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ドラゴンクエストXIII~ランチェスターの教え子~

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ニンテンドーDSで英語の勉強をする中学校があるそうです。
私立かと思ったら公立でした。
しかも京都府八幡市。大学時代に家庭教師をしに行きました。

こういったゲームで学んだ知識はなかなか忘れないものです。
私にとってはプログラミングでしょうか。
自分は中学の時にはn88BASICという言語をおもちゃにして
プログラムを作る側として遊んでいたベーマガっ子です。

一旦、ゲームの仕組みを知ると他の人が作ったゲームをやっても
なんとなく盛り上がりにかけるものがありました。
それで余計にやる側よりも作る側が楽しく感じました。
特に中学生の時は自意識過剰な年頃ですので、中2病に毒されて
「裏ではこういうアルゴだろうな」と思ってほくそ笑んでいました。

子供の頃に興味津々で覚えたことはやはり忘れないものです。
英語学習も、短期だけでなく長期でも効果があるということが確認されれば
日本の英語教育、ひいては他の科目に至るまで大きな変革を起こすかもしれません。
そうすると「ゲーム脳」などと言っていた人は「ゲーム脳・脳」だった、
ということがはっきりするかもしれません。

さて、今回の私のエントリには変なタイトルがついています。

1980年生まれというドラクエブームの直撃世代にあっては、
ドラゴンクエストというのは特別な存在です。
ヴェルダースオリジナルより特別です。

ホイミ・ベギラマ・ルーラあたりの呪文は
もう何年も目にしていなくても、効果を忘れません。
そんなものは社会に出てから何の役にも立ちません。
ところが意外なことに役立ったものがありました。
そこで当エントリのサブタイル「ランチェスターの教え子」につながります。

このサブタイトルは「そして伝説へ…」や「天空の花嫁」を参考に
私が考えたものです。ランチェスターという人をご存知でしょうか?

簡単に説明すると、戦争で2つの軍勢が衝突したときに
どっちがどれくらい勝つか、ということを分析した人です。
これをランチェスター法則、とかランチェスター戦略と言います。

このランチェスター法則には第1の法則と第2の法則があります。

  1. 第1の法則は一騎打ちのように軍勢の各兵隊が1対1の戦闘を行うもの。
  2. 第2の法則は銃撃戦のように軍勢の各兵隊が、特に誰を狙うわけでもなく
    敵がいる方向に向かって乱射するような戦闘を行うもの。

という2つの内容から成り立ちます。
これだけで1冊の本が余裕で成立するほど奥深い内容ですので
できるだけ単純にして説明をします。

  1. 第1の法則の場合。
    A軍の戦力が5。
    B軍の戦力が3。
    衝突すると、A軍が2生き残る。
  2. 第2の法則の場合。
    A軍の戦力が5。
    B軍の戦力が3。
    衝突すると、A軍が4生き残る。

となります。なぜか。

第1の法則で個人が個人しか攻撃しない場合は、
5-3で2の戦力が残ることはわかりやすいでしょう。
現実では勝ち残った人がまだ戦闘が続く人の援護に行くと
思われますが、そのケースはちょっと無視しておきます。
マドハンドがあらわれた

第2の法則で、個人が集団を攻撃する場合が少し難しいです。
A軍の人は仲間の応援も多い上、敵が少なくて狙いやすいです。
B軍の人は仲間の応援も少ない上、敵が多くて狙いも分散してしまいます。
そんなわけで戦闘力がそれぞれの人員の差の2乗となって現れます。
よって、 5^2 - 3^2  = 16 の平方根から、Aが4人生き残る、とされています。
しかしまわりこまれてしまった!

この考え方を最初に習った時は、なるほど!と思いました。
しかし家に帰ってプレステでファイナルファンタジーVIIをやって気づきました。

ランチェスター戦略ってロールプレイングゲームと一緒じゃないか!

ロールプレイングゲームの戦闘は、個人攻撃と全体攻撃があります。
全体攻撃を行う相手に対し、こちらも全体攻撃で挑むケースでは、
相手の攻撃力がこちらを上回っている場合は叩きのめされます。
同じ人数同士で戦闘を行ったのに、相手は誰も倒れていない状態で
こちらが一方的に全滅する、ということも珍しくありません。

特に味方が1人死んでからの戦闘の苦しさは尋常じゃありません。
そのままにしておくと総攻撃力で圧倒されることが明らかですし、
敵は死体を攻撃したりしませんので、残る人員に攻撃が集中します。
復活させようとすれば、誰かを戦闘から外して復活作業を
担当させなければならない = 一時的に更に総攻撃力が下がる、
という悪循環に陥ることもあります。

