「雲」の中の5.8兆円
電通による2009年度の国内広告市場予測(PDF)が5.8兆円だそうです。
この5.8兆円の内訳は4媒体と言われるTV・ラジオ・新聞・雑誌で2.8兆円、インターネット広告で7千億円、プロモーションメディア広告(屋外広告、DM、店頭POPなど)で2.3兆円といった数字になります。
快進撃を続けているインターネット広告の規模は、全広告費の中のたった12%。
一方、旧来の4媒体の中でTVCM単独でも29%を占める1.7兆円です。
世帯のインターネット普及率は91%に対し、TVの世帯普及率は99%。
「情報流通媒体」としての普及率としては、地上波だろうとインターネットだろうと、それほど大きな差はありません。
雑誌に関しては昨今話題の電子書籍や情報系のサイトで、ニッチな分野から代替されつつあります。
新聞は電子化され、従来の「段(=紙面のスペース単位)」による広告体系とは別のサービス体系となっています。
プロモーションメディア広告についていえば、
屋外広告
交通広告
DM
店頭POP
などがあげられますが、出稿・制作コスト、表現力の問題から
屋外・交通・店頭POP =>デジタルサイネージ
DM=>e-mail広告
にとって変わられようとしています。
たとえば、JRの社内ではすでにTFTで、時間帯によって広告の掲出内容を変える、動画の再生をするなどは実用化されており、列車の更新とともに拡大しています。郵送DMからe-mail広告へのシフトはもう10年も前から始まっています。
回線速度の向上により、静止画やGIFアニメが限界だったコンテンツも、Flashによる動画広告は当たり前になりました。
据え置き型PCやノートPCに代わり、スマートフォンなどの情報端末も、その通信機能とともに進化しています。
前置きが長くなっていますが、何が言いたいのかというと、旧来の広告はITにとって代わられつつあるという事です。
我々IT業界の国内市場規模は、IDCの予測による2010年のIT関連の市場規模予測によるとおよそ11兆2,168億円です。このほとんどが、社内のシステムのために投資されています。
社外に向けた広告のためにIT投資がされるなら、5.8兆円という新しい市場が生まれる可能性が有るわけです。
そこに着目したのがGoogleです。彼らの成功は「広告とITの相性が良い」という事実を表しています。
しかもこの5.8兆円の多くはB2Cを主目標とした広告市場です。国内GDPの多くを占める「中間財における付加価値」に於いては広告に対するニーズそのものが小さかったのです。それはなぜか?広告には大規模なマス広告しか情報デリバリーのインフラが存在せず、必然的にコストをかけることができないためです。
B2Bに於いては広告という言葉自体あわないかもしれません。(昔、広告に対する「狭告」という言葉もありました)
これまではITによる広告といえども、供給側のインフラとしてサーバと管理者を用意する必要がありましたが、クラウドにより、そうした手間は解消されます。まさにキャンペーン単位で作ったり消したりがコスト的にも技術的にも簡単になります。
不特定多数へ単一情報を一斉同報することに特化した従来の広告インフラ。
特定少数へ必要に応じた情報を非同期に配信することに対応可能なITインフラ。
コンシューマ分野ではなく、B2Bの広告(狭告)にこそ、ITのあたらしい市場が有ると考えています。
Googleのロングテール、Salesforce.comは、「特定少数を絞り込み、情報を低コストで提供し、レスポンスをビジネスに直結させるための仕組みがほしい」というB2Bのマーケティング(またはそれに類する)部門のニーズを的確にとらえていると考えられないでしょうか?