【30万人】 目前に迫った松下の社名変更を考える(2)~やっぱDNAってやつが…
10月1日と目前に迫った松下の社名変更。その意味を考える2回目です。
創業90年という歴史は、本当に重みのあるものでしょう。これまでの松下を支え、慕い、築いてきた多数の人々の心には、この“松下”“National”という名前に対して、90年分の重さ分だけ、いろんな思いがあると思います。日本を代表する企業家であり、カリスマ経営者の松下幸之助さんに惚れ、松下で働いてきた数多くの社員たち。水戸黄門で流れていた「明るいナショナル~♪」で育ってきた多数のナショナルファン。そして「National」の看板に誇りを持ち、松下製品を販売し続けてきた全国の販売店の方々。一番難しいのは、こうした人たちの心をどう束ね、どう導いていくのか。モノではなく、ヒトの問題ではないかと感じるわけです。
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社名変更を発表した今年1月10日の記者会見で、大坪文雄社長は社名変更の理由についてこう語っています。
- 「真のグローバルエクセレンスになるには、ブランドを統一して全従業員の力を結集する必要があると判断した」
つまり、大事なことは社員の結束であり、キモチの問題だと明言しているわけです。400億円を投資して目に見える社名を変更することで、社員の意識を統一し、一丸となれるようにしたいということです。現在、松下グループで働く社員は、全世界で30万人と言われていますが、その方向を1つにするということが、本当に可能なのでしょうか。
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松下グループの中核企業の1社である、松下電工。今回の社名変更により、パナソニック電工と社名が変わります。主に住宅関連事業を手がける同社は、グループの中でもとりわけ松下の名前に強い愛着を持っている企業と評されているようです。たとえば、こんな例がnikkeiTRENDYnet(2008年9月1日付け)に紹介されています。
- 松下電工が現在使用している社章は1920年に制定されたもので、松下のMの字に矢をあしらったデザイン。これは松下幸之助氏が考案した松下創業期のものだそうです。一方、松下電器産業の社章は、1943年に変更されており、3本の松葉をイメージした矢印が組み合わされたデザインになっています。
- また社歌についても、松下電器産業では1974年に制定されていますが、一方電工では、松下創業当時の社歌を現在まで引き続いて使っています。
社章ひとつ、社歌ひとつとってみても、会社の考え方の微妙な違いが浮き彫りになります。これらの違いが、松下の名前に対する愛着度の違いを意味しているのかどうか、それが従業員の総意なのかどうか、本当の所はインタビュー取材でもしない限りわかりません。ただ、90年の歴史に宿っている松下の精神は、とてつもなく大きい。これは間違いのないことでしょう。
1月10日付けで松下より出されているプレスリリースには、こう書かれています。
- 新生パナソニック株式会社、パナソニックグループにおいても、松下幸之助創業者が確立して以来、堅持してきた「企業は社会の公器」「全ての活動はお客様のために」「日に新た」を核とする経営理念を不変のものとして、今後も実践していきます。
創業者が生み出し、育てられ、脈々と受け継がれてきた松下のDNAは、社名が変わっても、ちゃんと引き継ぐと明言しているのです。でも、社名を変えるために投じる400億円では、それはかなわないはずです。大坪社長の言葉が、10月1日以後、どう具体的に実践されていくのか。一部報道では、社名変更後も社訓を唱える「朝礼」が継続されると発表されています。こうした決定が違和感なく受け入れられれば、松下が培ってきたDNAは継承されていくのでしょう。。。