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今あらためて組織力が問われる時代に、”負け組をつくらない組織”の作り方を研究していきます。

継続は"信頼"なり ‐ ②

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前回に続き、「継続」というものが生み出すエネルギーについて。

以前、中国にいた頃に現地の日系企業で働く人向けに簡単なトレーニング・講演をしたことがある。その中で私は“最低でも5年はここで頑張って働きましょう・・・”ということを主張した。ちょっと言い過ぎかもしれないが、この5年の根拠としては同じく「継続」から生まれるだろう信頼を勝ち得る為に必要な最低限の継続期間だということで設定している。封建制度の名残を引いた組織体系の日系企業の多くは、その文化的背景からも真面目に精進して継続的に仕えることを美徳とする。従い、誤解を恐れずに言えば、比較論として日本語を覚えて日本の市場で働く上では勤勉さ、責任感といった点で不信感を抱かれやすい外国の人々が特に重視されるポイントだと言える。5年という期間は、そういう意味で「信用できる人だ」として、評価をしてもらう為には望ましい期間となる。

余談だが、歴史的な遺跡や書物、または伝統的な文化などが芸術的・文化的な価値を含め評価されるのも、前提として移り変わりゆく世の中において長期間に渡り、同じ状態・状況を維持していること自体に人は感動し価値を見出すのだと思う。野球選手の連続試合出場記録もある種同じだと言える。「継続」されているものはそれ自体に価値があるという証である。

「継続」は、知覚心理学的にも人間の学習における脳に与える影響としても効果的だと見ることができる。人間の脳は一定のリズムで繰り返し刺激を与えられると気持ちや意識に変化が起きるというものだ。繰り返し効果とかサブリミナル効果と言われるものがそれだ。その昔、日本でも自白させる為の拷問の一つとして、額に一定のリズムで滴を落とすという手法があったらしい。これはある一点に集中的に一定の刺激が加わることで感覚的にも精神的にも麻痺させ最終的には精神的におかしくなり発狂してしまうと言う。これは少し極端な説明だったかもしれないが、確かに継続的に与えられる刺激には無意識にもそのリズムや刺激が頭に残ってしまうというが日常生活でもあるだろう。テレビのコマーシャルなども同じだ。何度も繰り返し放映されて目にしているうちに、その商品名を覚えてしまい実際に店頭でそれを思い出すのだ。新しい情報の脳への定着という点でも継続的な刺激が有効だと言える。

セルフプロモーションにおいては、自分のメッセージの発信内容が正しくなるように努力をした上で、それを「継続」させるようにしないと相手には伝わらず、理解も信頼もしてもらえないと捉えている。自分に都合の良い時だけ主張をする人は逆に疎ましく思われるだけである。

マネージャー職の人が悩むこととして、組織全員が同じベクトルを同じ強さで行動できる団結力をいかにして作れるか?ということがある。当然、その為には目標やフォーカスするアイテムを正しく理解してもらう必要がある。しかし、そう簡単に人の心を100%同じ方向に向けることはできないから、常にマネージャーは悩む。加えて私自身の例で言うと、マネージャーとしては若輩であり、経験差や年齢差からチームの気持ちをまとめるのは容易じゃなかった。そこで実際に私が試みたのが「継続」によるメンバーの意識改革である。

① 必ず覚えて欲しい目標・スローガンを分かり易いフレーズで決める
② その目標・スローガンの伝え方を考える
③ 後は毎日同じように同じセリフで言い続ける

ポイントは、「毎日欠かさずできるだけ同じ時間、同じシーン、同じセリフを来る日も来る日もつぶやき続ける」ことである。これだけで、人の意識下に染み付いてくる。”しつこい”とか”うるさい”と思われることもあるだろうが、それでも言い続ける。ちなみに、私はこれを自分のマネージャー業務の日課として毎日メンバーごとにちゃんとスローガンを伝えたかどうかをエクセルにチェックしていた。継続できずにはメンバーからの信頼も得られないからだ。それこそが組織の中で人の上に立つ立場としてマネージャーがやるべき仕事なのだ。思い返せば、逆にこの部分に力が入れられてなかった時はやはりチーム力は育たなかったように思う。やはりどんな正しいことも理解され信頼されないと意味がないのである。

一部のずば抜けた才能を持っているような特殊な人を除いては、信頼を勝ち得るには物凄い時間と労力が費やされるのは知っての通り。そう、何故、信頼を得るには時間が掛かるか?というと、まさしくある一定期間以上「継続」されているという実績こそが信頼を作るからなのだ。

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