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【19人】 便利なIT技術では味わえない、不便な体験のリアルな意義~夏休みの自由研究

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 前回のエントリーで、夏休みの自由研究を取り上げてみました。親の関与、PCやWebに代表されるIT技術への依存を考えてみましたが、当の子どもたちは、どう思っているのでしょうか。自分で考えたり、失敗したり、汗かいたりすることがキライなんでしょうか。

 8月1日・2日の2日間、小学生4~6年生を対象に「自然観察講座~森に住むネズミを観察しよう!」という公開講座を実施しました。監修・観察指導は、中部大学応用生物学部環境生物科学科の上野薫先生にお願いし、岐阜県恵那市にある里山をフィールドに、トラップをしかけて野ネズミを捕獲し、その生息環境を調べるというプログラムです。これも立派な“お膳立て”ではありますが、炎天下、汗だくになりながら森の中を歩き、虫さされやかぶれに苦しみ、ヘビ・ハチなどの危険と戦いながらの作業は、決して楽なものではなかったはずです。もちろん、その辺の大変さは計算ずくで、あえて自分で苦労して体験した中で見つけた事実こそが、自分のモノになるという確信があってのものです。果たして子どもたち、その保護者諸氏の反応はどうだったんでしょうか?

 私が参加者から直接聞いた感想の一部を紹介しましょう。

 ▼保護者の声
 「ワナを仕掛けた日の夜は子どもが興奮して寝つかなかった」
 「あれだけ歩いたのに、子どもは元気で、親の私が大変でした」
 「いつもなら文句ばかり言う息子が、今回は何も言わなかった」
 「疲れてるはずなのに、宿題をいっしょうけんめいやっている姿に驚いた」

 ▼子どもたちの声
 「ワナにネズミがいるかどうか気になって早く起きた」
 「ヘビが怖かった」
 「森がなくなると困るのは人間だけじゃないとわかった」
 「(野ネズミを)家で飼いたい」

 さすがの暑さに、文句をいう子どもたちもいましたが、それでもみんな汗を流しながら、一生懸命観察し、メモをとり、あーだこーだと意見を言い合い、観察結果をまとめていました。講座では、数人のグループを作って行動してもらいましたが、はじめて会った子どもたちともすぐになじみ、協力して作業を進める様子は、とても頼もしかったです。

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 参加した子どもたちが、ネズミの絵を描いたら、“毛並みは茶色”で、“前足の指は4本”、“後ろ足の指は5本”のかわいいネズミを描くはずです。ネズミといえば、ネズミ色っていうくらい、多くの方はグレーの体色を想像されるかと思いますが、野ネズミの多くは茶色なんです。それは、参加した子どもたちの頭や心の中に、バッチリ焼き付いたはずです。

 講座の中では、野ネズミがどんな所に住み、どんな行動をし、何を食べているかなど、多くの情報を観察記録から読み取っていきました。そして、森と野ネズミの関係、その森と人間との関わりなど、いろんなことを学んでもらいました。進める中では、グループの中で意見をまとめ、発表してもらうことを強く意識し、あくまでもこちらはサポート役に回りました。実体験を元に、自分で調べたことをベースに考えてもらったわけです。考えれば考えるほど、今度はいろんな疑問がわいてきます。次は、その答えを知りたくなり、自然と子どもたちから質問の手が挙がります。すると、別のグループから「それは☆★☆だよね」って声があがります。気がつくと、子どもたちの手元には、オリジナルの“観察記録”と“わかったことシート”ができあがっています。

 今回、参加してくれた小学生は、【19人】。わずか19人の子どもたちの中に、何かを残したいと、2日間、上野講師はじめスタッフは奔走しました。19人の中で、何人かが、夏休みの自由研究に“野ネズミ”のことを取り上げる…のかもしれません。キッカケを提供したのは、わたしたちかもしれませんが、汗だくになって調べたり考えたりしたのは、子どもたちです。きっと彼ら彼女らの中に、パソコンでは得られない、リアルな何かが残ったはず…じゃないかなぁ。。。

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