「なんて素敵にフェイスブック」で誠ビジネスショートショート大賞に入賞しました
Business Media 誠にて開催されていた第1回誠 ビジネスショートショート大賞に応募していた作品が入賞いたしました。吉岡編集長賞をいただきましたので遅くなりましたがご報告いたします。最終審査会の様子はこちらです。
Business Media 誠:激論・最終審査会:誠 ビジネスショートショート大賞、応募129作品の頂点はこう決まった (1/6) http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1211/16/news001.html
大賞をはじめ、受賞作の一覧はこちらです。
<大賞>営業刑事(デカ)は眠らない
<加藤貞顕賞>ターゲット
<山田真哉賞>悲しい地歴
<清田いちる&渡辺聡賞>不完全エスパー―積極的傾聴と文化祭―
<上の続編>不完全エスパー―ゆきかぜの日曜日―
私が投稿したのは「なんて素敵にフェイスブック」という作品でした。吉岡編集長をはじめとして、私自身もですが氷室冴子さんの「なんて素敵にジャパネスク」を読んだことのある人であれば「ん?」と思って目を通してみたくなるようにと、そのようなタイトルをつけました。
内容はジャパネスクのパラレルワールドというか、ただ単に平安時代を舞台にしただけです。瑠璃姫や高彬は出てきません。原作のキャラクターを思い起こさせ、イメージを破壊してしまうことがないように、固有名詞、肩書き、喋り方などが原作に似ないよう、十分に注意を払ったつもりです。
(そもそも平安時代にフェイスブックのような交流の仕組みがあったなら?という時点でかなりぶっ飛んでいますのでそのような心配は低いかとも思いましたが。)
というわけで吉岡編集長より副賞にいただいたのは氷室冴子さんの「月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ!」です。妻が先に読み始めてしまったのでまだ読めていませんが、とても楽しみにしております。吉岡編集長、事務局の皆様、ありがとうございます。
これが商品です。立つほどの厚さ。行間も狭く、ピンク背表紙のコバルト文庫とは思えません。
さて、私がこの作品を応募するにあたっては3つの心配がありました。
1つ目の心配はITmediaオルタナティブブロガーとして活動しているので、堂々と応募すると「内輪」な感じになってしまわないかという点。これはペンネームで応募し、かつ応募メールアドレスまでITmediaさんにはお知らせしていないものを使うことで回避することができました。(蓋を開ければ受賞作5作品中オルタナブロガー1名、誠ブロガー1名になってしまいましたが)
2つ目の心配は「なんて素敵にジャパネスク」の名前とリンクするかどうか。しかしPCに「なんて素敵にフェイスブック」と書いてみると「なんて素敵に」のたった6文字でジャパネスクの記憶がすっと蘇りました。ですので後はジャパネスクが皆さんの心にどれほど残っているだろうかということです。タイトルで、ジャパネスクなら平安もの?平安ものなのにフェイスブック?という疑問が起きなければネタが不発してしまうからです。
その効果ですが、作品がコンテスト会場に掲載されてからしばらくランキング上位に留まっていたことと、いくつかtwitterで「懐かしい」というような声が聞かれたことからすると十分にあったものと思います。そして受賞時に吉岡編集長やその他のITmedia社員の方から「氷室冴子さんなどコバルト小説にハマって読んでいた」というようなご意見をいただいたこと、受賞後に大きく露出したことで改めてジャパネスクを懐かしいという声があったことで氷室冴子さんの人気を実感いたしました。今、ビジネスメディア誠の上で見られる私の応募作品にも100以上の「いいね!」をいただいていて、「なんて素敵に」効果の強さに驚かされます。
反対の心配もありました。ファンの方の思いがいまだ強すぎることがあれば、なんだこの作品はというお叱りを多くの方からいただき、炎上を扱った作品ながらに炎上してしまう可能性もあったことと思います。結果としてはそのようなお叱りをいただくことはありませんでした。氷室冴子さんは「ラノベの祖」と言われることがあります。特にジャパネスクは多くの二次創作を生み出してきた歴史もあってか、二次創作へのつっこみを入れにくい土壌があるのではないかと推察しております。
