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30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

IT屋に未来はあるか

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一昔前はITの技術そのものに注目が集まり、それだけで商売になった。最近はITそのものだけでは食ってゆけなくなりつつある。社会貢献とかそういう話はここでは置いておくとして、企業は商売をして金を儲けて利益を出すために存在する。商売の内容がITそのものならIT至上主義になるのだが、全企業に占めるIT企業の数はたかが知れている。ほとんどの企業は、IT以外のネタで商売をしている。つまり、ITは企業の主目的である商売をサポートするために存在する。

最近のシリコンバレーで見てみると、確かに新しい技術がないわけではないが、なにやらITは元気がない。米国のIT雑誌では、今後望まれるIT屋という特集が組まれたりしている。それをちらりと見ると、簡単に言えば、専門馬鹿ではだめだということだ。技術が理解できるのは当然として、その企業のビジネスを理解してITがどのような形でそのビジネスをサポートできるのかを知っている必要がある。ITはツールだと割り切れることが必要だ。

ベンチャー企業であればCTOは当然として、VP EngineerでもDirector of Engineeringでもその企業のビジネスを理解している。場合によっては一兵卒の技術屋でもビジネスの感覚があったりする。技術屋は技術至上主義に陥りやすく、ビジネスなんかには興味がないという人も多い。こういう人は絶対に潰れない企業に多いように思う。

ITITだけでは通用しない時代がやって来た。ITはどこへ向かっているのだろうか。もし貴方が筆者のようなIT屋であれば、今後どうすれば生き残れるのだろうか。先程述べた、ビジネスやマーケティングの感覚を磨くことは、重要な鍵になるだろう。さらに、今後伸びそうな分野にシフトしていくということも考えられる。IT市場の流れを見ると、グリーンITは今後発展が期待できる分野だ。この分野、IT機器それ自体のエネルギー効率化と、ITを利用した様々なビジネスのエネルギー効率化という2つに大きく分けて考えられそうだ。前者にはデータセンターの効率化も含まれ、仮想化やハードの効率化などがあるが、ある程度の成果が上がり始めており、筆者個人としては、急激な成長はあまりないように思える。後者は適用できる範囲が広く、そのためそれぞれのビジネスを理解していないと適切な適用ができない。

自分の経歴から、筆者は前者に興味を持って活動をしてきた。この分野は適用範囲が狭いこともあるが、対象が絞られているため焦点を絞りやすい。特にデータセンターのエネルギー効率化についてはかなり詳しくなった。後者の場合、範囲が広すぎて焦点の絞り込みが難しい。それで筆者はこれをパスして、今流行りのスマートグリッドへ焦点を移動中だ。

そのうちこのブログでも書くつもりだが、米国で言われているスマートグリッドと日本で盛んに論じられているスマートグリッドはかなり違う。米国でのスマートグリッドは、電力網と通信(Communication)、ITの合体したものと考えられている。今後エネルギー問題は大きくなる。そこへICTを投入するというのは、理に適っている。しかも、筆者は電気工学(EE)の出身だ。ICTEEの融合はまさに、「いらっしゃ~~い」というところだ。それに対し日本では、スマートグリッドは各家庭の屋根の上のソーラーパネルと電気自動車というイメージが強く、ICTは関係ないように思われがちだ。(そのためそのイメージを払拭する記事を書いている。発表されれば、ここでも報告する。)

スマートグリッドでのICTは表舞台には立たない。表舞台の主役はあくまで太陽光発電とか電気自動車だ。ICTはよく言えば「縁の下の力持ち」、悪く言えば「陰の黒幕」だ。これはICTを道具として見るというこのブログの最初に述べた方向とも合致している。さてIT屋の貴方、今後どうしますか。

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