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最近ニュースサイトのトップページ見てますか?

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ニュースサイトへの流入がFBやTWなどのSNSやSmartNewsなどのニュース系アプリに取って代わられトップページの存在感が薄れつつあるように感じます。自分の場合たとえトップページを見るとしても何か探したいものの見当がついているときに単なる大きな「パンくずリスト」として扱うようなそんな軽い位置づけになってしまっています。

これまでのトップページというと、おそらく重大なニュースや読んでもらいたいニュースが載っているのだろうという期待感から見出しを眺めるという使われ方であったと思います。しかしながら新聞社などの古くからありまた総合的にニュースを配信するサイトのトップページは最近あまり活性化していないように感じます。取って代わっているように感じるのは、重大性ではTwitterや2ch系のまとめサイトあるいはニュース系アプリ、速報性ではYahoo!のリアルタイム検索や自分のTWやFBのタイムライン、あらゆる範囲からバランスよくニュースを読めるという用途ではLINEやDMMなどの新興系のニュースサイトや古参のYahooニュースなどです。また、まとめサイトはジョギング速報やIT速報、お料理速報といった専門の細分化が進んでいますし、Natalieなどの専門系ニュースサイトはこれから増えこそすれ減ることはないでしょう。(メディアの数は増えますが会社は減っていくような気がします)

そんな中にあって新聞社は記者や公式アカウントとしてtwitterを活用したりしていますし、そもそも全員に向けたWebのニュースサイト自体の存在感よりも、ID制を導入して個別のトップページを最適化したり、あるいはスマートデバイス向けに電子版を強化したりといった方向に進化しているようです。

そうした中にあるとしても、今後トップページがなくなるかというとそのような気はしません。その理由としてトップページに期待される役割があると思います。その役割とはマーケティングとブランディングです。

トップページのマーケティングとはメディア自身が我々はどのようなメディアであるかを示すことです。それはどのような記事をトップに持ってくるかで示すことができるでしょう。世の中一般が重要と認識するニュースだけでなく、今の段階でまだほとんどの人が重要と気づいていないニュースを目立たせたり、あるいは他のメディアと違って我々はここが重要だと思うんだと自社の立場を明確化すること、そのような形でトップページを作ることで自分がどのようなメディアなのかを語ることはこれからもなくなるとは思えません。

もう一つのトップページのブランディングとはそのメディアに集まった人々がどのような人々なのかが見えることです。例えばランキングはそれが単純に現れていますが、他にもtwでのRT状況やリプライコメントの自動表示、いいね!の数などによってそのメディアが誰に支持されているのかがわかります。IT系のニュースサイトの慣習としてアニメやゲームのニュースや、カメラの作例と称しての美女の写真、あるいはゲームショウやモーターショウのコンパニオン写真などが目立ち過ぎないように適度に配慮された形で記事になることが多いように感じられますが、そうしたニュースは得てしてくっきりとランキング上位になったりしっかりとRTされて目立ちます。これはIT系のニュースサイトの愛読者は水着写真やガンダム関係の記事などを臆せずクリックしたりして、良くも悪くも自分のオタクらしさ(オブラートに包めば少年らしさ)を率直に認めて別に隠さなくてもいいやと思っているのではないかと感じます。そしてそうしたオタクらしさをあまり好きでない人はResponseでもWiredでもZDnetでもどこか別の好きなサイトに住み着くようになるでしょうし、そこに居心地の良さを感じる同胞はより多く集まってくるということが起きるでしょう。これこそブランディングではないかと私は思います。

旧来型の雑誌や新聞といったニュース系メディアではマーケティングは表紙で作れるものの、リアルタイムの双方向性を有するメディアではないためにその反応を即座に紙面上に表現することはできませんでした。そのため直接的には前月分の読者の投稿欄といった形で実現されていたのでしょうが、それよりも大きかったのは電車や喫茶店などの人に見える場所で表紙を晒してその雑誌(あるいは新聞)を読むという行為だったことでしょう。どんな人がそのメディアを読んでいるかはその人の外見と表紙とを一瞥するだけでわかるからです。ネット以前のある特定の時代を生きた世代にとっては、子どもはジャンプ、オタクはサンデー、リア充はマガジン、ヤンキーはチャンピオンというとわかりやすいかもしれません。話は逸れますが、今、雑誌の部数は大きく減りこれらの週刊マンガの例外ではありませんが、単行本の発行部数は横這いとのことです。それによってかよらぬかジャンプにもサンデーやマガジンらしい漫画が載ったりその反対が生じるなど「雑誌」という枠が溶解しつつあるように思います。

