逆境だからこそのチャンス。就職活動でも新事業でも。
サービスをやめるとか、会社を精算するとか、そういったニュースが増えています。現在就職活動中の学生さんにとっては大きなチャンスですね。
バブル世代より上では多くの人が企業側からの情報開示も少なく、自分からの自己PRなどの情報発信も少ない中で情報不足のマッチングを行ってきました。そういった中で若い世代はかなり多くの情報を集めて企業を選定しますし、企業側もwebの恩恵を受けて膨大な学生からエントリーシートを集めて選別を行います。そういった中で自分に合った企業にたどり着くチャンスは確実に増えています。
バブル後と言っても我々くらいの世代(00年から05年くらいに就職活動をした)は「安定」を重視してきました。しかし安定といっても特に深いリサーチをしたわけでもなく、時価総額、事業内容、社員数などを当てにしたに過ぎません。それから数年の間にそれが甘い判断だったことが判明した企業が何社もありました。
今の学生さんはそうした環境の中でより一層厳しい目線で企業を選定していることと思います。また、狭き門をくぐり抜けるための修練もこれまでの世代より高いレベルで取り組んでいる方が多いのではないかと思います。
そうして就職した暁には、難関をくぐり抜けた自負もあるでしょう。逆境の中、少数精鋭で選ばれた新人として周囲から投げかけられる目線の厳しさに応えパフォーマンスを発揮していく中で大きく成長できることもあるでしょう。資格に本気で取り組んだり、少ない同期で団結を強め合ったり、他の会社に行った同級生との情報交換を密にしたり、いろいろと前向きな取り組みが行われていることと思います。
さて、ルワンダ中央銀行の総裁として1965年から1971年までルワンダに赴任した服部正也氏はその体験をつづった著書「ルワンダ中央銀行総裁日記」の中で「これ以上悪くなりようがない状況での着任だったため、何をしても良くなるしかないと思って気分が楽になった」というようなことを述べています(不確かな引用ですみません)。この本の中では中央銀行の総裁でありながら職員の帳簿管理の知識が怪しいために鉛筆を握って自ら帳簿をつけた、運転手が裸足だった、中央銀行の建物は「家」だった、という凄まじい体験が記されています。自分だったらそのような状況で強く前向きにいられるだろうか、と考え込んでしまいました。
今年の数カ月後に内定をもらえたとして、来春から働き始めてもしばらくは業績が悪いかもしれません。それでも入社して以来ずっと右肩上がりで悪い時期を知らない先輩社員よりも、若くて体力があり吸収力の高い時期に辛い状況を経験できることは非常に価値のあることと思います。企業は儲かっているときは儲かっているところにお金を投じます。ですので「大変な部署を立て直したい」と思ってもそのように振る舞えることは非常に稀です。ともすれば、「姥捨て山」のような部署しかないかもしれません。企業の中では儲かっている部署は手厚く、儲かっていないところは薄く、が基本ですので好景気のときは意図的に苦労することは難しいと言えます。儲かっている部署を運営するよりも赤字の部署を立て直す方が難しいですので、新人にして部署の立て直しの苦労を経験できるというのはポジティブに捉えれば大きなチャンスであるとも考えられます。(もちろん儲かりすぎて激務になるという苦労もありますが)
こう考えると若い世代が偉いようにも思いますが、そうではありません。上の世代は上の世代で、学業と関連のない就職活動に大学生活の多くのリソースを投じる必要はありませんでした。その間に勉強したり素晴らしい経験をしたり仲間を作ったりということがあったかと思います。企業とコンタクトの少ない中で、入社後に手厚い保護を受け愛社心を育んだということもあったかと思います。とりあえず入社して会社に自分を合わせたという世代は、ひょっとすると選びに選び抜いた企業に入る若い世代よりも柔軟かもしれません。買収合併は増えていますので、そういった場面での振る舞いはどちらの世代が強いかわかりません。
それぞれの世代にそれぞれの事情があり、環境をありのままに受け止めて活用し、自分らしく振る舞う、そうしていれば企業の中に多様性が生まれますし、個々のアイデンティティも確立しやすいでしょう。他の世代をうらやみ、真似しても何も生まれません。自分たちがどういう世代なのかという特徴をオンリーワンなものとして活用することを考えれば、今のような環境も素晴らしいものに思えてくるのではないでしょうか。
以上、「2002年に就職活動をして良かった」と思っている先輩からのメッセージでした。