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クラウド前の技術者、クラウド後の技術者

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3月2日に開催された「クラウドネットワークシンポジウム」に参加してきました。

publickeyの新野さんが記事にされたようなRightScaleの「いかにもクラウド」と感じるような取り組みや、国内メーカーや大学による先進的な研究の話など盛りだくさんで大いに刺激を受けました。

そんな中、イベントへの参加者に若手が少ないように感じたのが気がかりでした。若手はもう少しこのようなセミナーに参加したほうがいい、というようなお説教を言うつもりはまったくありません。ただ業界の先輩の方々が、クラウドを支える基盤技術を日本メーカーが開発しアメリカの独走を阻止しようですとか、日本のIT業界のプレゼンスを強化していこうというようなことを語っている姿を若手が直接聞かなくて良いものか?と感じました。これは影響を受けて欲しいという意味よりも、むしろ新鮮な空気を吹き込んで欲しいという思いからです。

世界中に十分な質と量のネットワークが提供されれば、サービスの開発者がどこにいたとしても世界中に均質なクラウドサービスを提供することが可能になると思われます。既にAppleのAppStoreではそのような形態が一般化しています。ハードウェアメーカーやデータセンター事業者は引き続き国際間の競争が続くと思いますが、それはさておきソフトウェアの開発者はそのような世界で日本の勝ちとかアメリカの勝ちとかを意識するものだろうか、と考えさせられてしまいました。

また、日本の若手技術者は恵まれた環境であるが故に小さな頃からパソコンとインターネットと携帯があり、それらがどういったものかを意識して育ってきた人が多いと言えるでしょう。その一方で発展途上国などで大人になって初めてインフラが整備されてIT技術に触れたような人々は「初めてのパソコンがクラウド」であると思われます。状況によっては最寄りの地に先生がおらず、世界中を対象にして遠隔地からコンピュータの授業をするというスタイルもあり得ます。Youtubeにgoogle WaveやTwitterのようなサービスを使いながら、いきなり同じ学習クラスでフォローザサン開発をするかもしれません。それがITとの初めての接触であるというような技術者は、一体どのようなサービスを送り出してくるのでしょうか。

話は少し変わりまして、先日日経新聞でも紹介されていた「ウラニウム戦争」という本を読みました。その中で、核開発を繰り広げる学者の中で「古い物理学」から学び始めた学者と「新しい物理学」から学び始めた学者は発想が違う、というような下りがありました。(図書館に返してしまったので正確に引用できず申し訳ありません)

我々も同じであると思います。古くはマシン語、COBOL、オブジェクト指向、クラサバ、Web、インターネット、仮想化、そしてクラウド前の技術者、クラウド後の技術者。古い技術を知っているからこそ新しい技術のありがたみが解るとも言えますが、古い技術の土台の上に新しい技術を吸収していかざるを得ませんので、初めて接触したIT技術は我々の考え方に少なからず何かに影響をおよぼすのではないかと感じます。コンピュータであればOSからインストールし直せますが。(利用か開発かでまた異なることでしょう)

実を言うと私は小学生の時にPC-98のn88-BASICに接触しているため、年齢の割に古い概念を植え付けられた技術者の範疇に入ってしまうかもしれません。子供心にwindows3.1に「すげー」と感じました。ですのでクラウドネットワークシンポジウムでの研究成果発表などを聞いて「ふむふむ」とうなずき、未来を感じておりましたが、「初めての『Hello World』はAzureでした」というような若者があの場にいたらどのような意見が出ただろう、と考え込んでしまいました。

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