青少年健全育成条例の改正案に思う
私の自転車は駐輪場での度重なる転倒によりカゴが非常にみすぼらしくなっています。
先日自転車を漕いでいたところ、職務中の警察官の方に防犯登録の照会を受けました。自転車を降りるときに不愛想にしてしまい、しまったと思いました。
自転車から降りて警察無線による照会を待っている間に思い直し、無事私の持ち物と確認されたときには「どうもお仕事お疲れ様です」と(嫌味でないように)声をかけさせていただきました。急いでいるときは照会にも腹が立ちますが、おかげで盗難自転車が見つかることもありますし、空き巣も予防されていることと思います。社会で決めたルールを遂行しているだけの人に腹を立てるのはおかしな話ですので、大人な対応ではないですね。
さて子どもを持つ親としては行方の気になる育成条例です。私もこの件に関して意見は持っておりますがそのいずれであるかはこのブログで語ることを自粛させていただきます。それはそれとして、今回のような問題になると、上で触れたような「誰かにチェックしてもらう」ことについて考えさせられます。
もし我々の生活範囲が狭く、また朝から晩まで子どもから離れて生活する時間が今ほど長くなければこういった条例を考慮せずに済むのかもしれません。しかし様々な要因により我々の目に届かないところで子どもたちが「有害図書」とされる本に触れる機会が存在します。
警察官に防犯登録を確認してもらうのもそうですが、コミュニティが巨大化していなければ親がすごいエロい本を見つけたら「これエロいけど大丈夫?」といって本屋に相談し、本屋が出版元なりに情報を上げていくというような流れが普通になるのではないかと思います。そういったことに親の世代が全然参画せずに済み、自主規制団体の方が判定をしてくれるというのは便利である反面、親としての責務を果たしているんだろうか?という不安も感じます。
原稿の判定について調べてみますと、東京都では下の組織で行われているそうです。
『東京都青少年健全育成審議会』
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/09_kenzensin.html
議事録(注意:PDF)を見てみますと
修整が甘く、全編性描写である。指定やむなし。
というようなまさしく我々の思い描く「けしからん」という判定作業もあり、また
表紙が中高年向けであり、未成年者は手に取らないと思われる。
というような「ああ、そういう視点もあるか」という判定作業もあります。確かに中高年向けっぽい濃い表紙の漫画ありますね……。この文を見ると、現行ルールは世の中の風紀をなんでもかんでも規制しているのではなく、子どもが「手に取って」悪影響を受けるような本が「氾濫」していないか、という点でチェックが行われているに感じられます。(上記の判定は18禁マークの貼られていない本が対象のようです)
ただ、やはり判定作業の担当者の方もオールマイティ?というわけではないのか、
背徳の世界のホモ、ゲイ? 耽美系なのか、良く理解できない。保留。
というコメントを出すこともあるようですね。お疲れ様です。税収があり、またこの作業を引き受けてくださる方がいるからこそこの制度が運用できているという点には感謝をしなくてはなりません。もし我々の誰もが仕事として「有害図書」の判定を役務提供素べしとなればあまり良い感じがしないと思います。その点においては業界の方が責任を持って点検するのは当然という考え方もできるものの、やはり点検して下さる方には頭が下がります。ましてや子どもに「これはちょっといかん」とか「ギリギリセーフ」と教えてあげるのはものすごく気まずいものがありますので、シールやテープで何気なく子どもが触れてはいけない雰囲気になってくれている事自体には「助かるなー」という思いがあります。しかしそれでいいのかという思いもあります。
この問題を難しくしていることは、多くの男性(特に実名ブロガー)は反対に腰が引けやすく、逆に賛成には回りやすいということです。小寺信良さんが2年前に非常に端的に言い表していらっしゃいましたので引用します。
この改正案をなかなか正面から問題視できないのは、規制肯定側が「だって児童ポルノってダメでしょ絶対!」という絶対正義のベールに包まれており、これに反対することは問題の本質にたどり着く前に「規制されるとお前が困るんだろう」、「この変態野郎め死ネ」的な目で見られるからである。なかなか独身男性には踏み込めない領域であろう。
『小寺信良:「児童ポルノ法改正」に潜む危険 (1/3) - ITmedia +D LifeStyle』 http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0803/17/news010.html
私は独身でも子無しでもないですが、踏み込めません。でも我が家にある漫画を探してみると、「もっけ」などは非実在青少年に関することがらの「みだりに」をみだりに適用すればアウトなのかもしれません。私は「蟲師」や「ぬら孫」や「みえる人」など妖怪系が好きなので「もっけ規制しろ」と言われたら不安ですね。反対に、今まで読んだ中で「これは一般の書店に置いていいのか?」と思ったものとして「なるたる」や「東京赤ずきん」などがあります。しかしながらこれらが直球とすればもっけを変化球とも言えなくもなく、少しでもその気を感じるのが許せない人から見れば同じようなもんでしょう。
私も実名ブロガーとして何か意見を言えれば、と思ったのですがやはり賛成・反対の表明をする勇気は出ませんでした。というかそれ以前に結論を出せていません。何度か持ち上がり、そして消えるこの議論はネットを見ていると「規制派の敗北、自由の勝利」のようにも見えますが、実際に子どもを育てている身からすると結論が出るまで先送りされ続けているようにも感じられます。あまりに露骨な表現が氾濫するのも困りますが、子どもと「もっけ」が読めないというのもまた寂しいように思います。