就職格差社会
今年は昨年にも増して就職難と言われている。10月1日時点での大卒就職内定率は57.6%と発表されている。これはここ15年で最も低かった2004年度の同時期の60.2%と比較しても、かなり低いと言える。様々な理由が言われる中で、私は学生側にも企業側にもそれぞれ格差社会構造の存在が一つの原因だと考えている。それは情報と機会の格差である。
平均すると就職求人が少ないと言われているが、厳密には違う。ハローワークのデータをみるといわゆる求人率というのは、大手企業と中小企業との間でかなり差がある。大手企業では1.0を下回る求人倍率に対して、従業員300名以下の中小企業はその約4倍の求人率らしい。これを見る限りは、学生側が大手企業への就職活動には積極的だが中小企業への活動は消極的であり、その結果として就職率60%を切るという状況を招いているのではないか?と考えられると思う。確かにその側面は否定はできないかもしれない。運動会などであえて順位をつけないという有名な話にもあるように空気を読まないと社会に溶け込めない時代に育ったきた現在の学生にとって、早い段階から中小企業も広く視野に入れて就職活動をする学生は少ないのかもしれない。逆に言うと、企業にとってもこれは求人(機会)格差と言えるのではないだろうか。
ただ、一方的に学生側を問題視もできない。就職活動での情報収集にインターネットが主として活用されるようになったのは2000年頃である。
それまでは、大学3年後半になるとリクルートなどから電話帳のような応募ハガキがセットされた本が届くいていた。実際にハガキを企業側に送りエントリーをしていた。現在はそのほとんどはネットで行われる。がしかし、中小企業がそのような就職活動ナビサイトをしっかりと投資してできているかというとやや疑問が残る。採用規模から考えても採用費に割り振られる予算も限られてくるだろうし。これも学生にとっては情報格差なのである。
中途とはいえ採用業務に関わる立場である私としては情報と機会の格差を埋めていくには、やはり活動する側の努力がこれまで以上に必要になると感じられる。企業側は求人なりの情報を発信するが、就職活動する側は多くある情報の中から選んで行動をする立場であり、見定める力が必要なのである。ワールドビジネスサテライトを毎日のようにみてると元気な中小企業や業界が何んとなくでも分かってくる。情報が多くある中で有益な情報をきちんと見定める能力は当然ビジネスは必須な能力だが、社会人になる前からそれは試されているのである。