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Linux に対応したSQL Server - その狙いと意味

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少し前の話ですが、MicrosoftのSQL Serverの最新版(2017)がLinux及びDockerに対応しました。

[速報]Windows、Linux、Dockerに対応した「SQL Server 2017」正式版リリース。Microsoft Ignite 2017

今回のリリースは、グラフオブジェクトへの対応やAI対応など、新機能が盛りだくさんなのですが、なんといってもLinux対応というのがMicrosoftの戦略の転換を明確に示しています。ナデラCEOになってからオープンソースへの取り組みを積極的に進めてきたMicrosoftですが、SQL ServerのLinux対応は最後にして最大級のニュースと言って良いでしょう。

今回歴史を調べてみて知ったのですが、元はSybaseなんですね。1989年にOS/2向けの最初のバージョンが出ています。Oracleのリリースが1979年ですから、10年の遅れです。とにかく、OSとデータベースは切っても切れない関係にあり、特に業務システムでは最も重要なコンポーネントです。Microsoftにとっては、OSの次に大事な資産をLinux対応させたといえます。(OSをLinux対応にするわけにはいかないので、事実上の最重要資産ですね)

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ナデラCEOで変わったMicrosoft

MicrosoftはずっとLinuxを敵視してきました。これはある意味当然で、LinuxはOS市場を独占しているMicrosoftを脅かすほぼ唯一の存在だったからです。1999年にはもう攻撃を始めていますね。

Linuxをけなすマイクロソフト

これは、この年の3月にIBMがLinuxの正式サポートを発表したことが原因でしょう。

IBM Launches Biggest Linux Lineup Ever

しかしその裏で、Microsoftは相当な危機感を持っていたことがわかっています。冷静かつ正確な技術的評価と、それに立脚した戦略。さすがMicrosoftという感じ。

ハロウィーン文書

そのMicrosoftが180度戦略を転換したのが3年前、スティーブ・バルマー氏に代わってサティア・ナデラ氏がCEOになってからです。ナデラ氏の「MicrosoftはLinuxが大好きだ」という言葉が驚きを持って迎えられました。

「Linuxは癌」発言から十数年--新生マイクロソフトのオープンソースの取り組み

ちなみに「癌」と言ったのはこの人。戦略転換にはCEOの交代が必要だったのでしょうね。

TechCrunchの記事でも、このプロジェクトにゴーサインが出たのは3年前だと書いています。

MicrosoftはどうやってSQL ServerをLinuxへポートしたか、ついに2017リリース候補がローンチ

ところでこの記事には、巨大なSQL ServerをどうやってLinuxに移植したかについて、Drawbridgeという技術を使ったことが述べられています。「アプリケーションのサンドボックス化のための新しい仮想化の形態(new form of virtualization for application sandboxing)」とあり、コンテナみたいなものなのかも知れません。これはこれで面白そうな技術なのですが、今回はこれについては触れません。

Oracleへのキツイ一撃

SQL ServerをLinux/Docker対応させたMicrosoftの狙いは、自社OSに拘らないという戦略の徹底によって対応プラットフォームを増やすということでしょうが、これが業界に与える影響は大きいものがあります。一番影響を受けるのはOracleでしょう。

ここ数年、Oracleの新規ライセンスの販売は伸び悩んでいるといいます。クラウドの台頭、高額なライセンス料に加え、サポート料金を引き上げて来たことなどが背景にあるのでしょう。そこへ、「OSベンダーでは無くなった」Microsoftが殴り込んできた、というのが今回のLinux/Docker対応なのではないでしょうか。クラウドへの対応の遅れも指摘されているOracleにとって厳しい一手と言えるでしょう。

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