ITの進展により大量のログデータを高速かつ安価に処理することが容易になってきました。それによりトップページに何を載せるかを完全に自動化してしまうこともできるでしょう。ただしそうした場合には今のメディアを初期状態としてそこに集まった読者の振る舞いがメディアそのものを表すことになり、自分たちのメディアをどこへ歩ませるか、すなわちマーケティングを考えることを放棄してしまうことにもなりかねないように感じます。また、ID別の閲覧ログデータの分析を高度に進展させればパーソナルトップページが最適化されるとは思いますが、それは従来型のトップページに存在した「このメディアにいるみんなはどんな記事が好きか?」というブランディングを放棄することにもなりかねません。そうした場合には単なるアルゴリズム対決となり、より正確に自分の好みを当ててくれるサイトに人が移ってしまうでしょう。そうしたキュレーション能力はこれからもっと重要性を増すことは間違いないでしょうが、かといって自分はこうしったメディアを読む人間なのだ、このメディアの読者というカテゴリに属する人間なのだ、という表明がなくなってしまうほど人間の集団への帰属本能が弱まるとも思えません。むしろこれからはキュレーション系のニュースと、自分の立ち位置を確認するためのニュースとが明確に分離されていくのではないかと思います。その場合はスタバでMBAに表示した時に読んでいることをドヤリングするために常にサイトロゴが画面上部にでかでかと表示されるサイトが好まれるかもしれません。

それは冗談として、上記を踏まえ今後のトップページはどのような形になるのでしょうか。ログデータを活用しアルゴリズムでクリック数を最適化するようにトップページを構成できるとしても、記者自身がカテゴリを手動登録しておきエンタープライズ系の記事は3割、ねとらぼは2割、といった割合を決めておくとか、それを時間帯で変えるといったような方法もあるかもしれません。また、高速でバズる記事を1割、ロングランの記事を1割、掲載1時間以内の記事を3割、といったように鮮度といった観点も加える事ができるでしょう。我々はどのようなメディア化を数値化していくことで手動と自動の良い所どりができるようにも思います。

極端な話では別に自社の記事に限らずとも、ソーシャルメディア上の特定の人物クラスタから評価を得ている記事にリンクをしたり、あるいはそうした記事が必要だと機械に判断させたところから記者が調べて高速で記事を書くのでも良いように思います。

最後となりますがITmediaオルタナティブブログのトップページはどのような特徴があるのでしょうか。実はオルタナのTOPページはピックアップが1本ある他は新着順の記事一覧とランキングくらいでそれほどメディアとしての方向性を自ら示すというスタイルにはなっていません。しかしオルタナブログには強烈な特徴があります。それは書き手=「ほぼ読者と同じ層」である点です。上で述べたように読者はメディアを見た時にランキングやSNSでの反応を見てその読者層をイメージし、自分がその読者の仲間入りをしたいかしたくないかを無意識に判断します。が、読者の具体的なイメージを思い描くわけではありません。ところがオルタナブログは顔写真入り、実名で、人によっては所属まで公開したりビジネスと無関係な趣味の記事を投稿したりして筆者のパーソナリティをしっかりと目の当たりにすることができます。そして筆者は専門のライターではなく自分と同じ立場の人に語りかけるようにして記事を書いています。結果として似たような人々(ビジネスやITに興味のある人で社会人が多め)が集まっています。そしてそれが媒体となっていることにおもしろみを感じる人が読者となり、そして中にはブロガー募集の受付窓口にメールを送ってブロガーデビューをして新陳代謝をしつつ続いています。

最初に書いたようにトップページという形があやふやとなる中でITmediaのトップページも昔と変わったなぁと思う点もある一方で、昔のままから全然変わらないスタイルのオルタナブログのトップページは昨今の流れに対するカウンターのようにおもしろい問題提起をしているように見えます。

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