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テキサス州でもスマートメーター騒動が発生

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スマートグリッドと家庭をつなぐ、要の存在として位置付けられているのがスマートメーター。しかし一部で懐疑論が出ていることについてはこれまでも取り上げてきましたが、新たにテキサス州でも反スマートメーターの動きが出ているとのこと:

A Rough Rollout for Smart Meters in Texas (New York Times)

The devices, which enable utilities to vary their rates according to the time of day, allow consumers to save money — in theory. But according to The Dallas Morning News, hundreds of Texas customers have called to complain that the meters, which are being installed by a Dallas-based electric company called Oncor, are inaccurately raising their electric bills.

A town hall-style meeting was held on the issue last Sunday in the Dallas-Fort Worth area, and drew a number of anxious residents. The anti-smart meter crowd has also posted an online petition, calling for a moratorium on installations until the concerns are resolved.

スマートメーターは、一日の時間帯に応じて電気料金を変化させることを可能にするもので、理論的には消費者が電気料金を削減することも可能になる。しかしダラス・モーニング・ニュース紙によると、ダラスを拠点にした電力会社であるOncor社が設置したスマートメーターに対し、何百人もの消費者たちが「請求金額が異常に高い」とクレームをつけているそうだ。

この問題に関して、先週の日曜日にダラス-フォートワース地域で住民集会が開かれ、不安を感じている住民たちが数多く集まった。スマートメーターに反対する人々は、オンラインでの請願書も発表しており、不安が解消されるまでスマートメーター設置を一時中断することを求めている。

Smart Meter Backlash, Again: This Time in Texas (Earth2Tech)

State Senator Troy Fraser, (R) also chairman of the Senate Business and Commerce Committee, asked the Texas Public Utility Commission to call for a halt of the meter installations and to start an independent audit. The PUC tells The Dallas Morning News that it hopes to hire an auditor within the next two weeks to review the meters’ accuracy, but no word on whether Oncor will slow down its deployment.

テキサス州知事上院議員(※3/11訂正しました)であり、上院通商委員会の議長でもあるTroy Fraser氏(共和党)は、テキサス州公益事業委員会に対し、スマートメーター設置の中断と、独立監査の実施を要請した。公益事業委員会はダラス・モーニング・ニュースに対し、メーターの正確性について調査する監査人を2週間以内に任命したいと考えていると述べたものの、Oncorがスマートメーター設置のペースを緩めるかどうかについてはコメントしなかった。

ということで、米ベーカーズフィールド市でPG&E(カリフォルニア州の電力会社)が設置したスマートメーターが引き起こしているのと同じ問題が起きており、対応としてベーカーズフィールド市と同様に、第三者による調査が行われることになるようです。ちなみにOncor側は問題の原因として、今年の冬に歴史的な寒波が発生したこと、また古いメーターの方に問題があったことなど、こちらもPG&Eが示唆しているのと同じ要因を挙げているとのこと。原因はどうであれ、何らかの形で納得の行く説明が行われなければ、住民の不安は解消されないでしょう。

Earth2Techでは以下のようなコメントをしているのですが:

Smart meters are just digital IT technology used for the electrical network, and aren’t exactly bleeding edge tech — the large majority of them are likely accurate, and if they aren’t there’s a digital trail that can be looked at and fixed. As we pointed out, however, the problem in both cases is a problem of communication. Utilities need to learn to communicate a lot better, and develop a much stronger relationship, with their customers, whether that’s through marketing, PR or customer outreach.

スマートメーターは単に、電力網の中で活用されるIT技術のひとつであり、最先端のテクノロジーが使われているというわけではない。その多くは正確に動作するし、不正確なのであれば痕跡が残り、後から原因を追及して修正することができる。しかし我々が指摘したように、両方のケース(※ベーカーズフィールドとテキサス州の騒動)ではコミュニケーションに問題が起きているのだ。電力会社はコミュニケーションについてより深く学び、マーケティングや広報、奉仕活動など手段はどうであれ、顧客との関係をより強固なものにする必要がある。

個人的にもこの点は同感です。もちろん現在も電力会社では様々なPR活動を行っており、クオリティの点でも優れていますが、スマートメーターの導入は単に機材が入れ替わるというだけの話ではありません。それと同時に料金制度やサービス、家庭内の関連機器など様々な変化が発生するわけですから、何か問題があれば、具体的に目に見える存在である「スマートメーター」が批判の矢面に立たされることになるでしょう。その意味で、単にメーターの導入だけを取り上げるのではなく、スマートグリッド、ひいては電力というインフラそのものに対する消費者教育が必要になっていくかもしれません。

もちろんこの問題の責任を、電力会社だけに押しつけるわけにはいかないでしょう。関連業界や政府も参加して、こうしたトラブルが起きたときの対処方法や、救済方法について論議しておく必要があると思います。ベーカーズフィールドとテキサス州の「事件」は、そのケーススタディとして扱うことができるのではないでしょうか。

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