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大学院生ウイルス事件と細菌ゲノム合成

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2008年の1月末に1つの事件と1つのニュースがありました。

1つは日本の大学院生がウイルスを作ったとして逮捕された事件です。もう1つは外国の研究者が細菌のゲノムの合成に成功したというニュースです。

日本の大学院生は工学系の研究室の所属であり、その道の知識や技術を極めてこれから社会に貢献していこうというところだったかと思います。それがどういった事情かはわかりませんが技術を悪い事に使ってしまったというところでしょう。ニュースではまだ違法ファイル交換をやめさせようという正義心からやったのか、それとも単に自分の知識や技術を誇示したかったのか判断しかねます。今後の裁判で明らかになることでしょう。

外国の研究者は酵母菌を利用してDNAとDNAをつなぎ合わせることで、これまで合成に成功していた原始的なウイルスと比較して飛躍的に長いDNAの合成に成功したとのことです。

この2つの事例はどちらも知識・技術を極める過程で起こったことであり、悪く転んだのが前者、良く転んだのが後者であると言えます。

技術的な視点から言えば前者についてはアプリケーションの脆弱性やネットワークを介してPCを操作する技術について得られたものがあったのではないだろうかと推測しています。後者の場合は言うまでも無く多大な貢献があったでしょう。

これがもし後者がいきなりヒトゲノムの全合成に成功していたら、おそらく賞賛の声と同じくらいに批判の声があがっていたことでしょう。特に世界の創造についてセンシティブな考えをお持ちの方がたくさん住んでいらっしゃる国からは批判が大きいのではないかと思います。また、韓国では人間の卵細胞を女性研究者から半強制的に採取していた事が大問題になったことがありますが、同様の事を行っていたとしたらそれもまた大きな批判を巻き起こす事でしょう。

逮捕された大学院生も発見した攻撃手法をしかるべきルートから報告するに留めていたら、セキュリティ系の企業への就職の道が開けたかもしれませんし、その後の活躍次第では専門家としての名声を得ていたかもしれません。そういったセキュリティの専門家の皆さんは様々な攻撃手法について精通しているわけですが、それらは頭にしまっておく「武器」ですので拳銃などと違って没収される事もありません。

今のところ、誰かが身に付けている知識や技術を意図的に失わしめることはできません。その人自身を閉じ込めたりする必要があるでしょう。過去には城を設計した技術者は城の完成を待って殺される、なんて話もあったそうですが、世の中のSE達がアプリケーションの弱みを知っているからといって害されることは無さそうです。というかあっては困ります。

大学院生がどんな処分になろうとも知識や技術を失うわけではありませんし、細菌ゲノムの合成に成功したチームも過去の科学者の一部がそうであったように愛国心から生物兵器の開発に参画するようなこともあるかもしれません。どうやら今の世の中を支える多くの学者・研究者・技術者にはまともな人が多いみたいで良かったです。

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