自己の人事評価に対する準備
ある日突然、自分の上司が仕事を辞める・・・なんてこと、特に外資系で仕事をしていると珍しくはない。時として後に残る人たちには余計な仕事が増えたりして迷惑なこともあるとは思うが、上司がいなくるということは新しい人たちが新しい挑戦をできるということで、総じて良いことだと私は思っている。(厳密には、良いことだと思うようにしていると言った方が適切かもしれない。)常に上司がいなくなったとしても代わりができるような準備(もしくはその上司以上のパフォーマンスを発揮するための準備)をできていて、そういう役割が自分にアサインされれば良いのだが、ほとんどのケースはいきなり準備もできてないと思われる状態で振ってくるものだろう。逆に言うならば、ピープルマネージャーは自らのキャリアを選んで辞める選択をする為にも、常に自らの後進の育成に力を注いでおくべきとも言えるが。
さて上司がいなくなって、いざ自分にチャンスが巡ってきた時には何を心がけると良いのだろうか?私の知る限り、どんな人も自分の経験値や自信を超える仕事をやらざる得ない状況が差し迫って、それを何とか必死にやりこなすことで次のステージへと成長する。従い、これはみんな成長の過程で経験をすることだとは思うが、それでもやはり新しい挑戦へのやる気を感じたり、同時にそれまでにはない緊張感やプレッシャーというものも感じるはずだ。果たして自分にできるのだろうか?といった不安になってしまうこともあるだろう。やることも一気に増えて時間も足りず、単に仕事をこなすだけではなく部下がつく場合は、それなりの考えや振る舞いも求められる。
視線を固定させる
こういう状況に限った訳ではなく人事評価として求められる事柄が多く、”見られている=期待されている”というプレッシャーもある場合は、もし「○○の仕事だけしっかり成果を出せばひとまずは良い。」というように上司から言葉があれば、間違いなくメンタル的には余裕が生まれるはずだ。事実、初めから全てをできる人もいないし、だったら前向きにできることに一生懸命注力することで少ないながらも確実な成果を出す方が効率的かつ健康的である。ただ、それを上司が気を遣って助言してくれることはあまりないかもしれない。何故なら、自らもそのような経験をして、苦しみながら乗り越えることこそが成長の糧だと知っているからだ。恐らくは、上司から言わせると”実際にはそんな多くを期待していない”と言われるかもしれないが。
ここで上司や周囲の視線を一つの方向に固定して他に目を向けさせない ということができれば楽になる。分かり易く言うならば”テストされている”だろう項目を絞るのである。つまりは、上司と評価項目を事前に握ることである。いくら自分が努力をしても全く違う部分で上司や会社は評価しようとしていたら、それはそれで不幸なことになりかねない。であれば、上司に対して先に自ら宣言をしてまうことで、自らの外部からのプレッシャーを軽減させることができ、やると決めた部分にしっかりと注力することができると思う。例えば、10個のタスクを上司から頼まれた場合にもし徹夜をしてもそれ全てが完了しえない状況があるとしたら、やると言って結果的にできない人よりは、実現状を正しくアセスメントした上で出来ることと出来ないことを明確に説明をしてくれる人の方が確実に評価は高い。出来ないかもしれないと予め言われていたのに、後から怒る人もまずいないはずだ。”ここは出来ないというリスクがあります”と白状して許して欲しいと言う代りに確実にコミットできるところを明確にすることで、上司は代替え案を講じることもできるだろうし、自分自身も心に余裕が生まれるだろう。結果的に双方でポジティブになりうる可能性が高いのである。これを自らのコミュニケーション、この場合は”交渉”と言っても良いかもしれないが、とても重要なことである。立場が責任ある立場になって背負うものが大きくなればなるほど、マストなコミュニケーションスキルだと言える。
ただ、ここで注意することは正しいアセスメントと具体的なネクストアクションプランである。出来ることをコミットするのは良いのだが、そもそもコンサバティブになり過ぎて弱気だと当然それはまずい。また、やるべき残された事柄をいつまでにどのようにやるのか?ということをセットで説明ができないと、借金をただでチャラにしてくれと言うのと同じである。当然、そんな都合の良い言い分は通用するはずもないので、必ずいつまでに終えるのか、その為に必要なことがあればリクエストする・・・と言ったようなプランをできるだけ具体的に提示できて初めて猶予がもらえる。自由と責任、権利と義務と似た関係である。
もとより、普段からの多くのコミュニケーション機会を積極的に設け、上司や会社が自分に期待していることは最低限どこにあるのか?というポイントを抑えていることも重要だと言えるだろう。