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子供連れは2度満員のエレベータの▲ボタンを押す

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トラパパさんが子供連れが2組同時に・・・と書いていらっしゃいました。

自分もちょうど昨日3歳の子どもを連れて出かけていました。完全に寝てしまった子どもをだっこして電車に乗っていたところ、中年の男性の方が「どうぞ」と声をかけてくださいました。隣に奥様らしき方と小学生が座っていらっしゃったので「やっぱり子育てパパは子連れに親切だな。自分も見習おう。」と心の中で思いつつお礼を言って座らせていただいたところ、男性だけ次の駅でさーっと降りていかれて「あれ、夫婦じゃなかったのか」と(笑)。子育てパパが親切で、そうでない人が無愛想とレッテルを貼ってしまった自分の思い込みに反省しました。

それはさておき。

半年ほど前、子どもと自分との2人きりである場所に出かけたときのことです。上の階に向かうため、子供の手を引いてエレベータ乗り場にいきました。

乗り場にはベビーカーの親子が2組おり、エレベータの到着を先に待っていました。なかなかエレベータが来ないので混雑しているんだろうと思いつつ、混雑したエレベータにベビーカーそのままで乗り込んだら他人に迷惑だろうな、でもエレベータはまだまだかかりそうなのに畳もうとしてないってことは畳む気ゼロかな、混んでたら片手でバタっと畳めるタイプかな、とか考えつつ待っていました。その子どもらは2人とも降りて立っていましたのでベビーカーは空でした。2人の母親は知り合い同士らしく話をしています。

到着したエレベータは満員でした。1人だけ降りたのでそこに1人分のスペースができました。エレベータの中で「開」ボタンを押してくれている人(お姉さん)が一瞬ベビーカーを見て、そして自分と目が合いました。で、自分もベビーカーを見て、「無理だよな」と思い、ちらっと後ろを振り返ります。既に15人くらいが乗り場で待っていたのですが、ベビーカーの2組の次に並び始めたのが自分だったこともあり、子どもを抱っこしてエレベータに乗りました。すると

「なんであんたが乗るわけ?」

とベビーカーの母親の片方から声がかかりました。これは関わりにならない方がいいと思ったので目を合わせずに黙っていると、エレベータの中のお姉さんがさっとエレベータの「閉」ボタンを押してくれました。(お姉さんありがとう)

閉まっていく扉。

するとベビーカーの母親が「上」のボタンを押してブロックしました。

開いていく扉。

ぐっと重くなる空気。

ちらっと隣の人を見ました。右の人。左の人。自分を睨んでいたら降りて逃げようかと思ったのですが、右も左もベビーカーの母親にガンを飛ばしています。ああ良かった。うちの子どもよ、今しばらくは喋ってくれるな。

一回だけなら誤射かもしれない。隣のエレベータを早く呼ぼうとしただけかも。(エレベータは一基だった気がするが)そう思いながらエレベータの中のお姉さんが「閉」ボタンをグリグリと押しっぱなしにしてくれるのを見ていました。(お姉さんありがとう)

閉まっていく扉。

するとベビーカーの母親が「上」のボタンを4回押してブロックしました。

開いていく扉。

ぐぐぐっと重くなる空気。

ボタンを押したほうの母親をちらっとだけ見ると無表情に「上」ボタンを見つめています。右を見て左を見ると視界に入る限りの人がボタンを押した母親にガンを飛ばしています。お姉さんが「閉」ボタンを押す「ゴン」という音が聞こえてきました。(お姉さんありがとう)

今度は無事エレベータは動き始めました。

自分がエレベータに乗っても、見送っても、おそらくベビーカーの親子がエレベータに乗れるまでの時間は変わらなかったことと思います。しかしまぁ自分の目の前で人がラッキーな思いをすることが許せない時もあるでしょう。あそこで自分がつまづいて子どもを落としてわんわん泣かれたりしたら「私を追い抜くからだざまーみろ」と1日幸せな気分を演出してあげられたかもしれません。そうすればエレベータの中の20人くらいの人も憎しみで心を汚さずに済んだでしょう。

誰に対しても気持ちよく生きるということは非常に難しいなと思いましたが、その場でそのことについて子供と話し合うには2歳という年齢が十分でなかったことが残念です。でもあそこで黙っていてくれて本当に良かった。息子よお前は空気を読んだ。あと5年もしたら自分がこの話を忘れてしまっているかもしれませんので文章にしてみました。

と、マトモなことだけ言ってるとらしくありませんのでもう一言。

自分が入院したときのことです。最初の1週間に「点滴が時間通りじゃない」とか「主治医には○○と言われたんだからお前(看護師)の言うことと食い違うぞ。確認してこい」とか細かいことでイライラするばかりか、「なんであの人の検査を優先するんだ」とか「自分だけ食事が遅れた」とか「あいつはボケてるんだからこっちの面倒を見ろ」と言って非常に元気よくしている人がいました。しかしそのペースは続かず、自分から看護師さんにお願いして睡眠導入剤とか精神安定剤とかをもらうようになり、すっかり静かになりました。看護師さんに聞くところによるとサラリーマンの入院患者の一部には「早く退院しないとみんなに迷惑がかかる」というプレッシャーから、退院という目標の妨げになりそうなものすべてに厳しく接する傾向があるようです。もちろん大義名分つきでゆっくり休めるぞーというのんびりモードの人もいます。

反対に年寄りは正直退院の希望もないような人もいたわけですが、薬交換会っていうのがありまして「これが高血圧に効いた」とか言いながらカプセル薬のトレードをしたりします。そういう人は快眠、快食で過ごしつつ看護師さんとも仲良くて入院生活をエンジョイ?していらっしゃいます。自分が大正×2、昭和一桁×1と同室になったときに4人で「どの女性看護師がかわいいか」という話で盛り上がれた時は男に生まれて良かったと思いました。この母集団で3票ゲットした看護師さんはすごいと思いました。せっかくなので碁を教えてもらおうかと思ったのですが自分が先に退院してしまったのが残念です。

病室というと幸せなど転がっていないような気がしますが、その中でも更に多くの不幸を見つけて自分を傷つけていった人、その中でも小さな幸せを見つけて育てるのが上手だった人、その両方を目の当たりにすることができたことは今も自分の糧となって生き続けているように思います。

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