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医療情報技師という資格があります

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医療の世界でもIT化が進んでいます。

医師がタッチパネルでカルテを記入しながら、
先日撮影したレントゲン写真をモニターに表示する。
「ただの風邪ですね。お薬飲めばよくなりますよ」
と言いながら画面で投薬の指示をして診察終了。
会計に行くと既に計算は終わっていて、お薬も用意されている。
というところまで進んでいる病院は残念ながら少数派です。

身近なところでは、予約システムが導入される病院が増えてきました。
磁気ストライプ付きの診察券を機械に読み込ませ、
番号札を受け取る所が増えてきました。
大型モニターに「現在27番までお呼び出しをしております」
というように表示されるものです。

昔は診察券を入れるポストに診察券を入れて待つのが普通でした。
順番が来ると「やまぐちさーん。やまぐちようへいさーん」と呼ばれます。
ある看護師さんから、「カルテの年齢を見てお年寄りだとわかったら
大きな声で呼ぶようにしている」という話を聞きました。

このような「医療情報システム」を専門的に扱う人材にとって
情報処理技術者試験は汎用的すぎて物足りない感があります。

また、医療情報システムではひょっとすると人命に影響するような部分まで
システム化が及ぶことがあります。
「医師が入力した投薬指示が正確に伝達されないバグが発生したら」
と想像すると医療情報システムの果たす役割の重大性が感じられます。

そのため、医療情報技師という資格が創設されました。
国家資格ではなく、日本医療情報学会の医療情報技師育成部会により
創設された民間の資格です。公式サイトによると医療情報技師とは

「保健医療福祉専門職の一員として,医療の特質をふまえ,
最適な情報処理技術にもとづき,医療情報を安全かつ有効に
活用・提供することができる知識・技術および資質を有する者」

と定義されます。初級試験と上級試験があり、
上級試験は今年から始まりました。以下の3点が出題の範囲となります。

  1. 医学・医療
  2. 情報処理技術
  3. 医療情報システム

医学・医療では保健体育のように骨や内臓の名称を問われるような問題もあり、
勉強になりました。自分にとって最も難易度が高かったです。

情報処理技術は以前は免除だったので問題がわかりませんが、
教科書を見た限りでは情報処理技術者試験の午前問題と大差ないと思います。

医療情報システムではオーダーエントリーシステムや電子カルテシステム、
ICD-10などの病名分類法などが範囲でした。

この3点目の医療情報システムは、中心となるエンドユーザが医師・看護師と患者です。

医師・看護師が利用する方面から言うと、医療情報システムでは
バグが医療ミスにつながる=人命に影響する可能性もある難しいシステムです。

また、癌検査などに用いられる電子デバイスの塊のような機械(MRIやCTなど)は
コンピュータによる制御がなくては正常に稼動させることができません。
こちらは組み込み系システム(エンベデッドシステム)の知識が必要になります。

これらの機器から出力されるデータは画像の形が一般的ですが、
数ミリの病変が確認できる解像度を保有し、場合によっては
それが何百枚もデータで出力されます。
少なくともカルテの法定保存期間に渡ってそれらを長期的に
かつ安全に、検索性を確保して保管するストレージが必要です。

それらをいつでもどこでも医師が確認できるようなネットワーク構成も必要です。
主治医が意見を求めるため、別の医師にも意見を求めるために
遠隔地に転送したほうがいい場合もあれば、
同院内でも他科の医師には見られないようにしなくてはならない場合もあります。

一方、患者が利用する方面では、老若男女が利用しやすいように
考慮しなくてはなりません。特に病院によってはお年寄りの割合が高いところも
ありますので、利用する人間にとっての使いやすさを大切にしなくてはいけません。

うっかり次回の来院予約が他の患者とダブルブッキングしてしまっても
「排他制御により予約レコードが初期化されました」
というメッセージを表示することは意味を成しません。

また、せっかくなのでインターネット上から来院予約がしたい、という要望や、
究極的には自分のカルテもインターネットで見たい、という展開もあり得るでしょう。

このように難しい課題の見本市のような姿をしているのが医療情報システムです。
難しい分、システム化が進んでいない分野も残されていると思いますし、
大変やりがいのある分野であると思います。

初級試験は実務経験が無くても受験できますので、興味のある方
(『きょうみのあるかた』と入力して『強ミノある方』と変換されるあなたも!)
は一度公式サイトをご覧になってはいかがでしょうか?

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