「死にたい」で検索する人の気持ち
ヤフーが検索エンジンで自殺防止を支援というニュースをITmediaで読みました。
12月1日からYahoo!JAPANで「死にたい」ですとか「楽な死に方」という検索キーワードを入力すると自殺予防総合対策センターへのリンクが表示されるようになるというものです。自殺名所と言われる山や海に行くと自殺を思いとどまらせるための看板が立っていて電話番号が書いてあることがありますが、大きな効果があるという話を聞いたことがあります。今回のリンク表示も、自殺の一歩手前で考え直しを迫るという面から同様の効果が期待できそうだと感じました。
どういった単語で検索したらこのリンクが表示されるのでしょうか。私は自殺を考えたことは一度もないのですが、思いつくままに「死にたい」のようなキーワードを入力して検索してみました。しかしながらニュース中にある「死にたい」と「楽な死に方」以外に自殺予防総合対策センターへのリンクが現れることがありませんでした。
やりながら思ったのですが、自殺したいと思う人は「死にたい」で検索しないような気がします。検索リテラシーにもよると思うのですが、「自殺 方法」や「首吊り 痛さ」などのキーワードのほうが切羽詰っていて確実に危険な状態であるように思います。この点に関してはデイリーポータルZで以前月に1回ずつ連載されていた企画の『200x年xx月に検索されたキーワードはこれだ!』が参考になると思います。
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これはniftyの検索エンジンである@searchで使用された検索キーワードの中から気になるものをピックアップして紹介するコーナーです。自殺とは程遠い明るい話題しか出てこないのですが、「痔、朝起きると」や「血管、入らない」など検索した人が切実に困っている様子が伝わる検索キーワードがいくつも紹介されています。また、google検索では検索キーワードにあわせて補助キーワードが表示されます。例えば「禁煙」というキーワードを入力して検索すると「禁煙セラピー,禁煙外来,禁煙マーク,禁煙方法」というようなキーワードが表示されます。
例えば「禁煙」を助けるためのリンク表示であれば、「禁煙したい」というキーワードよりも「タバコ、やめ方」や「タバコ、禁断症状」や「禁煙、挫折」などの単語が有効であるように思います。こういった具体性のある検索こそ切羽詰った状態であり、救わなくてはならないものではないかと思いました。しかしよく考えてみれば、自殺という行動の特殊性を考慮すると「死にたい」というキーワードの時点で何か手を打つことこそが効果的なようにも感じます。
自殺したい人は悩みを抱えているはずですが、ただ単に悩みを抱えているだけでなく、その悩みを誰とも相談できない、わかってもらえない状態がきついと聞いたことがあります。インターネットでは誰かに悩みを相談して聞いてもらうよりも、同じ悩みを抱えている人がいることを確認するほうが簡単ですので、自殺に至る過程の中で「死にたい」人が書き込む文章を検索し、共感するという事があるのではないでしょうか。
また、そのような段階は自殺の具体的な方法を検討するよりも手前の状態であるように思います。本格的に思い詰めてしまう前のところで何か対応できるのならばきっと効果があがることでしょう。それよりも更に手前の段階、例えば「疲れた」とか「やる気が出ない」という状態で自殺センターにリンクをするとそれはそれで逆効果であるように思います。
人間の複雑な心理を短い検索キーワードから読み取って自殺を思いとどまらせるというのは非常に難しい試みのようですが、それだけに色々な示唆を含んでいるように思います。どうかこの試みがうまく行って尊い命が助かりますように。