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【160円】 絶好調マクドナルドがコーヒー値上げでやらかした、小さなミス

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 このところ、きょこさんをはじめオルタナブロガーの何人かの方々が、マクドナルドのコーヒー値上げを話題にされてますね。私も個人的によくマクドナルドに出かけるので、ちょっと気になって調べてみました。すると、「この値上げはいかがなものか」的な声がちらほら聞こえてきます。

 マクドナルドのコーヒー価格については、今年5月の大幅な商品価格改訂時に100円から120円へ全国一斉で値上げされています。それが11月になって、【160円】に値上げした店が出現。この値上げを話題にするブログを拾い読みしてみると、そのほとんどが「【160円】は高いよ」と言っています。どうやら一部に180円の店もあるようで、現時点では120円・【160円】・180円と3プライスが存在するようですね。しかも、最近になって120円に急遽戻した店もでているようで、ちょっとした混乱が見て取れます。

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 マクドナルドの商品価格は、2007年春までは全国均一価格をとっていましたが、「デマンドベース・プライシングの理念に基づく消費者調査により決定」するという方針の下、2007年夏から地域ごとに価格差を設ける方式に移行。この「デマンドベース・プライシング」とは、「客数、利益、売上高等を最適化するための価格設定手法。コストプラス、競合比較のみで価格を設定する手法とは異なる」と同社のWebSiteで解説されています。原田社長の言葉を借りると、「都会で損して地方で儲けるというのはおかしい」ので、地域に合わせた価格を設定するというやり方だそうです。これを受けた消費動向ですが、少なくとも業績の推移を見る限り、この価格制度により、マクドナルド全体の売上が落ちたということはなかったようです。

 実はマクドナルドは今年に入って大きな価格改定を2回実施しており、いずれも同社のWebSiteでニュースリリースされています(1回目5月2日2回目8月8日)し、各店舗でも貼り紙などで掲示されていました。しかしながら今回のコーヒー値上げについては、どの店舗でも告知されないまま値上げされたらしく、またWebSiteでも何ら発表されていません。どうやら今回の値上げはごく一部の店舗に限られており、全国一斉改訂ではないことから、WebSiteでの公開に至っていないと推察します。ちなみに私の近隣店では、今も120円。店長に話を聞いてみると、「【160円】では戦えない。コーヒーの価格は他のセットメニューすべてと関連してくるので、結構大きな影響があると思います」だそうで。これ、本音でしょうね。
 
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 では、なぜ今回の値上げが話題になり、マイナスな声が多くなっているのか。いろんなブログで書かれていることに、自分の私見を加えてまとめてみます。

  • 頻繁である
    ただでさえ値上げに敏感なご時世に、1年に2回の値上げは、印象が悪い。値上げ幅は、わすが40円だが、1年で6割も価格が上げるのはいかがなものか。
     
  • オープンでない
    今年実施された2度の価格改訂は事前に告知があり、いずれも店内掲示やWebSiteでニュースリリースされているが、今回それがない。知らないうちに…という感じ。
     
  • 店舗毎で価格が異なる
    地域毎ならともかく、近隣・同業態の店舗で価格が違うと、消費者は混乱する。あるブログによると、池袋駅の東口と西口の店で価格が異なっていたらしい。

 マクドナルドの業績は大変好調であり、未曾有の不況下で数少ない勝ち組企業です。また同社はマーケティング手法でも先進的な企業として知られています。だからこそできる値上げなのかもしれません。しかし、つまらんことでイメージをダウンさせることは、マクドナルドにとってプラスにはならないでしょう。

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 今回の値上げで生じた混乱を収めるべく、いったん値上げしたコーヒーの価格を下げた店も出ているようです。そうした状況を見ると、今回の値上げは一部の店における試験的な価格改定であったかもしれません。また仮に試験実施だったとしても、店毎にバラバラすぎるのは、消費者に無用な混乱を生じさせやすいと思います。私の知る限り、マクドナルドの店長には価格設定の権限がありません(以前の訴訟問題の時に明らかになった事項に中にありました、現在は変わっているのかもしれません)。だとすれば、何らかの理由の下に本部から通達されて実施されたはずですが、近隣で価格が異なるというのは、さすがに違和感があり、上手な手法とは言えないでしょう。

 値上げは、消費者マインドからすれば、どうやってもマイナス効果を生じやすいものです。だからこそ、マイナスを最小限に抑えるような作戦が重要になります。今回は、値上げという事実以上に、その方法やタイミングに異議を唱える声が多く出てしまったように感じます。【160円】という価格を冷静に考えれば、競合他社に比べて、まだ優位性の保てる価格だと思いますが、そう受け取られていないのはなぜか、を考えるべきなんでしょう。

 試験実施にせよ本格実施にせよ、一部にせよ全国一斉にせよ、今の消費者は価格に敏感です。悪い情報はあっという間に広がります。だからこそ、慎重かつオープンな作戦をとった方がよかったのではないでしょうか。。。

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