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【1兆3,443億円】 ガソリン価格上昇率はオイルショック時以上…なのになぜ、新エネルギー研究で国家プロジェクトがないのか

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 オイルショックというと、物価上昇、買い貯め、パニック、とネガティブなニュースが多く語られますが、実はいいことだってありました。

 第一次オイルショックの時(1973年)、日本政府は、国を上げて石油に代わる新エネルギーの開発を促進するべく、国家プロジェクトを立ち上げたそうです(すみません、当時は小学生だったため記憶がありません…)。名付けて「サンシャイン計画」。わかりやすいネーミングですよね、太陽光などをはじめとする石油代替エネルギーの開発を促進しようじゃないかと。これは、通産省工業技術院(現在の経済産業省産業総合研究所)が舵取り役となり、産・官・学がこぞって参加する、文字通り大規模プロジェクトだったようです。続く1974年には、省エネルギー技術の研究開発を進める「ムーンライト計画」を発表。パニックまで引き起こしたオイルショックを契機に、国の対応は早かったようです。

 これらの計画により、新エネルギー開発・省エネルギー開発に向けた基幹技術開発や実用化研究などが、一体となって促進されました。さらに1980年代からは、徐々に地球環境保全への取り組みも同時に行われるようになり、政府はこれらの取り組みを統合して、より連携しながら推進するべく、1993年に「ニューサンシャイン計画」としてバージョンアップ。太陽光発電、燃料電池などを重点に研究開発が進められてきました。

 上記3プロジェクトには、累計で【1兆3,443億円】もの巨額が投資され、文字通り国家プロジェクトであったことを感じさせます。主な投資要件は、

  ・太陽光発電  3,153億円
  ・地熱発電   2,220億円
  ・燃料電池発電 1,035億円
  ・石炭液化   2,689億円
  ・石炭ガス化  1,181億円

   ※数値は財団法人電力中央研究所研究年報2007より引用

 このレポートによれば、これらの3プロジェクトを含む、日本のエネルギーR&D国家予算は、米国に次いで世界第2位の規模を誇っていたそうです。これだけの投資は、民間だけでは実現できないものです。

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 先回のエントリーで、今の石油価格高騰は、これまでのオイルショックとは原因がまったく異なるのでは、と書きました。だからでしょうか。あれだけ巨額の投資をしたはずのエネルギー国家プロジェクトも、2003年には社会情勢の変化や省庁再編などで休止(?発展的解消?)となっています。もちろんその後も引き続き動いているものもあるでしょうが、今は実用化に向けて民間主導となっている部分が多いようですね。

 これでいいんでしょうか。危機感が弱いというか。「オイルショックは来ない」という根拠無き安心感が、国策にも透けて見える気がしてなりません。今こそ、オイルショック時以上の気概をもって、サンシャイン以上のジャパニーズ・プロジェクトを打ち上げるべきではないかと。日本が技術立国(表現が古いなぁ)であることを示すためにも。復活させたガソリン税だって、未来の新エネルギーのために使ってほしいぞ~♪

 くしくも昨日6月3日、ローマで開かれている国連食糧農業機関の“食糧サミット”で、福田首相は、バイオ燃料が「食糧供給と競合する場合があることは事実」と言及。その上で「原料を食糧作物に求めない第2世代のバイオ燃料の研究と実用化を急ぐ必要がある」と表明しています。日本の首相自ら取り上げた、第2世代のバイオ燃料…次代の日本を担う技術となるのか否か。他にも、国策として本気で取り組むべきテーマは、いくらでもあるはずです。あとは、やるかやらないか…きっと朝倉総理、、、じゃなかった、福田総理も応援してくれますよ。。。

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