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IBMブロガーMtg「メインフレームの未来は明るい」に参加して

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8月7日にIBM様のブロガーミーティングに参加しました。タイトルは「メインフレームの未来は明るい」です。

IBMのメインフレームのフラッグシップ機にzEnterprise EC12というのがあります。製品紹介のページから引用すると『空前のパフォーマンスとスケール. 新しい IBM zEnterprise EC12 (zEC12) は、最新の zEnterprise System. の基盤であり、IBM Systems 製品群のフラッグシップ製品です。』という頼もしい記述となっています。

IBM zEnterprise EC12 概要 – Japan

そのEC12の流れを汲んだミッドレンジモデルのIBM zEnterprise BC12という製品について、エヴァンジェリストの北沢 強さんから直々に製品のご紹介を伺いました。メインフレームというとどうしても豪華な構成になるというイメージがありますが、50MIPSのモデルで790万円から導入できるということで、スモールスタートをしたいというニーズにも応えられる製品となっています。BC12ではこの50MIPSという性能値をスタートに4900MIPSまで性能を引き上げることが可能です。それでも足りない場合はEC12にステップアップするためのパスが用意されているとのことで、BC12を脱ぎ捨ててEC12を新しく買うよりも価格面で有利に移行できるとのことです。IBMだけでなく色々な企業で快適な検証施設が提供されている昨今ですが、たとえ検証したとしても自社の環境で長期的に評価する期間を持ちたいというニーズからスモールスタートというアプローチが注目を集めているように感じられます。BC12に留まらず将来的にはEC12へ、というこの点は魅力的に感じました。

現行世代のzEnterpriseの特徴としてはI/AやPOWERのサーバとの連携が非常に密に行えるような筐体設計になっているという点があります。BC12でももちろんその流れを受けています。大規模なシステムではデータセンターにサーバを置くスペースがないために2フロアにしなくてはならなかったり、ひどいとデータセンターが別になってしまうということが起こりえます。仮想化で集約度を高める流れが強いとはいえ、以前と比較してI/Aサーバの価格が安いことから保守的に考えると物理サーバ構成で機能別にサーバを立てていくということも決して古いアプローチではありません。ただ、電力費、場所代、要員といった平時のコストや、はたまたBCPやDRを考えた場合に複雑度が増してしまうという点を考えるとサーバの台数が多いことのデメリットに悩まされます。ビジネスロジックを高集約なzEnterpriseに集中しつつ、I/AやPOWERに向けて開発されたパッケージ製品などはIBM zEnterprise BladeCenter Extension配置するといった方法は設置スペースをかなり狭めることができ、それはそのまま電力費、場所代、要員の削減を可能に繋がるでしょう。

ついでに、このように強力な基盤ですと一社で使うのはもったいない可能性があります。その場合に、誰かが買って他の人に対してIaaS的に資源を貸し出すことも可能であるようです。(諸条件あるかもしれませんが)このような行為はメーカーによって判断が異なる場合があり、サーバの所有者との間で資本関係のないような相手への貸し出しを許していない企業・製品もあると聞いたことがあります。もちろんビッグユーザであればいろいろと営業的なご相談ができるのでしょうが、はじめからクラウドビジネスの基盤として使うことも考慮されているというのは選択肢が広がっていいんではないかと思います。

さてメインフレームというと金融向けの10進演算やリスト処理(印刷)が思い浮かびますが、このzEnterpriseの機能を見ているとメインフレームという製品にはその時代で必要とされる情報システムに対するニーズがすべて入っているのがメインフレームなのではないかと感じます。というのも上であげたI/AやPOWERとの緊密な連携だけでなく、BC12はモバイルやCEP、EMV等で用いられる暗号サポート等の新しい機能が搭載されています。企業のあらゆるシステムをこの1台に集約しようと心を決めたのならば、非常に心強いパートナーとなってくれることでしょう。

誉めてばかりだとブログらしくないので悩ましい点を考えるとすれば、いわゆるベンダー縛りというかロックインという状態に直面してしまうことが考えられます。もし他にも同じような処理性能や機能の幅広さを持つメインフレームがぞろぞろとある時代であれば、移行優遇施策が飛び交ってロックインを和らげる方向の力が働くかもしれません。しかしながら今、IBM以上にメインフレームへの強いコミットを見せているメーカーさんは残念ながら目立っていない状況です。(とても偉い方に向けて集中的に営業しているために私なぞに見えにくいだけなのかもしれませんが)また、ハイエンドだけでなくBC12のように機能の幅広さはほとんど変えずに処理性能を絞ることでミッドレンジとして手の届きやすい製品を提供するといったメインフレーム市場を支えていこうという姿勢を感じます。

今回のブロガーMtgは「メインフレームの未来は明るいのか?」という疑問から始まりました。BC12からはメインフレームの世界を明るくしようとする気合いを感じます。これを受け取るユーザ企業がどのようにBC12を料理するか楽しみですね。特に最近ではアーキテクチャについておもしろさを感じる事例はネット企業(cookpadや艦コレなど)がI/Aサーバと大容量メモリで工夫する事例が多い気がしていますので、BC12のような機体を使った「これぞエンタープライズIT」という取り組みが見たいなーと思います。

お招きいただきありがとうございました。

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