1人死んだ=即リセットというポリシーの人も少なくないでしょう。
それはランチェスターの第2法則がよく効いた戦闘になるからです。

ではどうするか。例えばこちらは全体攻撃をかけないで、
個人攻撃により、敵の中でも一番強い相手だけを集中して倒します。
それが成立した時点で、こちらも瀕死となっていた場合、
元気な生き残りを瀕死の状態で倒す、という苦しい戦いになります。

しかしRPGでは「攻撃ミス」などの不確定要素が大きいですので
こちらの体力に余裕が残っている場合もあります。
そうなると、こちらが人数で勝る形になりますので、全体攻撃を連発します。
そうすれば第2法則に基づき、こちらの圧勝となります。

敵の判断は、このあたりを考慮するほど高度ではありません。
最初から個人攻撃しかしないか、全体攻撃しかしないか、
そのどちらかを一定確率で選ぶか、です。
私の経験では、こちらのレベルに応じて「魔法使いを一点撃破」などという
鬼畜なコンピュータを見たことはありません。

RPGでは、回復魔法があったり、戦闘を支援する魔法として
相手の全体攻撃を封じたり、というさまざまな要素があります。
ファイナルファンタジー系では、1回の攻撃から次の攻撃までの
時間が設定されている、というゲームシステムもあります。
それだと単位時間あたりに5回攻撃する人と、
1回しか攻撃しない人が存在します。大ヒットとなったドラクエ3,4,5などは
「ターン制」での戦闘ですので、1ターンに各人1回ずつ戦闘が行われます。
そのあたりの要素も考慮して、しっかり作戦を立てることで、

「普通に衝突すると絶対に勝てない相手に対してあっさり勝つ」

という現象を体感することができます。

ゆうしゃ、まほうつかい、せんし、あそびにん、などの職業特性や、
べホイミ、スクルト、メラゾーマなどの呪文、
せいすい、やくそう、けんじゃのいし、などの道具などの要素は、
戦術=タクティクスにあたります。

ベビーサタンはイオナズン(全体攻撃)を使うから最初に
個別攻撃でしとめておいて、うごくせきぞうは後から倒す、
という部分は戦略=ストラテジーにあたるものです。

総力で勝る相手を前にして、個別撃破や捨て身の全体攻撃などの
戦略を立て、それを実現し得る戦術を的確に選択する。

こんな高度な判断を小学生の頃から1日に数時間、
ドラゴンクエストにファイナルファンタジーに
テイルズオブなんとかに、ずっとこなしてきた人材が
私を含め、日本中に百万人単位で存在するわけですね。驚きです。

そういった戦術や戦略を立案するためには情報収集が不可欠です。
敵の強さや特徴は、やり込んでいればぼんやりとわかってくるものですが、
攻略本、というものも販売されています。これは、単に楽をするだけでなく、
ゲームに対する戦略をより本格的に立案するためには不可欠なものです。
攻略本なしのRPGが人間相手の将棋だとすると、
攻略本ありのRPGというのは詰め将棋のような存在だと思います。

攻略本の有無だけでなく、RPGには楽しみ方の特徴がいくつもあります。
私はギリギリのレベルで死にそうになりながら
何度もリセットを繰り返して苦しみながら進んでいくことを楽しみにしています。
Mだからです。

中には石橋を叩いて渡るように、常に敵の戦力を上回るようにレベルを上げ、
ボスすら一蹴できるような戦力で安全に戦っていく人もおられるでしょう。
Sな人ですね。

また、アイテムやイベントを1つも取りこぼさないように
進めていくことで、結果として楽勝で進む人や、
とにかく早くクリアするために全力を傾ける人もおられます。

そのあたりは戦術や戦略よりも一つ上の次元のもの、
すなわち「企業理念」や「経営理念」あたりになるかと思います。

先日のエントリでは「労働力の再生産」について考えました。
余暇の時間を意識的に仕事のために使い、
英語を学習する、ということは一種の拡大再生産であるわけですが、
余暇を楽しいものにするためにやっているはずのゲームも、
戦略的思考の発達を助けるという意味で仕事に役立っているのかもしれません。

 

と、良い感じに〆るつもりだったのですが、最後にすごいことに気づきました。
自分の年代はギリギリでストライクゾーンを外れた「ポケットモンスター」です。

あれはドラゴンクエストやファイナルファンタジーと違って
100種類以上のポケモンを仲間にして、その特徴を把握して
使役して戦わせるものです。

様々な得意・不得意を持ったポケモンの能力を的確に把握し、
敵が出してくるポケモンを予測することが大切です。
総合力では劣っていても敵の弱点を的確に撃破する、
特殊能力を有したポケモンを投入することで、
華麗な大逆転を可能とするゲームシステムです。
言わば「ずっと俺のターン!」(それは遊戯王)

その世代が10年後くらいに社会に出てくるのですね。恐ろしいものです。

「やまぐち!けつごうてすとだ」

とか言われるならまだ良いんですけれども、

「やまぐち!もどれ」

と言われないように頑張ります……。

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