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システムエンジニアのストライキ

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システムエンジニアはざっくり2つにわけると
開発に携わる人と、運用に携わる人にわかれます。
どっちもやっているという人が多いと思います。

もしストライキをやるとどうなるのでしょうか。

開発に携わる人がストライキをやると、
開発が遅延してお客様との約束を守れなくなります。
そのような事態を招かないためには
交渉の場が設けられるのではないかと思います。

一方、運用に携わる人がストライキをやると、
いきなり利用者にしわ寄せが行きます。
私は遭遇した経験がありませんが、輸送機関がストライキをすると
バスが間引き運転になったり、電車が来なかったりということがあります。

しかしシステムで実行したからといって、
いきなりサーバの応答が悪くなるということはないと思います。
あまりに利用者に悪い影響がないと
「普段なんであんなに高い運用費払ってんだ!」
というヤブヘビに遭うという恐れもあります。

それと反対に、バックアップ作業やジョブの実行処理などを
ストライキした結果、お客様のデータを破壊してしまったとしたらどうなのでしょうか。

法律ではストライキが正当なものであった場合、
ストライキ参加者は損害に対する賠償責任から免れるらしいです。
(○月○日からスト決行するぞと経営者側に事前通告して
予定通りに実施するなどした場合。詳しくは知りませんが。)

しかしストライキ参加者に責任がないとは言え、会社としてはその損害を
埋め合わせる必要があると思います。また、サービスレベルに関しての
合意をしていた場合、それを守れないという問題も発生するでしょう。
そういったことをしていると会社ごと消えてなくなってしまいそうです。

また、SEといえば色々な業界に顔を出しています。
鉄道やバスなどの運行系システムを担当している者、
火力発電所や石油コンビナートなどのプラント系を担当している者、
携帯電話やインターネットなどの情報通信系を担当している者など様々です。

そういった『止まるととんでもないことになる』度合いが高い業界にいる場合、
その会社のストライキには制限がつけられるそうです。
(ストライキ予定を会社だけでなく、公的機関にも提出する等)

具体的には以下の業界です。
(労働関係調整法)

  • 運輸事業
  • 郵便、信書便又は電気通信の事業
  • 水道、電気又はガスの供給の事業
  • 医療又は公衆衛生の事業

運輸事業や水道・電気事業などにどっぷり浸かっているSEは
なんとなくストライキをしてはだめそうだという意識がありました。
しかしこの「電気通信の事業」というのがどこまでを指すのか謎です。

「電気通信の事業」という言葉で思い浮かぶものと言えば
旧第一種電気通信事業と旧第二種電気通信事業です。
(こちらは2004年4月1日から制度が変わりました。今は一種二種ではありません。)
第一種はNTTなど電話屋さんで、第二種はプロバイダ屋さんなどです。

しかしこの法律は1946年9月27日に公布されたものであるためか、
『そのために争議行為が発生してゐる状態又は発生する虞がある状態をいふ。』
などというレトロな言い回しが文面に顔を出したりします。
なんどか修正が加えられているものの、この電気通信の事業が
今日のシステム業界を含むか含まないか想定外の想定外であるような感じを受けます。

自分のところのデータセンターにサーバを置き、
通信回線をキャリアに借りてアウトソーシングサービスを提供するという業態が
果たしてこの電気通信の事業に入るのか入らないのか。私も知りません。
身の回りでもストライキをやったというSEに会ったことがありません。

そもそも誰もストライキやろうぜ!なんて言い出さないというのは
システム業界に始まったことではなく、日本のあらゆる職場で
もはやストライキというものが存在すら忘れられてしまったかのようです。

かくいう自分も実物を見た経験がほとんどなく、
ひょっとすると小さい頃に鉄道のストライキを見かけたことがあるかなぁ、くらいです。
中学生の時に公民の時間で「皆さんが働くようになったら
ストライキという権利があるので、行使して労働環境を改善するのです」
「スト権は労働争議という苦しい経験を経て、皆さんの先輩達が勝ち取った権利です」
という勇ましいことを習ったので、ストライキというものがあるということを知っているだけです。

今現在サラリーマンですし組合員ですのでこのような場所で
ストライキというやり方の是非について述べることは控えさせていただきますが、
このまま行くと「職場で誰もストライキのやり方がわからない」という
新しい2007年問題が生まれるかもしれません。

組合で「ストライキだ!」という結論が出たにも関わらず、
やり方がわからずにまごつく職場が出るかもしれません。
それを見兼ねた団塊世代の役員が「ストってのはこうやるんだよ!」と
テキパキとビラを刷って会社の向かいにテントを立てて
教えてくれるというよくわからない現象が観測されたりしないでしょうか。
しないでしょうね。

私を含めてこれからの学生さん達も、キャンパスにバリケードを作ったり、
看板にゲバ字で「学徒諸君よ立ち上がれ。斗争の時は来た!」
と書き殴ったり、ヘルメットにタオルで武装したり、角材を切り揃えたり
使う予定のない火炎瓶を用意したりという文化に触れることは無いのかも知れません。

社会構造の変革に伴い、必要なくなったものが廃れるというのは
色々なところで見られる現象ですが、素敵な年の重ね方をしたおじ様方が
若かりしころの学生運動やストの思い出を語ってくれるのを見ると
その「オレも昔は……」なチョイ悪的自由さがすこしうらやましい気もします。

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