GIGAZINEの記事を読んで考えたこと:あなたの給料の半分でいいので働かせてください。
私は今、それなりにクリエイティブなというか、特殊な仕事をしていると思います。しかしそれはこれまでに多くの投資を受けたからであって、これまでの人生で得た何か特殊な才能(音感とか筋力とか)を活用した仕事ではありません。
何もへりくだっているわけではなく、世の中の多くの仕事は同じようなものでしょう。そういった仕事をしている人に対して「あなたがもらっている給料の半分でいいので働かせてください」というライバルが現れたらどうなってしまうんでしょうか。今のところは給料ダンピングというのはサラリーマンの世界に浸透していないように思いますが、派遣労働者の場合ですと珍しくない状況のようです。
企業はチャレンジャーを育てるまでにかかるコストおよび育つかどうかのリスクを踏まえた上で給料が半分になるとどうかというところを評価するでしょう。
GIGAZINEさんは、それと反対に「仕事も給料もそのまま。やりたい人間は来い」と言っているように見受けられます。これに対して呼応する人が集まれば、GIGAZINEさんには魅力があったと言えます。仕事の魅力、給料の魅力、スキルの魅力などなど総合的に判断し募集者が手を上げることでしょう。
しかしその一方で、今の社員の方が「やめたい」とか「やめる」というのは仕事に対して給料が見合っていないと感じるからなのではないかと予想されます。その「見合い」度合いというのはおそらくは相場観があるはずで、身の回りの労働者の労働の強度と給料を見比べて「うちの職場はおかしい」と思ったということでしょう。
何十年も前の閉じた社会でなく(匿名の投稿では悪い部分が拡大されがちとはいえ)インターネットを見ればだいたいのことはわかるわけですので、「やめたい」とか「やめる」という社員の不満が現れるということは給料が安いか、仕事がつまらないか、いたずらに年を重ねつぶしの効かない自分になっていくことへの不安を感じているか、あたりのいずれかではないかと思います。
もし魅力的な職場であれば「雇用主さま、もっと安い給料でもいいから雇ってください」ということも言えるはずです。
が、ここまでで多くの方が「そんなわけねーだろ」と感じておられるかと思いますが、現実世界の正社員採用で面接官に「いやーうちはJAVAの人材は余っててねー」と言われて「給料安くてもいいから働かせてください」という人は珍しいように思います。多くの人はその会社を諦めて違うところにトライするといったことになっていないでしょうか。一方で一旦採用された人が、クビにならないように「給料安くてもいいから」という話は聞いたことがあります。定年再雇用で給料が下がるというのはごく普通に行われていることでもあります。
日本では一旦就職するとなかなかその座を追われることがないので、入るときにはできるだけ条件を緩めずに頑張る傾向があるように思います。その一方で、一旦クビになると非常にしんどいので「なんでもやります」といって正社員の座を維持し続けるのでしょう。
そういうわけで一旦正社員になった人に対しては「半分の給料でいいです。あの人と同じ仕事がんばります。」と追い落とす人はなかなか現れません。社員が「今の仕事、条件が悪いなー」と感じてしまうのはこういったプレッシャーが身近ではないからだと思います。
ヤフーオークション等で「GIGAZINEで働いてもいいと思う給料」の逆オークションなどしてみたら「えっこんな給料でも働きたいっていう人が●●人もいるの?」とちょっと違った気持ちになるかもしれません。
私としては、GIGAZINEさんとは逆に「絶対にプライベートに干渉させずに仕事だけを可能な限り分離独立させる働き方」を求める人だけを集めるといったらそっちへの「やる気」が相当にあふれた人が多く集まって良い組織が作れるのではないかと思います。長期的に維持可能かどうかはわかりませんが。
あと、プライベートを巻き込んで仕事したいと思わせるならば、例えば家族や健康の問題が発生した際に「会社」のリソースで全面的に支援することを実績で見せない限りは誰も付いていかないと思います。