Coinhive事件(コインハイブ事件)裁判の最高裁判決が遂に出る!有罪か?再度、逆転無罪か?
2018年に話題にあがったCoinhive(コインハイブ)事件を覚えていますか?
当時、私のブログ記事でも取り上げましたが、自分のサイトにJavaScriptで動作する仮想通貨のマイニングプログラムを入れた人20人以上が、全国で警察に摘発された事件です。
コインハイブ(Coinhive)摘発とCANVAS fingerprint.jsについて
https://blogs.itmedia.co.jp/agile/2018/06/coinhive_canvas_fingerprint_js.html
摘発されたほとんどの方は、起訴され簡裁での罰金刑の略式命令を泣く泣く受け入れました(つまり、自分のホームページにJavaScript追加しただけで前科持ちになってしまった。。)が、神奈川で摘発されたWebデザイナーの男性はそれを受け入れず、正式な裁判に発展しました。
一審の横浜地方裁判所は無罪を言い渡し、私も含めて、世の中のリテラシーの高いネット界隈の人たちはほっと胸をなでおろしたのですが、検察は東京高等裁判所に控訴、そして、なんと東京高裁は2020年2月にコインハイブはサイト訪問者に有害なウイルスに当たると認定して、地裁の判決を破棄して逆転有罪の判決を出したのです。
それから2年、世の中の人たちはこの裁判のことはもちろん、コインハイブ事件のことやCoinhiveという名称を聞いてもそれってなんのことだったっけ?みたいな感じかと思いますが、私はずっと裁判の行方を気にしておりました。
なぜならば、私が一時期生業としていたアドテクを活用した媒体のマネタイズも、結局はコインハイブと同じようなことをしているわけですよ。
サイトにJavaScriptやらいろいろ仕込んで、ユーザーのPV(インプレッション)をちゃりんちゃりんと小銭に変えているわけです。
下手するとコインハイブよりもユーザーのコンピューターのCPUや帯域を勝手に使っているかもしれませんし、ユーザーの行動履歴や位置情報などプライバシーに関わるような情報も勝手に利用しているわけです。
それがインターネットで無料でコンテンツを見たり、情報を得るための言わば消費者側の代償なわけです。
まあ、この3-4年ほどでアドテクの方もEUのGDPR、カリフォルニアのCCPA、AppleのITP、個人情報保護法改正などで以前のようなことは大っぴらにも陰に隠れてもできなくなりましたし、GDPRでは1000億円近い制裁金を科せられた企業も出てきています。
とはいえ、サイトのフロントで動くほぼ無害のJavaScriptによって、サイト運営者が逮捕されるという前代未聞の不当逮捕、立件はネット界隈、ウェブ界隈で飯を食う人間としてはあり得ないわけで、これを有罪としてしまう最悪の前例、判例は絶対に残して欲しくないと考えているので、明日の判決にはほんと注目していますし、晴れて逆転無罪の判決が出ることを願って止みません。
ちなみに、私の友人がコインハイブ事件について、千葉大学の法学論文集に紀要論文を書いたそうです。私のように浅い分析ではなく、ぐうの音も出ない論法でコインハイブでの立件の矛盾をついているので、ぜひご一読を!
「アプリ開発の実務を踏まえた不正指令電磁的記録に関する罪の一考察 : コインハイブ事件を契機として」 https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900119535/S09127208-36-1-P056.PDF
彼の問題意識としては、たとえば、医療過誤では医学の文書が参照されるが、情報技術ではそうはなっていないというのが実態。そもそも、法曹はこういう技術文書があることさえ知らず、技術文書を一切無視して、判断をしようとすることを非常に憂慮しているとのことです。 彼のような良識のある法曹の人が最高裁判所にいると良いのですが。。
コインハイブ事件の最高裁判所での判決は、明日、令和4年1月20日午後3時00分に、最高裁第一小法廷、山口厚裁判長にて言い渡されます。
https://www.courts.go.jp/saikosai/kengaku/saikousai_kijitsu/index.html