3つ目の心配はコンテストのテーマである「ビジネスショートショート」として成立するかどうかです。最終選考会の様子を見るに、やはりビジネスショートショートではなくておもしろ作品というジャンルにカテゴライズされてしまいました。これは私自身が大いにおもしろさを狙い、笑いを取り込んでいったせいです。が、私としてはその裏にビジネス上の気づきや学びがあるように書いたつもりです。
(投稿作品の執筆にあたっては下の連載を参考にしました)
Business Media 誠:ビジネスノベル新世紀:もしドラだけじゃない! “ビジネスノベル”が増えているわけ (1/3) http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1208/17/news014.html
書きながら楽しくなっておもしろおかしくしてしまった点は大いに反省すべきところです。また、更にテーマ設定にも問題がありました。今時点の日本には私が提供しようとしたテーマを必要とする人は今のところそれほど多く存在しません。そのテーマとは大人として適正なソーシャルメディアの利用です。いわゆるソーシャルメディアポリシーというものに集約されることの多いテーマですが、それはそれとしてビジネスの現場で策定され、活用されています。
一方で、「子どもを授からないという貴族を占ったことを書き込んだ陰陽師は守秘義務違反で資格剥奪になった」のように書いてみるとどうでしょうか。もしジャパネスクを読んだことがあるならば、なんとなくそのような場面が思い浮かぶのではないかと思います。ソーシャルメディアポリシーをケーススタディとしてノベリフィケーションする、それが今回の「なんて素敵にフェイスブック」で試みてみたかったことです。会社で策定された文書は順守するものとして、自己啓発に自分から注意点を学びたい、そのような人のためにこの作品を書いてみました。そしてその思惑はどうやら作品自体のインパクトが強すぎて霧散してしまったような気がします(笑)
上の陰陽師の例は単発でさらっと紹介されていますが、作品全体はひとつのストーリが貫いています。(ここはあくまでショートショートです)。起承転結にまとめるとこのような形になります。
- (起)主人公が炎上する
- (承)調べてみたらライバルが意図的に炎上させている(まとめサイトを使って世論をミスリード)
- (転)facebookに罠をしかける(ライバルがミスリードをミスするよう「釣り」をする)
- (結)案の定、ライバルが罠にかかって一件落着
実際の生活ではわざわざ狙って「炎上させられる」なんていうのは社長や役員などの一部の人かもしれません。しかしながら有名企業の内定者や有名大学の学生の微罪が掘り起こされて炎上に至る例も少なくなく、周知する意味はあるのではないかと思います。
その媒体の設計として「なんて素敵にフェイスブック」のように狭い範囲(コバルト世代)だけに受ける仕立てにする必要はないですので、何かわかりやすいストーリー仕立てにして、更に吹き出しで実際の炎上事例やコメント解説を入れた作品を作ることが出来れば、有名大学の新入学生や内定者、有名企業の新入社員に配布できるのではないかと思います。
ということで長くなりましたが、そんな思いで書きました、ということと素晴らしい賞をいただきありがとうございましたということをお伝えできればと思います。もしソーシャルメディアの適正利用という趣旨にまったく気づかなかった、ギャグだと思ってた、という方がいらっしゃいましたらざっとで構いませんので再読いただけるとすごく嬉しいです。
ちなみに私は中学校2年の時にジャパネスク全巻で読書感想文を書きました。自分が人生の成功を約束された既定路線を準備されていたら、その上で瑠璃姫のようにぶっ壊すようなことをできるだろうか、という内容でした。でも大人になって読み返してみると瑠璃姫も意外と自分の立場をわきまえつつ、高彬や帝への影響も考えながらに動いていたんですね。20年以上も前の作品とは思えない素晴らしさです。きっと私のような者が混ぜ返さなくてもずっと読み継がれ愛されていくでしょう。惜しむらくは私の子どもに女子がいないことですね。。。