこの話、まるっきり晴天の霹靂というわけでもありません。すでに昨年7月に日経がすっぱ抜いています。
そもそも、最初に書いたようにこのシステム基盤は「今年の10月」に運用を開始するのです。「今」決めたって、間に合うはずがありません。詳細はわかりませんが、普通に考えれば昨年の7月だって遅すぎるのでは無いでしょうか。もっと前から決まっていたと見るべきでしょう。以下のように、計画自体は2018年度から始まっています。
この中の「設計・開発等業務」をアクセンチュアが落札したのが2019年5月ということですから、その頃に大枠は固まっていたのではないでしょうか。
このニュースについて、「いや、実はそれほど大したことでも無いのよ」という記事が出ていました。
この中で、これまでもうまく行っていなかった政府共通プラットフォームの更新にあたって、国内SIerがAWSに譲ったのでは、という考察がされています。
こまごまとした末端システムはAWSへ、重要システムは相変わらず国内SIerへ、という図式は崩れないように思えます
なるほど。そういった背景もあるのかも知れません。
Microsoftは選択肢ではなかったのか?
では、AWSと真っ向から競合しているMicrosoftは候補に挙がらなかったのでしょうか? Microsoftは昨年、米国防総省の最大100億ドルの入札を制しました。大方の予想は、AWSが落札するだろうとみられていた案件で、これもアメリカでは衝撃でした。
というか、未だに決着していませんね。Amazonが訴えて案件がストップしています。。
AWSは2013年のCIAの案件では他を引き離して落札しており、今回も最有力とみられていました。それをひっくり返せたのは、AWSとAzureの技術力の差が小さくなったからと言われています。
まあ、AWSは2006年にサービスを開始していますが、Azureの正式なサービス開始は2010年。確かに2013年時点では大きな差はあったでしょう。昨年やっとAWSに勝ったとはいうものの、直前までAWS有利とみられていたほどにその差は微妙なものだったのでしょうね。
となると、昨年5月の時点で考えれば、アクセンチュアがAWSを選択したのは理にかなっていたといえるでしょう。アクセンチュアはマルチクラウドを標榜していますから、今後Azureが絡んでくる可能性もあると思います。
Amazonがいきなり日本への納税を始めたのも、これがあったからでは? なんて言っている人もいますね。。まあ、真偽はわかりませんが。
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