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IBMのA Smarter Planetの日本版キャッチコピーを考えてみる

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A Smarter Planetについて考えるミーティングに参加してきました。

家に帰ってきてメモを見返しつつ、この英語のフレーズにぴったりの日本語は何だろうかと考えてみました。

  • 和をもって尊しとなす
  • 情けは人の為ならず
  • もったいない

1番目はその通りの意味で調和した社会を目指そうという意味です。ミーティングでは「森羅万象に秩序を与えよう」という考え方が紹介されました。目指す方向は同じかと思います。

2番目は本来の意味で、「他人に情けをかけると甘やかすことになる」という誤用のほうではありません。いつかは自分のためになることだから、自分以外の誰かにも親切になることをしよう、という意味です。「親切」というのを「スマート」に、「他人」というのを「地球」にと捕えると同じようなことを言っているかと思います。

そして3点目が一番しっくりきたのですが、もったいないことをするな、という意味です。もったいながろうということになります。

おそらくは「もったいない」にも2つの意味があり、今単純に無駄が出ていること、例えばミーティング中では日本では消費される食材の何パーセントは廃棄されているだとか、アメリカではジャガイモが口に入るまで千キロメートルとかそれ以上輸送されているという話がありました。こういった「もったいない」ことをなくそうというのが1つ目の意味です。

2つ目の「もったいない」は、今誰も目を向けていないけれども活用しうるものが放置されているというもったいなさです。世の中には情報の有効活用が行なわれず、機会的損失が発生しているものが数多くあると思います。例えば電気ポットでは生活スタイルを記憶することで不必要な保温を減らす機能がついたものがあります。ポットからお湯を出すためにはボタンを押しますが、もしボタンの操作ログが取れればベストな保温スケジュールを作ることができます。同様に、企業のアプリケーションの操作ログであるとか、交通量の情報など「やろうと思えばもっとスマートにできる」ことで、かつ「技術的にはそう難しくない」ことが「誰もお金を出さない」とか「やっても儲からない」から放置されているというものがたくさんあります。これはもったいない。

この2つ、自分のメモを見返して「我ながら冴えてる」と思ったのですが、メモ書きの横に「徳力さん」と書いてありました。そうでした。自分の発言ではなくディスカッション中に徳力さんが言ったことでした。

日本の中でも特に「もったいない」ことが嫌い、裏を返すと暇さえあれば「もったいない」といいたがる名古屋人としてはA Smarter Planetの目指すところは非常に共感が持てるところです。きっとトヨタで乾いた雑巾を絞っている人たちも協力してくれることでしょう。なにせよかの地には無駄をなくすことに言い知れぬ喜びを感じる人が少なからずいますから。

それはさておき、このブログの名称にある「一般システムエンジニア」とは「一般システム」の「エンジニア」たる存在を目指そうという意気込みから考えた言葉です。

一般システムとは今から50年前の1950年にフォン・ベルタランフィらが提唱した科学理論に出てくる概念です。世の中には数多く「システム」らしいものがあり、それらはすべて「一般システム」としての基本的性質を継承しているというものです。オブジェクト指向に例えれば、システムらしいもの、人体、生態系、細胞、ビジネス、国家などはベースクラスである「一般システム」を継承した派生クラスであるという感じです。

一般システムとはこのようなものであるとされます。

  • システムは互いに作用している要素からなるものである。
  • システムは部分に還元することができない。
  • システムは目的に向かって動いている。
  • ひとつのシステムの中には独特の構造を持った複数の下位システムが存在する。
  • 下位システムは相互に作用しあいながら調和し、全体としてまとまった存在をなしている。

Wikipedia「一般システム理論」より引用。

私が思うに一般システム理論が生まれた背景には、世の中のシステムめいたものを分析する技術がなかったことがあるのではないでしょうか。エニアックが産声をあげたところであり、大規模データ処理や、ましてやリアルタイム処理などは実現されていない時代のことです。例えば車の走行をモデル化して渋滞をシミュレーションするということはできなかったでしょう。

そのため交通システムというもの全体を「システム」とみなし、インプットとアウトプットや上位システム、下位システムとの関係を定義して抽象的に考えることが分析できる限界となります。数学的に近似モデルを作れるものは作ったでしょうが、コンピュータの計算量に物を言わせてシミュレーションするような手法は取れない時代でしたから、役立つモデルは少なかったことと思います。

そういった時代は過ぎ去り、情報理論とハードウェアの発展はシミュレーション、リアルタイム処理、大規模データ処理といった恩恵をもたらします。これまで人類がコントロールできなかった「システム」はどんどんコントロール下に置かれるものでしょう。渋滞を減らす実験もできますし、人体のシミュレーションによる効率的な新薬合成も可能です。ショッピングではこれまでPOSで「買う」を記録することはありましたが、今後はRFIDにより「手に取ったか否か」「新製品のTシャツを既存ラインナップのGパンと合わせようとして試着して買わなかった」というようなレベルの情報まで集めることができるようになります。

今後はこのように新しく取得できるデータも増加しますし、それを分析するマイニング手法も進化しますので、最終的には無駄な商品の製造を削減することでよりスマートな世界へ近づき得る下地ができていくでしょう。しかしそれを倫理的に許可したり、政治的に押し進めたりというところは人間の判断するものです。人間も「システム」としての性質を多分に備えていますが、時におかしな選択をするのも人間の特徴です。世の中が環境保護に向かいつつある中で、環境保護政策を政治のパワーゲームの材料にしたり、あとXX年で地球は滅びる予言があるから気にするなと吹聴したり、抜け駆けしようとする人が多くて制度が骨抜きになったりするかもしれません。

それはともかく、これまで「システム」としてブラックボックス的に扱うしか選択肢がなかったような対象が、ITの進化によって挙動・性質が明らかとなり、人類の管理下に置かれるというトレンドは動かしがたいものでしょう。となると「システム」らしいものが減ってしまいます。このブログのタイトル「一般システムエンジニア」というのも「スマーターエンジニア」あたりに改名の必要が出てくるかもしれません。それは大変だ。

日本IBM社の皆様、本日はお招きいただきましてありがとうございました。

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