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戸籍と住民票の違いは?

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日本中で100歳以上の高齢者の所在が不明になっているそうです。どういった状態なのでしょうか?

国や自治体が我々の所在を確認するとすれば、戸籍か住民票(住基ネット)が思い浮かびます。

住民票というのは自分たちが引っ越すときによく処理をするので身近ですが、戸籍は結婚したり子どもが生まれたりした場合にしか触れる機会がありません。ですのでまず戸籍について調べてみました。

猛暑で全国的にその名を知られている岐阜県の多治見市の公式サイトにこんな解説があります。

市民課豆知識
http://www.city.tajimi.gifu.jp/shimin/mametishiki.htm

戸籍」とは、国民の身分関係を登録し、公に証明するために保管されている書類のことです。

本籍」とは、戸籍の所在する場所のことで、住所とは別に自由に決められます。(生まれた場所という意味ではありません)本籍のある市町村名を「本籍地」といい、本籍地の役場に戸籍は保管されています。

 戸籍には、その人の名と生年月日、父母名と続柄、出生や婚姻、養子縁組といった事柄が記録されています。

これを見ると戸籍を見れば自分がどのように出生したかが明らかになります。例えばパスポートを取るときには戸籍謄本または抄本が必要です。それは日本国民であることの証明書類が戸籍だからです。

外務省:こんな時、パスポートQ&A
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/pass_4.html

Q6.戸籍謄(抄)本を提出するのはなぜですか?

A.戸籍が、申請者の戸籍と身分関係を公証する唯一の手段だからです。

 パスポートは、日本政府が外国に渡航される方の日本国籍、身分を証明し、渡航先の外国政府に保護を依頼する大切な証明書です。

(中略)

現在のところ、日本国における申請者の国籍と身分関係を公証する唯一の手段は戸籍のみです。

戸籍は生まれてから死亡するまでの情報を管理するものと言えます。ただしその間の住所などは把握しておらず、本籍地として記録されるだけです。

一方で住民票とはどのようなものでしょうか。これは都城市のサイトが詳しく解説していました。

市民課ゼミナール 住民票とはなんだろう?
http://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/kurashi/shiminka/juuminhyou-zemi.jsp

◆ 住民とは?

 市区町村の区域内に住所を定めている者をいいます。これには日本国籍を持たない外国人や戸籍法の適用を受けない皇族等は含まれません。

 外国人は、外国人登録法に基づいて居住関係や身分関係が把握されています。

◆ 住民票とは?

「住民票」とは、個人を単位として、住民の氏名、住所等を記録した帳票をいいます。戸籍が「人の身分関係を公証するもの」であると同様に、住民票は「住民の居住関係を公証するもの」です。住民は、自分の住所などを証明する必要がある場合には、自分の住んでいる市町村の窓口で、住民票の写しを取ることになります。この住民票の写しの様式は、法律では定められておらず、市町村で住民の利便性を考慮し、分かりやすい様式としてよいとなっています。

これは自分がどこに住んでいるかを確認するものと言えます。

ちなみに、外国人は住民票を持たず外交人登録法に基づいて居住関係や身分関係が把握されています。が、新たな在留管理制度の導入にともなって外交人も住民基本台帳ネットワークシステムに参加することになったようです。

外国人住民に係る住民基本台帳制度について
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/zairyu.html

ここから考えますと、

  戸籍 住民票
(1)Aさんが生まれる Aさんが父母の戸籍にIN 出生地の住民票にIN
(2)Aさんが引っ越す 変動なし 出生地の住民票からOUT
転出先の住民票にIN
(3)Aさんが結婚する Aさんが父母の戸籍からOUT
配偶者と一緒に新しい戸籍にIN
住民票にAさんの配偶者がIN
(4)Aさんに子どもが生まれる Aさんの戸籍に子どもがIN 住民票に子どもがIN
(5)Aさんの子どもが結婚する Aさんの戸籍から子どもがOUT 引っ越さなければ変動なし
(6)Aさんが亡くなる Aさんの戸籍に死亡が記載 住民票からAさんがOUT
(7)Aさんの配偶者が亡くなる Aさんの戸籍がCLOSEになる 住民票からAさんの配偶者がOUT

 

住民票にINとかOUTという言い回しは気持ち悪いかもしれませんが、戸籍と統一してこのほうがよいかと思いそうしてみました。「いや、こういうケースもあって」というのは相当あるようですがそこまで詳しくないのでご容赦ください。(おもしろいケースはコメントで教えていただけると嬉しいです)

注目したいのは(4)の出生です。出生届を出すことで戸籍と住民票の両方が更新されるわけですが、そのインプットは何でしょうか?

いくつかの自治体を調べたところ、「母子手帳」であることがわかりました。正確に言うと母子手帳内に「出生届済証明欄」が設けられており、医師や助産師が証明を行うということになっています。

もしここで不正が行われるとしたら、まず他人になりすまして母子手帳を作るということがありえます。いくつかの自治体を調べたところ、母子手帳のもらい受けに際しては妊娠届を提出させるようです。

例えば座間市では「本人確認が必要」であり
http://www.city.zama.kanagawa.jp/www/contents/1191211040670/index.html

例えば文京区では「特に印鑑・証明書等は必要ありません」となっています。
http://www.city.bunkyo.lg.jp/_8029.html

ただし文京区では妊娠届に「妊娠と診断を受けられた医療機関名」を記載するとのことであり、自治体と産科が連携して全件調査をすれば母子手帳の不正取得は避けられます。

そうした全件調査が行われず、例えば隣人など他人の名義で母子手帳を作成することができれば大問題です。母子手帳は本に確認書類でもあるからです。

クレジットカードの業界団体である「日本クレジット協会」のサイトにも「お客様を確認させていただく書類(公的証明書)」の中に「母子健康手帳」が記載されています。
http://www.j-credit.or.jp/customer/attention/identification.html

実際に出産に至るとなれば、他人名義で母子手帳をもらったとしても自分の保険証に書かれた名前とが不一致になることから産科医にばれるはずですので、他人の戸籍に自分の子供を入れるということは非常に難しくなると思われます。

出産については産科であれ義務教育であれ出生届がないと何事も始まらないのですが、死亡届はそうもいきません。確かに死亡届がないと死体埋火葬許可証が出ないのですが、勝手に埋めるとか、そもそも完全に行方不明になってしまって数十年経っているといったケースでは誰も困ることがありません。

しかし上のほうの多治見市のサイトによると「職権消除」という制度があり、例えば転出届を出さずに引っ越したと思われるような場合に、自治体の担当者の方がそれなりの手続きを踏めば住民票が抹消されるそうです。これは住民票にも戸籍にもあるもので、例えば完全に消えていなくなったような場合には抹消がされると思われます。

今回そうなっていないのは、「おかしい」データのチェックが甘かったか、「おかしくないように見える何かが行われた」のどちらかではないかと思います。

今回、こういったことを防ぐにはどうしたらいいかを考えてみたのですがよくわかりませんでした。死亡届を出したほうが得になるまたは出さないと大損するような仕組みにしていない限り、こうした事例を防ぐのは難しく、また労力も大きいものと思います。また、年金の届出がずさんに処理されていたことが発覚したときのことも思い出しました。ただし今回の件はどうも国民側が国・自治体を騙しているケースが少なくないようにも感じられます(もちろん兄弟間での齟齬などの事情も多いと思いますが)

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