【書評】合コンでランチェスター戦略を
という本を読みました。こちらはその書籍のブログです。
最初はよくあるHowTo本かと思っていたのですが、
簡潔な文章をサクサク読み進めていくうちに
自分の仕事の進め方でまずい部分など思い当たるところが何個も見つかりました。
私のような若い目の社会人に向けて書かれた本ですので内容はそんなに難しくありません。
金融機関、ベンチャー企業からコンサルティングファームなどで
働いた経験から得た仕事のテクニックがまとめられています。
- プレゼンテーションの作り方
- メールの書き方
- スケジューリング
- 社内での評価をアップさせる方法
などなど。その中でも全体を通してアピールされているのは
タイトルにもなっている「エッジ」を立てる働き方についてです。
社内で「その他大勢」の社員になってはつまらない、
他の社員との差別化をはかり、「エッジ」が利いた社員になろう
ということが訴えられています。
そのように行動すれば社内での評価があがり、
「こいつは有能だから好きな仕事を任せてやろう」となり、
自分のやりたい事をやれるようになれますよー、ということでした。
全部で240ページくらいの内容ですので、集中すれば
3時間くらいで読むことができると思います。
その中でもラスト20ページは必読でした。
コンサルタントが語る、合コンでの戦略的行動についてです。
確かにSPAやらプレイボーイやらでも似たような事が語られる事がありますが、
あまり説得力の強いものを見たことがありません。
相手が髪に手を当てたりといった仕草をさりげなく真似しているとミラー効果によって
親近感を以ってもらえるとか、正面に相対して座るよりも90度横に座れとか、
そういう技を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
ところがこの本ではAIDMAモデル、ランチェスター戦略、3C分析などの用語により
「合コンでいかに勝つか?」という命題に対しての戦略的意思決定が解説されています。
と言ってもこれはオマケのコラムですので、割かれたページ数はたった20ページです。
元ネタのAIDMAなりランチェスターなりを基礎から解説してくれるわけではないため、
そもそもの知識がなければ意味不明です。
SEやコンサルタントの必須スキルである論理的思考性向のようなものは
日常生活において男性と女性が何気ないおしゃべりを楽しむ時には邪魔をしてくることがあります。
だらだらと交わす会話の脈絡の無さが許せずに争点整理をしてしまったり、
相手はゆるい気持ちでおしゃべりがしたいのに、
猛烈な勢いで結論探しとその結論を補強するための材料を並べ立ててしまったり。
そういったことは恋愛に邪魔になることが多いと思います。
確かに、逆光を背負って話しかけたり、上で述べたミラー効果を使うなどの方法は
相手にバレずに、かつ心理的に働きかけるような技術を次々と繰り出せばある程度は
効果があるのかも知れません。しかしこれらのスキルについて
相手が同様に知識を持っていた場合、こういった行動を取るのは
相手に「あなたを攻略しようとしてますよー」というシグナルになり、不利な展開になるでしょう。
「こいつ必死だな」と思われること間違いなしです。
恋愛においては「先に好きになったほうが負け」という格言がありますので得策では無さそうです。
また、プレゼンなどのスキルは年配の偉い人向けのコミュニケーションには良いのですが、
同年代の異性とのおしゃべりにも活用できるものはあまり多くないように思います。
(ファシリテーションやコーチングなどには強力なのがいくつかあるみたいです)
そうすると小手先の戦術にはあまり頼ることができそうにありません。
しかし戦略をしっかりと考えて進めることは、仕事の進め方をそのまま当てはめられますし、
実行したからといって相手に感づかれるという心配が低いものが多いです。
ずばり言ってしまえば、役立つものがたくさんあると思います。
この書籍の中では3C分析に基づいて、自分、合コン仲間、合コン相手の関係をモデル化し、
脈の無さそうな相手は諦めて違う相手を見つけろ、というなんとも形容しがたいことが書かれていますが、
