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ITの技術や方向性考え方について別の選択肢を追求します

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え?あれっ、突然、涙が出た。私は比較的涙腺がゆるく、マンガを見てもポロポロと涙を流す方ではある。しかし、オルタナティブ・ブロガー、川上さんの「Netscape 消滅」のブログをチラッと眺めただけで、ボタボタと涙がこぼれ出た。

2008年2月1日をもって、Netscapeブラウザのサービスが終了する。Netscapeがこの世からなくなる。

Netscape_classic_logo インターネットの黎明期、ブラウザといえばマーク・アンドリーセンが作ったモザイクであった。みんなモザイクでインターネットにアクセスを始めた。1994年、マーク・アンドリーセンとジム・クラークによってモザイク・コミュニケーションズが設立され、同年11月には、会社の名前を「ネットスケープ・コミュニケーションズ」に変更した。

Netscape Navigatorを無料配布(機能制限付き)し、インターネット普及に大いに貢献した。株式上場時には、たいへんに白熱し、ジム・クラークのベンチャービジネスの方法は話題となり、ジム・クラークについて書かれた本も出版された。そして、マーク・アンドリーセンは、若き天才に祭り上げられた。機能制限のない、正規版はライセンス付き有料のパッケージとして販売され、大企業への導入などにより、事業は拡大していった。

その後、マイクロソフトが Windows 95 を出し、Internet Explorer を出し、無償版を Windows に同梱。これが、決定的な市場シェアの変換を実現した。いわゆる、ブラウザ戦争である。わざわざパッケージソフトウェアを購入しなくとも、OSについてくれば、普通ならそちらを使う。

余談だが、オフィス製品も同様な歴史がある。オフィス製品は始め Lotus 社がシェアを持っていた。Lotus 123、Freelance、Wordproなど優秀な製品製品ラインナップがあり、私はいまでもプレゼンテーション用ツールとしては Freelance が(わが社のStarSuiteよりも、もちろんパワーポイントよりも)数段上、最高だと思う。

しかし、OSへの同梱でなくともPCを製造・販売する会社が、マイクロソフトのオフィス製品をプリインストールしていたら、やはり消費者はそちらを買うだろう。わざわざ自分でソフトウェアを導入する手間がいらなければ、そちらの方が良い。企業などでのPC導入でも同じことだ。

つまりは、技術的にマイクロソフトの方がネットスケープより優れていた、なんてことはまったくない。技術的には、ネットスケープの方が数段上だったと思う。セキュリティの高いインタネット通信を実現する、SSL/TLS はネットスケープが作った。いま、Web2.0 にはなくてはならない、JavaScript もネットスケープのBrendan Eichが作ったものだ。LDAP によるディレクトリーサーバ製品を完成させ、普及させたのもネットスケープだ。

1998年、ブラウザを欲しがっていた、当時は飛ぶ鳥を落とすIT企業だった AOL がネットスケープを買収した。しかし、ネットスケープは創設当時から、ブラウザだけでなく、サーバ側のソフトウェアも開発・販売していた。大企業まで視野に入れ、スケーラビリティとセキュリティ機能が優れている製品で、インターネットに必要なミドルウェアばかりである。しかし AOL はサーバビジネスをしないので、それらサーバソフトはサンが受け継ぐこととなった。それが現在の Sun Java System Directory Server であり Sun Java System Web Server である。

1999年4月、ネットスケープとサンは仮想型の会社、Sun/Netscape Alliance を発足させた。3年間の契約期間を通じて、ネットスケープの持っていたサーバソフトをサンとネットスケープで共同開発し、知的所有権を移管した。私は、1999年10月にこの Sun/Netscape Alliance にマーケティングマネージャとして入社した。そして契約の終了する2001年4月までの間、日本ネットスケープ社の人たちといっしょに仕事をした。

現在、Mozilla Japan の代表理事をなさっている瀧田 佐登子さんは、当時Netscape Navigator の日本のプロダクト・マネージャだったが、サーバソフト側の人員が足りなかったので、ワークロードの半分を私のチームに振り分けてもらっていた。開発の大部分がシリコンバレー・マウンテンビューにあるネットスケープ本社だったので、よく出張に出かけていた。サン側の社員も、ネットスケープの施設のほとんどに入館許可が与えられていたが、一度瀧田さんと出張して、ブラウザのチームと瀧田さんが会うので、同席しようとしたら、断られた。

いまのこの、Mozilla だが、これはもともとネットスケープのマスコットの名前だ。当時からネットスケープのオフィスには、そこら中に Mozilla が置かれていた。Tシャツもあったし、社内用Webサイトは Mozilla だらけだった。以上からお分かりかと思うが、ブラウザの技術は、ネットスケープが AOL の一部になり、Mozilla Foundation が出来上がると、技術者や瀧田さんのようなキーパーソンは、Mozilla に移ったのだ。

だから、みなさんは安心して Firefox や Thunderbird を使えるのです。ネットスケープの DNA が Mozilla には生きている。さらに言えば、ネットスケープの DNA はサンに移植され、サンの製品の中にも、ネットスケープは生きている。Netscape は永久に不滅なのです。

とおる

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高橋徹

現在サン・マイクロシステムズにて、様々なミドルウェア・ソフトウェアの販売推進・ビジネス開発を担当しています。旅行、食べ歩き、読書が趣味。

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