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FPGAで広がるSoftware Definedの世界

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ネットコマースさんと一緒に開催しているITソリューション塾で、先日FPGAについてお話しをしました。

FPGAというのはField Programmable Gate Arrayの略で、簡単に言うと中の回路を後から変更可能な半導体(集積回路)です。FPGA自体は結構前からあって、応用分野も広いのですが、今回塾で取り上げたのは、6月にIntelがFPGAの大手を買収したという報道があったためです。

シリコンチップ上に電子回路を高密度に実装した半導体(集積回路)は、IT産業にとってかかせないものですが、その設計や製造には時間とお金が非常にかかります。通常はいったん作ってしまうとあとから修正が効かないため、製造前のテストには最新の注意が払われます。しかしFPGAは、集積度や柔軟性は犠牲になりますが、部品だけを載せた集積回路を作っておき、あとから部品間の配線を書き込むことができるため、半導体設計の期間を短縮でき、後から修正も可能な点が評価されています。

修正できない半導体のトップクラスのメーカーであるIntelが何故FPGAの会社を買収したかについては、ムーアの法則の限界が見えてきて、CPUのこれ以上の高速化が難しくなってきたために、これまでソフトウェアで行っていた処理をハードウェアに取り込めるFPGAが今後の差別化要因になるためではないか、ということが言われています。

例えば、MicrosoftはデータセンターのサーバーにFPGAを搭載し、そこにページランク処理のアルゴリズムを載せることでスループットを上げることに成功したそうです。どんなアルゴリズムでも、ハードウェア化(=半導体化)すれば速いに決まっているのですが、通常はコストと開発期間が見合わず、汎用CPU上でプログラムを組んで実行させます。それが、FPGAによって従来の半導体化よりも低コストでハードウェア化できることになり、活用の分野が広がった、ということでしょう。Intelも、この点に目を付けたのでしょう。報道では、XeonとFPGAを組み合わせたチップを計画中とのことです。つまり、プログラマブルなアクセラレータを搭載した汎用CPUということですね。

このようにCPUにFPGAが組込まれたり、サーバーにFPGAが組込まれて行くと、ハードウェアアクセラレーションの部分までを含めて、ソフトウェアで制御できることになります。当初Software Definedと言えばNetworkを指していましたが、最近ではSoftware Defined Storage (SDS)やSoftware Defined Datacenter (SDDC)など、様々なものがSoftware Definedになってきていますが、その流れを加速するものということもできるのでしょう。

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