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もし学生ベンチャーをやるならデータエクスロー事業かな

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もしも自分が学生で、内定取り消しでも食らって路頭に迷っていたらデータエスクロー事業を扱うベンチャー企業を始めると思います。

エスクローというとインターネットオークションで名前が知られています。オークションの場合、買った人はお金をエスクロー機関に振込み、売った人は商品を発送します。この時点で買った人は商品を受け取っていませんし、売った人もお金を受け取っていません。買った人が商品を受け取り、商品に問題がない場合はエスクロー機関に取引成立を報告します。すると、商品を持ち逃げされる事もなければ、お金だけを取られて商品が未着となったり不良品だったりという心配もありません。

これをデータでやるとなったらどうなるでしょうか。この世には「プロプライエタリ」と言われるようなソースを公開していないソフトウェアがあります。こういったプログラムは何らかの原因で開発が終了してしまった場合にソースが散逸し、利用者が困ってしまうことがあります。

例えば便利だと思って使っていたソフトが開発を終了した場合、そのソフトを好きで使い続けるのは個人の勝手ですがバグが出たり、新OS上で動作させたくなったときには困ってしまいます。個人レベルでは何とかごまかせても、企業の仕事として対価を要求するような場合、深刻な問題となってくるでしょう。

対策としてはソースを買い取れば安心です。しかし一般的にかなり多くの費用を支払わない限りはソースを売ってくれるということはないでしょう。開発元にとってのソースを渡すことは単なるコピーを製造されるだけでなくノウハウなども含めてすべてを握られてしまうことです。ここにソースが欲しい利用者とソースを渡したくない開発者の利害関係の不一致が生まれます。

オープンソースソフトウェアを選んでおけばこの心配はありませんが、そうでない場合は開発元企業が開発を継続してくれそうかどうかというのは重要なポイントとなります。

というわけで、ソースなどの開発資料を預かってくれるサービスが望まれます。要件は

  1. 大前提として堅いバックアップ体制があり
  2. 保存したという証拠がプログラムの利用者にわかり
  3. 有事まではプログラムの開発者以外に預けた内容が公開されず
  4. 開発者の有事に際しては利用者にデータが公開される

というようになります。いざ、開発者が倒産したらそのソースを利用したい人に内容が公開されるというものです。最近のトレンドであるSaaSではプログラムに加えてデータの保管も含めてサービス元に任せる形態がありますので、そこも面倒を見れるとよりよいかもしれません。

ではこのサービスを誰に売るかというと信用のない企業です。具体的には学生ベンチャー相手の商売なんてどうでしょうか。学生ベンチャーの大きな短所としては事業の継続性があります。社長が交通事故で入院したら、資金がショートしたら、などなど何かあった場合にそのサービスが利用できなくなったら、という不安から取引をしたくないと思う人がいるからです。

そういったベンチャー相手にこのデータエスクロー事業を展開することを考えてみます。データの保管先はAmazon S3あたりにしておけばかなりの信頼性があります。リアルタイムでデータを渡す必要性は高くありませんのでPaaSの欠点である経路の障害が問題となることはないでしょう。

暗号化したデータをAmazonに保管し、複合化のキーを自分と開発元に引き渡すことで基本となる体制ができあがります。開発元が倒産した場合は、自分のほうが持っている複合化キーでプログラムを取り出し、そのプログラムの利用者を相手にソースを公開したり、SaaS利用者にバックアップされたデータを引き渡すことになります。

また、契約形態を考えますと、それはプログラムの開発元とその利用者となります。プログラム利用者が自分自身でAmazon相手に金を払い続ける限りはソースの原本保管が行なわれるというような体制にできれば、うっかり自分のほうが先に倒産してしまった場合もデータがロストすることだけは避けられます。

しかしプログラムの開発元も自分も同時期に倒産してしまった場合には、プログラム利用者がデータを取り寄せることができても複合化ができないというリスクが発生してしまいます。そうならぬよう、自分と同じような業態の企業が複数社集まって鍵を持ち合ったり、自分が管理する鍵を他の企業にデータエスクローして利用者に通知しておけばリスクを減らすことができるでしょう。

全体を通じていつ倒産が成立するか、などをしっかりと定義しておかないとトラブルになりそうですが、そのあたりをうまく立ち回ることができれば利用者を見つけられると思います。日本も広いですので同じようなサービスは既に実現されているかもしれませんが、学生ベンチャーの倒産をビジネスチャンスにするというのはシブいアイデアだったなと思います。

上でも書きましたが、学生ベンチャーでは「あんたが卒業したらどうなるんだ」とか「あんたがスキーに行って遭難しても大丈夫なのか」ということが重荷になることもあり、かといって飯の種であるソースを公開するわけにもいかないという状況があり得ます。そういう場合にこういう売り方ができたらいいんじゃないでしょうか。

「データはエスクローサービス事業者に預けてあります。お客様は内容は閲覧できませんが、ゼロ知識証明の利用によりバックアップの存在を確認することができます。弊社の倒産時にはエスクローサービス事業者からソースを取り出すことができます。弊社が手続の間もなく倒産してすべてを差し押さえられたような場合にも、お客様にソースのコピーが引き渡されます。」

学生時代にはAmazon S3なんていうものもなく実現性の薄いアイデアでしたが、最近になって多少はましなアイデアだったと思えるような状況になってきました。備忘のためここに書いておくことにします。そしてこういった世の中の到来を見通せずに実現しなかった自分は、例え無理に起業していたとしてもあっと言う間に会社をつぶしていたことでしょう。危ない危ない。

ちなみにこのアイデアが生まれた背景は「死んだ時に恥ずかしいデータを消してくれるサービス」のモデルを考えたからです。真逆のものが生まれてしまいました。

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