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エンブレム問題はネットに何を投げかけるか?

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東京2020大会のエンブレムで審査側にも不正があったことが主要紙などの確からしいニュースソースから報道されています。これは大きな問題だと思います。いえ不正そのものではありません。ネットに次なる動きを招きそうだからです。

というのも今年は新たなスマホ元年だったのではないでしょうか?スマホ元年というとiPhone3gを指す人もいればiPhone3gsだ、いやiPhone4とandroid陣営の対立だ、いやLTEからだ、などの意見がいろいろとありあますが、今年はスマホユーザが年配までぐっと広がった年であったように思います。そのきっかけとなる出来事は明確には思い当たりませんが、おおかたのところLINEやFacebookに誘われて悔しい思いをしたとかでしょうか。

私の体感としても電車の中などでふと目に入った隣の人の画面が明らかに2chまとめサイトだったりして困惑する機会が増えました。それほどITリテラシーが高くなさそうな年配の方が読んでまじめに受け止め過ぎないか心配なような内容の記事も多いからです。

そんな中で発生したのがエンブレム問題でした。テレビや新聞でさえネットの有志がエンブレムのパクリ疑惑を指摘しているという文脈で報道をおこなったように記憶しています。中にはこじつけっぽいものもありましたが、「似ている」というのは主観的なものですので多くの人が真実だと感じたことでしょう。一方で「パクリだ」についてはそうだという人もいればたまたま似てしまったのだろうという見方の人もいました。そして審査に不正があったとする陰謀論めいた考え自体はネットであれこれ言ってネタとして消費する分には盛り上がりましたが、リアルではそれほど話題にならなかったように感じています。

そう。「それほど」ではありませんでした。が、年配の人は意外と平気で有名まとめサイトである痛いニュースやアルファルファモザイクあたりをソースとしていそうな感じで「審査員が大学の後輩でその前は審査員と応募者が逆転して賞をあげあってたらしいよ」なんてリアルで会話している場面を見かけました。真っ昼間に地下鉄で移動するビジネスパースンですとか、居酒屋などの場でそのような話を聞くと、直接の話し相手でなく盗み聞きをしているこちらが赤面しそうなくらいでした。若者同士だとどこかで「2chソースはリアルではご法度」みたいな感覚があるかと思います。その垣根が壊れたのはひとつは年配の人たちにまでスマホが広がったこと、そしてヤフーニュースやITmediaなどが軽量なニュースの枠を増やして2chソースやtwitterソースも取り上げる機会を増やしたことであるかと思います。もちろん慣れた人は重いニュースの枠とは別の話題だと気づきます。しかしながら今までネットに触れていなかった人が、あくまで例ですが、誰でもITmediaエンタープライズとねとらぼとの区別をつけながら読めるとは思えません。多数ではないでしょうが、中にごっちゃにして受けとめている人もいると思われます。特にITmediaを批判しているわけではなく、他のニュースサイトも含めた現象として、利用者側の変化がそういった社会現象を引き起こし始めている新しい問題なのではないかと思います。

そこへ来たのが今回のエンブレム問題の第二波です。「似ている」「パクリだ」「審査不正だ」のうちの「似ている」はエンブレム取り下げという幕引きとなりました。これはいわゆるネットの勝利です。そして今回はそれほど多くの人の支持を得ていなかったように感じられる「審査不正だ」という説が本当だったことが公的な調査により判明してしまいました。となるとデザイナーの方が完全否定している「パクリだ」を真実だと思う人が増えてしまうでしょう。実際のところは証拠がないので、証拠が出るまではわからないという味方が慎重かと思います。

もうひとつこの流れに重要な点があります。というのもエンブレム問題を与えられたニュースとして聞いたり見たりするだけでなくて、このニュースは自分も一緒になって作ったという感覚を持っている人も少なくないからです。Facebookで「こんなに似てるんだよー」と友達にシェアした人もいるでしょう。そうした経験をした人はこの問題の取り上げられ方である「ネットでの指摘によりエンブレム取り下げ」という現象に当事者として参画した意識を持っている可能性があります。一度こういった経験をすると人によりますが結構のめり込んでしまう場合があります。今の40歳くらいの人の中には若いころに「ネットには真実が書いてある!」と舞い上がってしまった恥ずかしい記憶を持っている人がいるかもしれませんが、あたかもそれを繰り返すがごとくに年配の人がひっかかる恐れがあります。

ネットであれこれ言われていたことが検証されたので、ネットってすごいだな!と思う人が増える可能性があること。そしてその「祭り」に初めて参加した人が大量発生したこと。この2点により事態はあらぬ方向に進む可能性があります。火種は少なくありません。靖国神社のトイレ爆破テロ事件(捜査中につき事実確認ができていないためと正確にはトイレから爆発音が聞かれた事件。爆発の目撃証言がないため「爆発音が聞かれた」が正しいがこれを亡国からの圧力と捉える向きも。)STAP細胞の再発見問題。はたまた謎の惑星が地球に近づいているという噂。何事も過激なことが起こらぬように祈らざるを得ません。

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