オルタナティブ・ブログ > 一般システムエンジニアの刻苦勉励 >

身の周りのおもしろおかしい事を探す日々。ITを中心に。

はてブのNDCタグってなんだ

»

図書館司書という資格があります。

拙ブログに唐突に登場してコメントやトラックバックまでいただいた上に
はてブで「このブログの中で今までで一番の出来のエントリー!」
と言われたうちの奥さんも司書資格の保有者です。

それはさておき、はてブでNDC0とかNDC7というタグを見かけることがあります。
前から気になっていたんですが、調べるそびれていました。
さきほど奥さんの横でネットを見ていたところ、たまたまNDC0というタグを見かけました。

「これなんだろうね」と聞いてみたところ「日本十進分類のゼロ類でしょ。
総記とかの分類なんだけど、コンピュータってのがゼロ類だから
NDCのゼロってのをよく見かけるんじゃない?」という
ありがたいアドバイスというかずばりそのものの回答をもらいました。

数限りなく存在する図書を整理するため、日本十進分類法(NDC)という整理法があります。

0 総記
1 哲学
2 歴史
3 社会科学
4 自然科学
5 技術
6 産業
7 芸術
8 言語
9 文学

このそれぞれの分類に更に細かな分類があるそうです。
日本の図書館ならばだいたいどこに行っても
このような分類で本が並べられていることだと思います。
また、本の背表紙には007などのラベルがつけられています。
インターネットでは、Yahoo!のディレクトリ検索に似ています。
(ただしYahoo!では1サイトが複数のエントリに入る事ができますが、
書籍は1つの分類にだけ収まります。)

ところが、日本十進分類法には少し問題があります。
例えばプログラミング言語について考察された本を
0類総記の情報科学に分類すると、8類の言語の本から
離れたところにしか並べる事ができないというところです。

これを補うものが基本件名標目表などに収載された『標目』になります。
本を複数冊購入する事は大変なことですが、「この本はこういう属性です」
というカードは小さいですし、単価も安いです。
本に関連する標目の数だけカードを用意し、何枚かの目録カードを作成して
十進分類などに基づいて決められた書架の場所を書いておきます。
そして標目ごとにカードを整理しておけば、上の例にあるプログラミング言語の本を探す場合
言語関係のカードの集まりから検索しても、プログラミング関係のカードの集まりから検索しても
A棚の3段目というような配架情報を得ることができます。
これははてなブックマークのようなソーシャルブックマークサービスに似ています。

また、十進分類法以外の分類法にコロン分類法というものがあります。
コロン分類法では、英語の文法でいうSVOCのような概念である『ファセット』が用いられます。

  • , (カンマ)  パーソナリティー(personality) 
  • ; (セミコロン)  マター(matter or property) 
  • : (コロン)  エネルギー(energy) 
  • . (ピリオド)  空間(space) 
  • ' (アポストロフィ)  時間(time)  

蒸気機関を作る産業技術の発展の歴史について詳しく書いた本が
ヨーロッパを舞台としたものなら空間に「ヨーロッパ」を設定し、
歴史背景が産業革命当時ならば時間に「産業革命」を設定します。
結果、『工学,産業技術;蒸気機関:歴史.ヨーロッパ'19世紀』というように分類されます。
このような仕組みで分類する事により、「工学」という書架の中で
産業技術に関する本がまとまり、その中でも蒸気機関に関する本が
近くに配架されやすいようになります。

こちらの分類法を考えたのは、ランガナタンというインドの図書館学者だそうです。
「図書館学の五原則」を唱えた人で、有名な人だそうなのですが
不勉強にも奥さんに教えてもらうまで知りませんでした。
最初聞いたときは数学者のラマヌジャンと勘違いして
ラマヌジャンは図書館まで手を出していたのか。なんて偉大な人なんだ。
と感動しましたが、人違いでした。

「図書館学の五原則」

  1. 図書は利用するためのものである。
  2. いずれの読者にもすべて,その人の図書を。
  3. いずれの図書にもすべて,その読者を。
  4. 図書館利用者の時間を節約せよ。
  5. 図書館は成長する有機体である。

この五原則は、1930年に作られたそうですが、図書をwebサイトに置き換えても意味が通じます。
多くの情報が蓄積された中から必要な情報を取り出すための工夫として
ソーシャルブックマークと図書館の共通項があるのだと思います。
(ひょっとするとタグ利用のSBMサイトを始めた人が図書館学に詳しかったのかもしれませんが)

そう考えると、はてなブックマーク界で図書館関連のエントリが
静かな盛り上がりを見せるのも自然なことだと思います。
図書館関連のブックマークが多いユーザを何人か見てみましたが、
私自身のタグ利用状況とはかけ離れた使いこなしっぷりに驚きました。
分類が好きな人にはたまらない世界なのかもしれません。

しかしコロン分類法にあるファセットのような概念が使用できるソーシャルブックマークサービスは
見たことがありません。自分で使いやすくするためになのか、[*図書館]のような
記号を用いているタグ付けは見たことがありますが、
あらかじめサイト側に「時間用タグ」などの分類が用意されているものを見たことがないです。

分類が得意な人にとっては、今のタグでも十分なのかもしれませんが、
私を含めてなかなか上手に使えないと感じている人も少なくないと思います。
「時間」や「空間」といった概念がうまいこと導入されれば、
初心者にとっての利用性が向上するでしょう。

ソーシャルブックマークでは1人の利用者が作ったタグが
利用者全体に還元されるという特徴があります。
『図書館は成長する有機体である。』
という言葉から考えると、ソーシャルブックマークもまだまだ成長する余地がありそうです。

#2007/8/7
図書の「分類」と「件名」についてや、コロン分類法の概念などについて
多くの間違いがありましたので書き直しました。
誤った情報を閲覧された皆様にお詫び申し上げます。
また、ご指摘いただいた方のご厚意にお礼申し上げます。 山口

Comment(0)