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Oracle OpenWorld Tokyo 2012(2日目)「Exadataは何倍早いのか」

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昨日に引き続き本日もOracle OpenWorld Tokyo 2012へ行って参りました。初日の感想はこちらです。

Oracle OpenWorld Tokyo 2012(1日目)『使ってみなけりゃわからない、大データ(BigData)実験で!』

基調講演ではラリー・エリソン氏が中継で登壇しました。中継というからにはアメリカからなのかと思いきや、なんと京都からとのこと。日本びいきと言われるラリー・エリソン氏のことですので桜が目当てなのかもしれません。

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初日の基調講演との内容の重複もありましたが、今日の基調講演でもEngineered Systems製品の優れた性能が紹介されていました。確か2009年だったと思いますが、私はラリー・エリソン氏によるExadata V1の製品紹介を割と早い時期に聞く機会がありました。それから3年が経ち今はX2というバージョンとなりましたが、Exadataのコンセプトは変わっていないように思います。CPUの処理速度に対してディスクのI/O速度は極めて遅くボトルネックとなりがちであるという欠点を克服するためにストレージ側で多くの処理を担うようにするというアプローチが続いています。もちろんEnterprise ManagerやExalogicとの連携等、様々な機能も追加はされていますが、Database ServerとStrage Cellという基本的な製品構成が変わらないことは、打つ手がない、進歩がないという意味ではなくて、今のところ効果が大きいアプローチであるから続けられているのではないかと感じます。(ネティーザの構成も近いものを感じますし)

初日と二日目とで「何倍早い」というキーワードがそこかしこに登場しました。これはどのような意味を持つのでしょうか。OOWの会場に足を運ぶ用なIT関係者の多くは何倍早いということを自分が携わるシステムにそのまま当てはめるということはしないと思われます。では何倍早いというような刺激的なことを言う意味がないかというと、私はこの局面ではとても重要なメッセージであるように思います。

畑村洋太郎さんの「失敗学のすすめ」という本にはチャンピオンデータという言葉と共に、日本軍のペニシリン開発に関するエピソードが紹介されています。戦争のため日本がペニシリンを大量に作る方法を獲得できない中、「絶対に実現できることは確かなのだ」というチャンピオンデータがあるがゆえに研究者たちが努力を重ね、ついには方法を獲得してしまうという話でした。

私はEngineered Systemsの何倍早いというフレーズはこのチャンピオンデータに相当するのではないかと思います。例えばx86というアーキテクチャーはどれくらいがんばれるのか。RDBはどれくらいがんばれるのか。そういった迷いに対して遠い先に立つ灯台のように到達点を示すことができれば、ユーザもSIerもとりあえずはそこまでを目標に動き出すことができます。反対に、技術的に大丈夫かどうかわからないものについては、例えおもしろい要素を備えた技術であったとしても迷いが迷いを生んでなかなか良い結果が出ないということにつながりがちなように思います。

例えばここ数日はNTTドコモのNOTTVについてネット上で散々な意見が言われています。何か素晴らしいユーザ体験を最初に示すことができれば、コンテンツを持っている人も端末を作る人も見る人も集まって色々とおもしろいことが生まれてくるのかもしれませんが、最初にそれができないと誰もが遠巻きに様子を伺うようになってしまいがちです。

ラリー・エリソン氏はExadataやExalogicの価格について、コストパフォーマンスで見れば安いという点を強調していました。しかし絶対的な投資額としては安い製品ではありません。少しずつ安いサーバーを買った結果が積み上がればExadataやExalogicが買えてしまうということは実際には起こり得ると思いますが、日本の多くの会社にとってExadata1台分の投資を意思決定することはなかなか勇気を必要とするように思います。そんな時にはやはりこの道に進んでも心配ないということをベンダー自身が強くアピールし、それに賛同するSIerとユーザが多くいることが重要なのではないかと思います。その意味ではビデオキャストのような形でなく、Oracle OpenWorldのようなリアルな集まりの場があることは大きな意思決定をしようとする人にとって前向きな材料となるでしょう。

そう考えながら見上げる六本木ヒルズ(上の写真)は、ちょっと灯台っぽく見えるのでした。(実際には六本木ヒルズ上層階で行われたのはJavaOneのほうでOOWの会場はベルサールとグランドハイアットですが)

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