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【25万人】 床屋のご主人から聞いた経営学~なぜ床屋は潰れないのか 後編

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 先週ご紹介した床屋のご主人の話。今回はその続きを書いてみようと思います。
 
 儲からないけど安定しているという床屋さんですが、それでも最近では、都市部を中心に激安理髪店が登場し、少し変化が出てきたとのこと。ありますよね、10分いくらという店。これについても、ご主人は「コンセプトというか、経営理念が違いますよね。床屋さんはとにかくお客さんにくつろいでもらえるように、様々な工夫をこらしています。だから競合はしませんね」と自信満々。
 
 このご主人、なかなかのアイデアマンで、毎回店に出かけていくと、店内のディスプレーが変わっているんです。ヒルクライム・春夏秋冬の歌詞じゃないけど、春は桜、夏は氷、秋は紅葉…みたいに、季節感を演出するグッズを使っては、お客さんを楽しませているようです。
 
 さらに、毎回、シャンプーなどの理髪材料や道具類に少しずつ新しいものを取り入れていて、こちらを飽きさせない工夫をされています。聞けば、年に数回行われている業界関係者向けの展示会などに必ず足を運び、常に新商品を試すようにしているとか。
 
 基本的に馴染みの方ばかりだそうで、大半のお客さんは、店に来ると座るだけで、散髪の仕方について何も注文をしない。いつものようにお願いします、ということらしい。ご主人も、いつも自分が手を入れている髪ばかりなので、具合が解っているので、何も聞かないそうです。それでも、髪の変化や、たまに出る注文はちゃんと記憶しておかねばならない。以前、「床屋さんのご主人が書くカルテ~ITも勝てない? 頭が下がるサービス」というエントリーで紹介しましたが、このご主人、お客さんとのやりとりや散髪の好みなどをカルテに残しています。お客さんが帰った後に、少しずつ書き加えているそうです。
 

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 以上、ご主人が工夫されている一端を紹介しました。サービス業ですから、これくらいの工夫・努力は当たり前でしょ~と思われる方もいらっしゃるでしょう。でも、この当たり前がなかなかできないんじゃないでしょうかね。ちょっと大げさな言い方ですが、私が感じたのは、このご主人が理容師であると同時に、経営者なんだということ。従業員もいない小さな店だけど、その経営をちゃーんと考えて、いろいろ手を打っているわけです。
固定客を固定するためには、それなりの努力が必要だということを、ご主人はちゃんとわかっていらっしゃいます。今後は若者を中心に床屋さん離れの傾向が出てくるでしょう。これまで安定していた全国【25万人】の理容師も、これからは競争必至。だから、そこを見据えて、できる努力はちゃんとやる。ご主人はそう考えていると思います。
 
 私がこの店に通い始めて2年くらいになるのですが、私が密かに楽しみにしているのが、洗髪と合わせて施してくれるマッサージ。これがまた、毎回進化しているんです! 聞けば定期的に師匠さんや整体師から教わっているそうです。だから、たまらなく気持ちよくてね。
 
 ご主人との会話は楽しいんですが、このマッサージのおかげで、毎回途中から記憶がなくなる(=気持ちよくてつい眠ってしまう)ので、話が半分くらいしか覚えていないのが困ったところです。。。

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