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「スマートメーター」から「エネルギーサービスインターフェース」の時代へ?

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このブログでも先日少し触れましたが、いま米国の消費者の一部に「スマートメーター懐疑論」とでも言うべき動きが現れています。思った以上にコストがかかる、計測の正確性に疑問がある等々、全てがスマートメーターの責任ではないのですが、スマートグリッド全体も含めて「本当に必要なのか、どこまで必要なのか、誰が責任を負うのか」と問いかける声が出ているわけですね。

しかしスマートメーターはスマートグリッドにおける根幹の1つであり、それを不要というのは論外ではないか――どうやらそうとも言い切れないようです:

Count the Ways to Connect Consumers to the Smart Grid (Earth2Tech)

需要家とスマートグリッドの仲介となるスマートメーター、その代用は考えられないのか?という動きについてまとめられています。実際、「ある住宅における消費電力を測定する」程度の動作であれば、現在でも関連製品が登場していることはご存知の方も多いでしょう(上記記事でもいくつか紹介されていますので、興味のある方は全文を確認してみて下さい)。問題が顕在化してきたスマートメーター導入に対して、念のため回避策を用意しておこうというわけですね。

NIST is launching a new blog to open an industry dialogue around the “customer interface to the Smart Grid.” According to an opening post by George Arnold, NIST’s national coordinator for smart grid interoperability, one major question is whether the smart meter should be the primary gateway for home energy data, or whether the smart grid industry should be looking at a separate energy gateway for some or all of the home energy data that’s out there. Arnold dubs this the “Energy Services Interface,” but doesn’t get into more detail — though he does note that he’s interested in learning of “alternative architectures involving real-time (or near-real-time) electricity usage and price data” that could fit the bill.

NIST(※米国国立標準技術研究所)は「スマートグリッドと消費者の間をつなぐインターフェース」について業界全体での議論を行うため、新しいブログを立ち上げた。NISTでスマートグリッドの相互運用性についてコーディネーターを務めている、George Arnold氏が投稿した最初の記事によると、彼らが問いかけようとしている大きな問題の1つは「スマートメーターは家庭内エネルギー消費量データの主要なゲートウェイとなるべきか、それともスマートグリッド業界は、家庭内エネルギー消費量データの全体、もしくはその一部を取り扱う別のゲートウェイを用意するべきか」というものだ。Arnold氏はこの「別のゲートウェイ」のことを、「エネルギーサービスインターフェース(Energy Service Interface)」と名付けているが、それ以上の詳細については語られていない。ただし彼は、「リアルタイムの(もしくはリアルタイムに近い)電力消費データおよび料金データを取り扱い、求められている要件を満たせるような代替アーキテクチャ」について学ぶことに興味があると述べている。

ということで、関連データの全体、もしくは必要な部分だけを取り扱うことが可能なスマートメーター代替品、「エネルギーサービスインターフェース(ESIとでも呼ぶべきでしょうか?)」という概念が提唱されていることが紹介されています。ESIという呼び名が定着するかどうかは分かりませんが、スマートメーター以外の道で需要家側でのエネルギー関連データを管理しようという発想は、確実に検討されていくのではないでしょうか。

しかしスマートメーターという形で、電力会社(もしくはそれに準じる企業)がデータを一括で取得・管理するのではなく、必要な部分を個々の機器/サービスプロバイダーが管理するという形式で良いのか。すぐに思いつく短所は、Earth2Techの記事でも指摘されていますが、コストがかさんでしまうところでしょう。初期投資できる余力を持つ人がますます得をするという、以前も取り上げたような「スマートグリッド・ディバイド」とでも呼ぶべき状況が起きてしまうかもしれません。その一方で、「できるところから/必要なところから始める」というアプローチの方が、結果としてテクノロジーの導入が早く進むという可能性も考えられます。

恐らくどちらが良い、どちらのアプローチのみを選択すべきだという話ではなく、それぞれが実地検証を経て活用されていくのでしょう。スマートグリッド自体、まだしっかりと固まった概念とは呼べない状況ですし、こうした柔軟な動きは今後も活発に行われていくのではないでしょうか。

【○年前の今日の記事】

「社員を信頼する」というセキュリティーポリシー (2009年2月23日)
聖地をつくる (2007年2月23日)

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