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Windows7のサポート延長が意味するものは

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Microsoftはこれまで、来年1月にWindows7のサポートが切れることを宣伝し、早くWindows10に移行するようユーザーを説得してきましたが、ここへきて多くの企業が延長サポートを受けられるように方針を変えたようです。

マイクロソフトが方針転換。Windows 7の2023年までの延長サポート、あらゆる企業が購入可能に

元々、一部の大手ユーザー向けには有償で延長サポートを提供するとしていましたが、今回その対象を広げた形です。一方、一般ユーザー向けのサポートは予定通り来年1月で終了します。

2020 年 1 月 14 日に Windows 7 のサポートが終了します

ただ、延長サポートが可能となっても、サポートを受けるためにはサポート費を払う必要があり、その価格は1年目$50、2年目$100、3年目$200と結構高額で、2年使うつもりなら今のうちに10にアップグレードしても費用的には変わりません。使い続けるコストを明示して移行を促す、という作戦なのかも知れません。

Windows 7の延長サポート終了後もセキュリティ更新が受けられるプログラムをMicrosoftが発表 - GIGAZINE

computer_kurayami_man.png減らないWindows7、XPもまだ現役?

調べてみると、やはりというか、Win7のシェアは思ったほど(Microsoftが期待するほど)減っていません。

Operating System Share by Version

9月時点で、まだ28.61%もあります。他の調査でも似たようなものです。というか、10のシェアが7を抜いたのって、やっと昨年の12月なのですね。これではMicrosoftもサポート打ち切りを強行できないでしょう。

XPの時にもサポート終了への批判があり、結局サポートを5年間延長しました。しかしそれでも永遠にサポートを続けることはできませんから、最後は打ち切らざるを得ません。Microsoftとしては善意でサポートを延長したはずなのに、世間にはサポートを終了するのはけしからん、というような雰囲気があったわけで、Microsoftにしてみれば理不尽なことです。今回はそういったことにならないよう、有償による延長サポートの提供となったのではないでしょうか。

ちなみに、XPもまだ1/3の企業で使われていると言うことです。

2019年になっても3分の1の企業がWindows XPを使い続けているという現実

まあ、さすがにメインで使っているわけではなく、「どうしても移行できないPCが何台かある」ということなのでしょうが、OSの移行の難しさを示す数字でしょう。

OSのサブスク化は難しい?

これまではPC買換のタイミングで結果として新しいOSに乗り換えることになっていましたが、最近ではPCの性能も上がり、買換の必要も薄くなっていることも、OSの世代交代が進まない原因かも知れません。「Microsoftの最も手強いライバルはMicrosoft」という言葉があるそうですが、良いOSを作るとその後の移行に苦労する、というサイクルはMicrosoftにとって頭の痛い問題です。

Windows10は、「最後のWindows」と呼ばれますが、それはこれまでのように一定期間ごとにバージョンアップを行って有償でアップグレードするモデルから、無償で永遠に機能拡張やセキュリティパッチを提供するモデルに移行したからです。今後はWindows11は出ず、ずっと10のままで、サポートも受けられるのです。これも、MicrosoftがOS移行問題を無くそうとしている現れだと思います。OSのサブスク化(ただし無償)です。

Office365はうまく有償のサブスクリプションモデルに移行できましたが、OSはユーザー側に「PCに付いてくるモノ」というイメージが強く、有償のサブスクリプションへの移行は難しいと考えているのでしょう。そこでMicrosoftが狙っているのが、Azureとの連携を前提としたサービスの提供なのではないでしょうか。クラウドサービスがサブスクリプション形式なのはあたりまえですし、ユーザーもOSではなく、クラウドサービスにお金を払うのであれば、抵抗感は少なくなるでしょう。

MicrosoftではAzureとの組み合わせでセキュリティを強化したり、ビジネスや働き方の改革に繋げるなどの提案を積極的に行っています。逆に言えば、クラウドとの共働を前提に開発されたのがWindows10だということもできるでしょう。

 

「?」をそのままにしておかないために

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