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今あらためて組織力が問われる時代に、”負け組をつくらない組織”の作り方を研究していきます。

映画”Matrix”に見る不完全な世界とは

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映画”マトリックス”では、機械と人間の戦争の後、最終的に勝利した機械が全ての人間をコントロールして作った仮想現実世界こそが「マトリックス」であり、人間は物質的には機械につながれカプセルの培養液の中で生まれて死んでいく。カプセル中の人間はプラグで繋げられ、精神だけは仮想現実世界「マトリックス」の中にあり、これが我々がいるこの世界だという設定になっている。この「マトリックス」はその後失敗を繰り返す。救世主”ネオ”とマトリックス設計者とされるプログラムの会話で映画の中で解説されている。「最初は完璧な理想的世界として作り上げられたマトリックスが、人間たちが元来持っている「不完全さ」によって失敗に終わり、次に人間の歴史を見直し、マトリックスの世界に人間と同じように不合理、不完全な面をインプットする。しかし、それだけではマトリックスは世界観を完成できず、人間に更に“選択”という行動を与えることで99.9%の人間がマトリックスというプログラムに順応した・・・」と。

確かに、地球上に絶対で完璧なものは存在しない。殊に人間という生き物は、たちが悪い。時に傷つけあう、汚いことをする、嘘をつく、ミスをする、間違いと知っていて間違いを犯す、怠ける、欺く… 決して完璧ではない。歴史をみても有史以来、地球上には戦争がなかった時代がない。生命とは生を受けた瞬間から本能的に生を継続させたいと欲し、また人には素晴らしい能力として多種多様な感情が備わっている。それ故に、本能的な人間の性が、戦争や悲しい出来事を生みだす。人間同士が集まってできているこの世界は、「不完全」なもの同士が集まってつくっている世界、「不完全な世界」である。この世界の中で起きることは全て「不完全」である故の結果である。

だからこそ、人は必死に正しい道を進もうと努力をする。また「選択」をすることで不完全さをコントロールすることもできる。それが人格を形成し、家族をつくり、組織をつくり、法律を作り、国、社会を作る・・・人類の成長の歴史である。進化心理学では、一部人間の不完全さがもたらす非適応行動をどう考えるべきかという議論がある。私は、人間は不完全な生き物だと認めることで、不完全・不確実さを補う形でこの世の進化発展を大いに促進しているということを考えると、進化する為のある種の適応行動とも見れるかもしれない。

人類の進化に不完全さが影響しているとしたら、会社での組織の形成も同じことを適用して考える方がいいだろう。例えば、部下が失敗したときに、「何故、できないのだ?何故、教えたとおりにやらないのだ?」という本心が相手に伝わるような反応を示す人がいる。相手を認めることや受け入れることをせずに、自分の価値観に基づきコミュニケーションをとる、いわゆる押しの強いタイプにありがちなケースである。初代マトリックスの設計は、このミスを予め理解できてなかった為に失敗に終わった。同じようにそういうコミュニケーションは組織そのものを失敗に導いてしまう可能性が高い。まずは自分を含めて皆同じく失敗をする不完全さを持っていることを認め、その上で成長することを一緒に考えてあげることだ。当然、同じことを何度も言っても聞かない部下がいるとしたら別の問題にはなるが、それでもそれも含めて、次回以降、同じような失敗をしないように教育し、正しい組織をつくり、確実なマネジメントシステムを考え、成功に導く環境=組織を作る。これが組織において上に立つ人間 = マトリックスの設計者 にとっての成功の鍵となる。

不完全な人間同士が争わず共存するには、自分を大切にすると同時に、お互いの価値観をぶつけ合うばかりでなく相対化して互いを捉えなるべきである。多様な価値観それぞれを受容するにせよ、拒絶するにせよ、一度相手の考えを受け止める力があれば、世界は、その人にとって汲めども尽きぬ学びの場を提供してくれる。その過程で自分の古い殻を自分で破っていくほど楽しいことはない。話が逸れるが、教育の目的とは、極論すれば、その喜びを経験させることにあるのかもしれない。

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