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商品イメージが想定外の変化をするとき

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薬局でトイレの芳香剤を買いました。お店に並んでいた芳香剤には色々な種類があって、「草原のすがすがしい香り」や「シャンパンオレンジのはじける香り」なんて言うものまでありました。今日は「草原のすがすがしい香り」を買ってきました。

そういえば以前にExciteBitでトイレの「キンモクセイの香り」が衰退した理由というコネタを読んだことを思い出しました。色々なトイレでキンモクセイの香りの芳香剤が使われるようになったせいで、キンモクセイの香りを嗅ぐとトイレを想像してしまう人が増えてしまったせいでキンモクセイは芳香剤の定番から外れてきているそうです。キンモクセイに続くラベンダーの香りも同じ運命にあるそうで、代わって石鹸の香りが人気とのことでした。そう言われてみると買い替える前は「シャボンの香り」という製品でした。

当初はトイレの匂いを消すのにちょうど良いということで抜擢されたキンモクセイが、いつの間にかトイレを代表するイメージを帯びてしまい役に立たなくなってしまう。これと似たような現象は色々なところで見られます。特に顕著なのは車の世界ではないでしょうか。

ちょっと前だとヤンキーとか呼ばれた不良青年、最近ではDQNとも言われますが、彼らの一部に高級セダンに乗るのを好む層があります。中古で高級セダンを購入し、マフラーをうるさくしたり車高を低くしたりするのが基本のようです。このような改造を施された車をVIPカーと言います。これはVIP仕様で作られた車を元にして、より一層VIPな感じに改造していくことが目標になっているからのようです。なぜか高級セダンでなくて軽自動車を”VIP”化するというジャンルもあるようです。

改造を受ける車種として人気なのはセルシオだったりシーマだったりするようですが、本来これらは富裕層に乗ってもらうことを想定していたはずの車種です。それが、金持ちが乗ってる車に乗ってる俺も偉いとばかりに若者に流行してしまったようです。VIPカーの多くは中古で購入されたものです。高級車と言えども中古車はいくらか値段が下がるようで、若者でも入手することができるようです。中にはVIPカーを専門に扱う中古屋さんもあります。こういった店舗では既にVIP改造済の車が流通しますので、まったくのノーマル車を買ってVIP化するよりも少ない元手で乗り始めることができます。

メーカーもVIPカーという文化をある程度利用している節もありますが、巨額の費用を投じて開発する高級車が若造に乗り回されているのは好ましいことではありません。昔は「いつかはクラウン」という言葉があったそうですが、VIP改造されたクラウンを見たら若かりし頃に抱いた希望も萎えてしまうことでしょう。こういったイメージの悪化を防ぐためか、レクサスやGT-Rでは不正改造をできるだけやりづらくするような対策が施されています。こうすることで本来売り込みたい層以外に商品が売れないようにできます。

商品というのは企業側がCMなどで作りこむイメージだけでなく、それを実際に使用している人がどのような人であるかというイメージも併せ持ちます。例えばOLをターゲットとしてカバンを売り込む計画で女性誌にたくさんの広告を出し、高級ブランドバッグのイメージを作り上げる努力をしたとします。それがクチコミの力などで背伸びしたい年頃の女子高生の間でうっかり流行してしまうと、本来のターゲットだったOLさん達には「お子様のバッグ」というイメージができあがってしまうという事もあるでしょう。

このように考えると、マーケティングというのはただ単に商品を売ってばらまくだけでなく、この層のこういう人たちだけに売り込みたい、という絞込みの要素も重要になります。「トイレの環境をちょっと良くしたい」「良い車に乗ってVIPに見られたい」「大人っぽいカバンを持ちたい」という欲望がこの「絞込み」に干渉してくるのはマーケティングのおもしろい現象のひとつであるように思います。

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