そこまでするかどうかは個人の価値観にもよると思いますので意見は控えさせていただきます。
それはそれとして、目標を設定してから先にどのように攻略をしていくのかというところについては
これほど戦略性を発揮できる場面も珍しいくらいに厳しい世界です。
なにせ生物としての生存競争という意味では文字通りの戦場です。誰もが本気です。
しかも、ビジネスの現場であればお互いに商法や上場企業としてのルールを守った戦いになりますし、
違反すれば罰せられますが、合コンの現場ではルールらしいルールはありません。
多少のルール違反も結果が良ければOKになってしまうことは
ドラマや小説などでは嫌というほど取り扱われています。
あんまり無茶すると次の合コンに呼んでもらえないというペナルティがありますが、
一点集中でこの人のハートさえ射止める事ができれば残る人生に悔いは無いという大一番に
出くわしたならば、セッティングしてくれた同僚の○○君には悪いけどお会計は
今度会った時にちゃんと割り増して払うからここは誰にも感づかれる事なく抜け駆けできるように
手伝ってくれよ、という勝負に出ることもあるかもしれません。
確かにそれで結婚してしまったらもう合コンに出ることもありませんので○○君にさえ
埋め合わせをしてあげれば丸く収まることでしょう。
ライバルから恨みは買いますが恋愛の世界では仕方ない事です。
場合によっては呉越同舟で同性同士が協業したり、異性同士が協業したりと
同盟の形態も複雑です。トイレで同性同士の作戦会議を開いて目標が重複しないように調整したり、
A男さんがX女さんを狙いたいと思っているときに
B男さんを狙っているY女さんがX女さんと親友であるという情報を得て
A男さんがY女さんに対して「B男の情報を渡すからX女さんの情報を下さい」
と取引を持ちかけるということなどは普通に行われている事です。
このような場面を切り抜けるのにKKD(勘と経験と度胸)だけでは
成果は上がらないでしょう。合コンではお酒も入っていますし
強い武器であるはずの紙とペンも使えません。
魅力的な異性も目の前にいますので、スクラッチで論理的な展開を考えるのは危険です。
つい、自分に甘いロードマップを作成してしまう可能性があります。
3Cなどの既存のフレームワークに当てはめていくのは
日頃嫌と言うほど慣れ親しんでいるものですのでその危険が薄いように思います。
なんだかこのように考えると合コンで人気が無い人は
戦略的思考も駄目なのではないかという気がしてきました。
確かに異性にもてる人は営業マンとしても成功しやすいと聞きますがどうなのでしょうか。
少なくとも、戦略的思考ができる人は合コンで無策に終わることが無さそうです。
さて、コンサルタントの方で既婚者が多いオルタナティブ・ブロガーの皆様においては
生涯の伴侶を得るにあたってどのような戦略的判断を行ってきたのか、という点は
非常に気になるところであります。よろしければコメントいただけると幸いです。
言いだしっぺの法則というものがありますので簡単に自分の場合を紹介します。
馴れ初めは飲み会で一緒になったことだったのですが、一歩踏み出したのは
奥さん(文系)に情報処理技術者試験の勉強を教える約束をしたことです。
情報処理技術者試験というものすごい局地戦になりました。
少なくともIT業界以外の世界に住む人間では手出しできない戦域です。
それで、ミスタードーナツなどで一緒に問題集を解いたりしました。
1×1の超接近戦です。はい。今思えばランチェスター戦略の弱者のセオリー通りです。
確かに長身でもハンサムでもスポーツ万能でもない自分が戦うには
強者の戦略は間違いだったことでしょう。
仲良し男女グループで旅行に行くとか、同期でわいわい居酒屋に行くとか
集団戦かつ総力戦を展開していたら埋没してたと思います。
グッジョブ俺。1年目のSEにしては良い判断だった。
おかげでというかなんというか、5メートル後ろには長男が転がっていたりして幸せな毎日です。
ランチェスター先生、ありがとう。
そういうわけで、コンサルになりたいけどいまいち会社で活躍できていない人も、
合コンでいまいち戦績をあげられない人も、お勧めの一冊です。