Facebook Credits(Facebookポイント)は資金決済法に基づく前払式支払手段か?
Facebookに関して「ゲームデベロッパーは2011年7月1日以降、Facebook Creditsの利用が義務付けられる。」というニュースが今年の1月に流れました。
Facebook、ゲームデベロッパーに独自仮想通貨Facebook Creditsの利用を義務付けへ http://jp.techcrunch.com/archives/20110124facebook-to-make-facebook-credits-mandatory-for-game-developers/
残すところあと1ヶ月となった訳ですが、Facebook上での課金ゲームの利用状況について身の回りを見てみますとゼロではないなぁという印象を受けます。
ということは既にFacebook Creditsを使っているか、もしくは今のところは別の仮想通貨を使っているかのどちらかであると思われます。後者に属する人は7月以降課金をやめるかFacebook Creditsを買うことになるでしょう。
ということは、Facebook Creditsは資金決済法における前払式支払手段の制度と向き合う必要があるのではないかと思います。なおこれは私自身とこの記事に関する免責文言ですが、これらは現時点での私個人の見解であり、私個人の憶測を多分に含むものでしかない点をお含みおきください。十分に調べて書いたつもりではありますが、誤った事実や解釈、判断を含む可能性があります。
Facebook Credits » Facebookポイントについて
Facebookが発行し、Facebookというプラットフォーム上のサードパーティアプリで遊ぶという形態ですのでおそらくは第三者型となるかと思います。同じSNS事業者であるmixiは第三者型の登録をしています。(関東財務局長第598号)
日本国内ではテレホンカードや電子マネー、これはSUICAやEdyのようなICカードという実体を伴うものと、ちょコムやWebMoneyのように実体を伴わないサーバ型電子マネーとがありますが、それらを発行するには資金決済法に基づき前払式支払手段発行者としての届出を行う必要があります。
有効期限についての説明を見つけられませんでしたが、購入画面のクレジットカード番号入力のところまで進んでも一言も出ないということは有効期限がないのではないかと思います。仮に有効期限が6ヶ月に満たない場合は資金決済法でいうところの前払式支払手段とはなりません。日本ではこの仕組を利用して式決済法施行前には有効期限を設定していなかった事業者が、法施行に合わせて6ヶ月の有効期限を設けたという事例が見られました。
また、小規模な発行者は届出を不要とすることとなっており、基準日(3月31日と9月30日)時点での未使用残高(発行した金額のうち、まだ使われていない金額=市場に出回っている金額)が1000万円以下の場合が届出不要となります。おそらくFacebookの規模を考えるとその枠は超えているのではないかと思います。
とはいえ、海外の事業者がグローバルに展開するビジネスに日本のローカルな法律が干渉することができるでしょうか?答えはできません。アメリカ企業であるFacebookに対して供託金を積めとかそういう口出しはできないでしょう。しかし、日本国内でサービスを提供している部分に限ってはもちろん干渉することができます。
資金決済法にはこんな条文があります。
(外国において発行される前払式支払手段の勧誘の禁止)
第三十六条 外国において前払式支払手段の発行の業務を行う者は、国内にある者に対して、その外国において発行する前払式支払手段の勧誘をしてはならない。
インターネットの発展した今日ではこういった条文がないと好き放題をやられてしまうからか、このような勧誘禁止の文言があるのかもしれません。(宝くじのように日本人が「授受」することまでは規制されていませんが)
かといって実際にFacebookを処罰することは難しいのかもしれません。ですが日本法人や日本事務所が開設されれば当局が意見を言うこともできるでしょうし、金融当局のチャンネルを通じてアメリカ政府から何らかの働きかけをしてもらうということも可能でしょう。
なお「勧誘」とはどのようなレベルを挿すのか、もう積極的にプッシュして「ものすごく楽しく遊べるからみんな買ってね!」というレベルなのか、それとも普通に日本語を読めば「こうすれば買えるんだな」と理解できるレベルでアウトなのか。それは難しいところです。
現時点で判断材料のひとつと成り得るものがありまして、「資金移動業」については金融庁がこのような考えを示しています。
<質問>「外国資金移動業者は法令に別段の定めがある場合を除き、国内にある者に対して、為替取引の勧誘をしてはならない」とあるが、国内未登録の資金移動業者が国内で閲覧できる日本語の資金移動サービスの案内などをホームページ上で展開した場合、「勧誘」行為に該当することになるか。
<答え>ご指摘のような場合には、原則として「勧誘」行為に該当すると考えられます。
上に貼った画像にあるように日本語ではっきりと案内をすることは「勧誘」に該当すると考えられるかもしれませんね。担保文言として、「これは日本国外に居住する日本人向けに作成された日本語の案内文言です。日本国内においては資金決済法に基づき外国前払式支払手段発行者の勧誘は認められていないことから、日本国内に居住する方はFacebook Creditsを購入することはできません」と入れたほうが良いのかもしれません。
一方で日本ではこのような「仮想通貨サービス」も始まっています。
デジタルコンテンツの小額課金、アプリ内課金に最適な、マルチデバイス対応の仮想通貨サービスを提供開始 ~資金決済に関する 第三者型前払式支払手段発行者の登録完了により、半年を超える有効期限の仮想通貨も提供可能に~ | ソフトバンク・ペイメント・サービス株式会社 http://www.sbpayment.co.jp/ja/news/press/2011/20110419_01/index.html
日本国内ではFacebook Creditsの販売代理店を探すことで法の要求を満たすというやり方もあるかもしれません。
なお資金決済法の施行に伴いミクシィからはこういった文書も出ていました。勉強になります。
「資金決済に関する法律」に関する対応のお願い << mixi Developer Center (ミクシィ デベロッパーセンター) http://developer.mixi.co.jp/news/news_apps/6869
本法律に関わると考えられるケースは、各SAPの皆様が提供するアプリ内で、ユーザーから対価を得て仮想通貨的な概念(ポイント、コインなど:以下仮想通貨)を発行しているケースです。また、海外籍の法人、個人においても対象となりえます。
Facebook Creditsはこの先どのような扱いになるのでしょうか?