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大政奉還前のシステム統合周りのいざこざについてそろそろオープンにしてみる

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大政奉還の件はここ1年くらい前からシステム業界の公然の秘密でしたが、ようやくオープンになったので今日は堂々とブログに書いてしまいましょう。

「大政奉還のプレスリリース」を元に記事を書いてみた - ねとらぼ http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1108/01/news106.html

そもそも大政奉還が遅れたのは江戸幕府と明治新政府のシステム移行が計画通りに行かない所でした。2chでは堂々と書きこまれていましたがうちの父上なんかは攘夷系武士らしく新政府の犬の嘘だなんて言っては情弱っぷりを発揮してましたね。今頃なんて言ってちょんまげ落としてるんでしょうか。

さて明治新政府の給与システムはイギリス系IT企業のグラバー社が構築していまして、賃金体系もわかりやすい現金ベースの制度です。

ところが江戸幕府のシステムは基本構想は鎌倉時代の1200年代前後くらい遡るとされていて、御成敗式目というのがバージョンアップを繰り返していると考えると理解しやすいです。実は現行システムも基本的な仕様書はありますが細部はぐっちゃぐちゃのスパゲッティでソースを追わないとわかりません。自分が見たのは武家諸法度のVersion享保なんですが、Subversion上は天和というVersion名になっていて合っているのかわかりません。が使っています。

そもそも給与システムが大きく2系統あって、江戸と大阪にそれぞれHOSTとマスターがあるような感じです。メインの給与計算は江戸でやっていて、昇進とか出退勤なんかは江戸で完全に管理してます。そのへんは人事システムも融合してますね。この大名は長いこと国替えしてないなーって思ってたら「そろそろ転封の時期です」って出てきて驚きました。ソースを追うとIEYASUと書いてありますが好感を抱きました。イベント管理に力を入れるプログラマさんは好きです。でも三方領地替えのときも私たちシステム管理課がめちゃくちゃ言われましたけど、あれシステム上は二方になってたのを政治的に庄内入れろって話になってオペレータさんが禁断のデータ書き換えで庄内の石高をいじって三方にしたんですけれどね。

さて話を元に戻します。江戸では給与計算がテーブルに沿って行われているのですが、基本的には米ベースです。意味わかんない新人さんもいるかもしれませんが、江戸幕府って米ベースで給与が支払われるんですよ。いや、最近米で買い物できないしっていう人もいると思いますけれど、みんなそう思ってます。みんなそう思ってますから、私らシステム屋なんで「いや、大阪から変換テーブルを日次バッチで受け取って、現金処理できますよ」って提案します。でもそんなこと絶対にない。理由は「怖くて触れない」からです。

給与計算のメインロジックってどうやらCOBOLですらなくて、アセンブラが動いているらしいんですよね。1回、大阪の堂島まで行って米=現金の相場変換テーブルのレイアウトについて打ち合わせしてきたんですけど、担当者の大塩さんっていう方から何に使うか聞かれて、「それは無理」って言われました。そんときにアセンブラって聞いたんですよね。室町時代くらいにCOBOLに書き直してるとおもってたんですけど甘かった。

っていうことで、わざわざ江戸幕府は米で給与を支払うんですけれど、武士の人たちはだいたい毎年何俵くらいかわかってますから、もらえるはずの米を抵当に入れて現金にしちゃうんですよね。HOSTのバッチ処理の結果は紙の帳票に出して米と一緒に納品するんですけど、まじで有力な一部の大名がそれじゃダメだって正規のルート通さずにシステム改修依頼を出してきて困りました。いや、ちゃんとシステム変更手続きに沿って、稟議書に老中の承認もらってくださいよ、ちなみに25M以上は大老決裁ですからってお願いしたんですけれど、まぁうやむやな感じで小さな改修案件15個くらいに分割してヤミ開発することになりました。HOSTからDB(Oracle11g on RHEL)にマスターデータ同期して、それをWebサーバ(IIS)から見せるっていう感じのベタな構成です。結局はここで堂島の大塩さんにお願いして日次で米相場データをもらうことになりました。これで武士の人は日々現金ベースで自分の給料とか見れますし、換金済みの米の量とかも見られるようになりました。(堂島がDB2だったのでデータのやり取りに苦しみましたが)便利なんで人がこっちに集まってしまって米の生育状況なんかを農民の人がHOST系(いまだにダム端から入力)とIEとの二重登録になってしまったのはただでさえ年貢でひーひー言ってる寒冷地の皆さんにマジでごめんなさいと言いたいです。でも名前は出せませんが当時の大老兼CIOがしれっと「二重登録解消のために来年度に予算つけます」って言ったのはまじで受けた。いや、そもそもCIOレベルに出すシステム全体概要図にはオープン系をひた隠しに隠してきたはずなのにあんたが旗振るのはまずいだろう、と。っていうか純粋なCIO入れろと思ってしまいました。

ま、実は江戸幕府と新政府軍は対等にシステム統合するってことで話が進んでいたので変換テーブルとかどうするっていうのを5年くらい前から打ち合わせしてて、ようやく2年前くらいに基本設計が終わりそうで、ゴリゴリ作るのはどうとでもなるから楽勝と思ってました。でもまさしく政治的な決着で新政府軍への一方的片寄せで終了ということになって、自分が担当した1200ページくらいの基本設計書が日の目を見ずに終了となって泣けます。米だけにお蔵入りってやかましいわ。

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